感想『双曲線上のカルテ』日本青年館:和希そら天才!華純沙那・縣千・眞ノ宮るいは?

こんにちは。らら子です。

『双曲線上のカルテ』日本青年館を見てきました。和希そらさん、宝塚という枠を超える名演をたっぷり堪能。ヒロインの華純沙那(かすみさな)ちゃんとの相性もぴったり。ひどいストーリーですが(^^;、心ふるえました。何度もリピしたい作品です。





感想『双曲線上のカルテ』日本青年館:樫畑亜依子先生ありがとう。原作は昭和なセクハラ医療小説。

2012年早霧せいな(さぎりせいな)さん主演の再演。原作は渡辺淳一『無影燈』。

漢字が「燈」になっていますが、元は「無影灯」という専門用語。影ができないように多方向から照らす、手術のシンボル的照明ですね。

大学講師だった外科医直江は、なぜか栄進の道を捨てて個人病院の医師となる。優秀な腕、ニヒルな影をもつ彼に看護婦倫子は惹かれてゆく。酒と女に溺れつつどこか冷めた直江は ….

渡辺淳一氏は元・医師。医療小説をたくさん書いていますが、ワタクシらら子のイメージは、女大好き不倫大好き、妊娠ネタ大好きの昭和なエロ男。

『双曲線上のカルテ』作・演出の石田氏は医療・社会ネタ大好き、下ネタ大好きな宝塚の無自覚セクハラ男。

和希そらさん東上主演はすなおに嬉しかったのですが、『双曲線上のカルテ』再演と聞いて「どうするんだよ」と、目の前が暗く……。

でも、潤色・樫畑亜依子先生のおかげで救われました。

プログラムの先生のお言葉に、担当が決まり、本作と原作を見て「難しい……。石田先生はなぜこれを」と思ったとありましたが、樫畑先生の戸惑いとご苦心が本当に実感されます。

樫畑先生ありがとう!よくここまでの作品にしてくださいました。




感想『双曲線上のカルテ』日本青年館:「死は逃げ場ではない」ぞ!イタリアの意味あるのか?

舞台はイタリア・ナポリ。

ストーリーは、死期が近い腕利きの外科医フェルナンド(和希そら)が、死の恐怖から酒と煙草と女に溺れ、勝手な仕事ぶりで同僚のランベルト医師(縣千)ら、周囲をふりまわす。

ダメ男だけどカッコイイからモテモテ。

ウブな新人看護婦モニカ(華純沙那)と出会い、癒やしを求める。長年の恋人(野々花ひまり)を突き放すが、彼女の骨髄移植に尽力。

新旧の恋人に何も知らせず最後は自死するが、人々の心にいい人として記憶に残る、という勝手な男目線のファンタジー。

公演プログラムで石田先生は「フェルナンドは決して弱い人間ではありません。」と力説してますが、フェルナンドは自分勝手なかまってちゃんなんですよ!

死後に息子が生まれているし。そうしてモニカを一生しばりつけておくつもりだったのね。

自分の命の使い方は自分で決めるといいつつ、モニカの命の使い方の軽々しさよ。

しかも、舞台がイタリア・ナポリである必要はどこに?自死するのはマジョレー湖畔にしたかったから?

登場人物を金髪の外国人にするのは宝塚のお約束だけど、医師に看護師が深々と頭を下げたり、振る舞いがまったく日本的なんですよねー。

かろうじてイタリア人ぽいのは、久城あすさん演じるレントゲン医師だけかな。久城あすさん、衣装も髪型も歩き方も声もジェスチャーもかっこいい。





感想『双曲線上のカルテ』日本青年館:和希そら危険な男のやさしさ

もう、ポスターと公演プログラムの時点で危険な香りプンプン。こんな男の人いたら何でも言うこと聞いてしまいそう。

お稽古に入る前にカフェ・ブレイクで「すごく悲しくて、でも優しい気持ちになる」と言っていましたが、その通りの役作りです。

大げさなところは何もないのに、ときに大粒の涙をボロボロと流し、役に入り込んでいています。

冒頭の病院のシーンが終わると、ひと歌いして和希そらさん演じるフェルナンドの登場。

夜勤をさぼってナイトクラブでタバコ片手に夜の女たちと戯れる、いけない男。色気むんむんです。タバコを口にくわえるしぐさ、持ち替えるしぐさ、はぅ~いちいちかっこいい。

病院に戻る途中でモニカと初対面。この時、モニカは淡い恋心を抱くけど、幼い雰囲気のモニカにフェルナンドは興味を持たない様子。

ここから「暗闇に生きる僕が、天使のように光り輝いていた」モニカにぐんぐん惹かれていくわけですが、捨てられる院長令嬢で恋人のクラリーチェ(野々花ひまり)が可哀想でなりません。

捨てるくせに、クラリーチェの身体を本気で心配したりしてね。

ひまりちゃんも、スカステのトーク番組で「すごく傷つくけど、でもかっこいいのおおおおお」と言ってましたが、危ない男に惹かれてしまうのは女のさがで、男のロマンなんでしょうね。




感想『双曲線上のカルテ』日本青年館:宝塚の枠を超えている

いろいろツッコミどころが多すぎの本作ですが、和希そらさんのビジュアル、歌・芝居・ダンスともすべてをねじ伏せる実力がすばらしい。

白衣と銀縁のメガネに至っては、それだけでご飯3杯いけます。

もう、開演と終演のアナウンスだけで、幸せになれます。

やんちゃして若者を叱りつけてからの歌(これが本作オリジナルですよね?)では、歌いながら一筋の涙を流し、

チェーザレさんの家族を見送ったあと、1人でぼろぼろぼろっと涙を流す。回を重ねるごとに感極まるのがはげしくなるのか、いったん客席に背を向けて涙を拭うことが増えました。

大粒の流しながら、セリフもよどみなく、歌もぶれなく。

裸足でソロで踊る雪のマジョレー湖畔のシーン。

ゆっくりと沈んでいく様子がありありと感じ取れます。入水して意識がない物体となって、降りていって、あ、いま、水底についた、バウンドした……からのダンス。

気持ちが伝わる、細やかな表情と手足の動き、ジャンプの滞空時間の長さ、

フィナーレのキレと勢いのあるダンスとオラオラ&キラキラ感。

天才じゃなくて努力の人というのも知っていますが、

わらっちゃうほど、うまい。

和希そらさん。見るたびにその進化に目をみはりますが、どこまで行ってしまうのか、そして劇団はどこまで上げていくつもりなのか。

歌・ダンス・芝居とも、すでに宝塚の域を超えていると思います。

早めに外部に出て活躍する姿を見たいような、いやいやずっと宝塚にとどまって男役を極める姿を見せてもらいたいような、複雑な気持ちです。




感想『双曲線上のカルテ』日本青年館:モニカ華純沙那(かすみさな)

モニカの華純沙那ちゃんは106期生。和希そらさんとは10期違い。身長も160cmと娘役としても小柄なので、和希そらさんとのバランスもいい感じです。

『蒼穹の昴』沙那ちゃんは市場のシーンで女童の役が印象に残っています。

舞台上で屋台をのぞいたり、大人たちにちょっかいだしたりするのが本当にかわいく、芝居心にあふれていました。

その子が和希そらさんの相手役になるなんて、うれしいうれしいおばちゃんです。

和希そらさんが、素でかわいいかわいいと思っているのが、こちらまで伝わってくるようです。

二人のデュエット歌唱やダンスシーンは何度か出てきますが、歌もダンスも上手いし、何より初々しさが出ていていいですねぇ。

ちょっとふつうの娘役とは違う透明感というか、すなおでていねいな歌い方も好きです。スカステなどで話しているのを見ると、声が案外低くて、落ち着いて話しています。

これからどんどん伸びそうな娘役ちゃん。楽しみに成長を見守りたいと思います。




感想『双曲線上のカルテ』日本青年館:フェルナンドとモニカの多幸感

プライベートを過ごすシーンは、多幸感を出したいねと、話し合ったそうですが、見ていてあまずっぱーい気持ちになります。

モニカはフェルナンド曰く「疑うことを知らない」女性。ウブだけど真の強い女性。

疑うことを知らないといっても、フェルナンドの言葉や物事を自分なりにじっくり考えて違和感を口に出すのもいいですよね。

ワタクシが特に気に入ってるのは、フェルナンドが湖畔で最期のつもりで言った「君に出会えてよかった」という言葉へのリアクション。

「フェルナンド、それはちょっと大げさですよ。」

それだけに、フェルナンドの死を知らされた後の、ショックで固まるモニカが可哀そうで可哀そうで、ワタクシ個人的に一番フェルナンドに対して怒りを感じるシーンです。

(しかも結果的に職場放棄ってどうよ怒)

5年後の湖畔。フェルナンドの気配と一緒に踊るシーンも、母子家庭の大変さとかあるだろうに、健気な幸せに溢れています。

(だったら最後まで二人で病と戦えばよかったのに怒)

フィナーレのデュエットダンスは、ゆったりしていて、ゆったりしているだけにごまかしがきかなくて、二人のシンクロ感が本当にここちいい。

和希そらさんが華純沙那ちゃんを見つめる目が本当に優しくて。沙那ちゃんのおでこアングルカメラのDVDを販売してください。

リフトで回転すると、沙那ちゃんのドレスの裾と和希そらさんの変わり燕尾の裾が二段になってきれいな円を描くんです。なんて素敵ー。



感想『双曲線上のカルテ』日本青年館:縣千と眞ノ宮るい

二番手ランベルト医師役の縣千(あがたせん)さんは、梅田芸術劇場の初日から体調不良で休演。眞ノ宮るい(まのみやるい)さんが代演でした。

私はスカステの映像で見ただけですが、これが代演と思えないほどよかったです。実際に梅田に見に行った友人は、(ここだけの話)縣くんより良かったと。

縣さんは101期、眞ノ宮さんは100期。縣さんがぐいぐい押されてきて、眞ノ宮さんはもはや別格か?という空気ですが、いやいや、もっと眞ノ宮さんのスキルを活かす場面を増やしてほしいです。

本作でも、黄泉の帝王トートのようなオペダンサーAをやって、フェルナンドを死の恐怖に引きずり込んでいますが、それ以外は看護師役だけなのがもったいない。

もともと役が少ない芝居ではありますが、ねー。

看護師役だけといいつつ、数少ない間合いやアドリブもさすが眞ノ宮さん、達者なのです。

宝塚の域を超えた本公演ですが、縣さんが出てくると「あ、宝塚だった」と引き戻されます。

新人の頃は恵まれた体格とお顔とよい性格でバク上げされてきましたが、そろそろセリフまわしなどのスキルを磨いて行かないと、「何をやっても縣千」になってしまいます。

お歌も安定させてほしいですよね。勢いのある力強いダンスも良いけど、もうひとつ垢抜けてほしい。

とはいえ、本作は当直室でアドリブがあって、回を追うごとに面白くなっていたのは感心。

106期の華世京(かせ きょう)くんがどんどん上がってきてますしね、がんばれ!と思います。





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