こんにちは。らら子です。
シアタークリエ音楽劇『スラムドッグ$ミリオネア』を見てきました。ジャニーズきってのダンサー屋良朝幸(やら ともゆき)さんの本格的な芝居やミュージカルは初めてなので、興味津々。
スラムに生まれた少年が、運と機転と行動力でさまざまな困難を乗り越えていきます。不屈の精神と希望の物語でもあり、愛と友情の物語でもあります。
コロナ禍で初日から数日間休演になってしまったのが惜しまれます。菜園を希望します。
音楽劇『スラムドッグ$ミリオネア』原作:ヴィカス・スワラップ著『Q&A』上演台本・演出:瀬戸山美咲
以下、ネタバレ含む感想です。
目次
感想:スラムドッグ$ミリオネアあらすじ・ネタバレ
ところはインド。主役はスラム育ちの18才の青年ラム・ムハンマド・トーマス(屋良朝幸)。クイズ番組で全問正解し、10億ルピーの賞金を得た翌朝から話ははじまります。
ラムは、全問正解したのは幸運のコインのおかげだと不思議なことを言います。
賞金を払いたくない番組制作会社は、ラムが不正をしたと罪をでっち上げ、警察に手をまわして拷問させます。
そこへ美人弁護士スミタ・シャーが現れ、ラムを救い出します。彼女は番組DVDを再生しながら、全問正解の理由をさぐるために10歳からの人生を振り返っていきます。
ラムは孤児院で拾われ、誰が親でもいいように、ヒンズー教、イスラム教、キリスト教にちなんだ、珍妙な名前がつけられました。
やがて孤児院での性的児童虐待、神父の秘密、宗教対立、労働搾取、家庭内暴力などインド社会の暗部に直面していきます。
社会の底辺で、その日暮らしを続けるなかでの出来事や、出会った人々との友情。
これらにまつわるエピソードの数々が、全問正解の理由の答えになっていきます。そして彼がクイズ番組に出演した本当の目的が明らかになります。
最後は、すべての伏線が回収され、大団円となります。すっきりした気持ちよさと!してやられた!という感情が入り混じって興奮しながら劇場をあとにしました。
感想:スラムドッグ$ミリオネア:屋良朝幸(やらっち)ダンスやパルクールのレベルにびっくり!ラム・ムハンマド・トーマス役
主演の屋良朝幸さんはダンスが得意なので、ダンスシーンがたくさんあるんだろうなという予想はしていましたが、予想以上にダイナミックで、すばらしかったです。
特にアクションシーンがかなり長い時間。驚きました。「パルクール」という走る・跳ぶ・登るの移動を取り入れた運動方法だそうです。
障害児に芸を仕込んで物乞いをさせるという悪徳職業訓練施設から逃げ出す、というシーンなんですが、本当に舞台をところせましと飛び回っていました。
高いところからジャンプしたり、ほとんど垂直の壁面を走ったり、身体能力高いんですねー。しかもそのシーンが長いんです。すごいすごい。
演技中にさりげなくペットボトルの水を持って、水分補給していましたね。大事です。どんどん飲んでください。
他にもダンスのソロシーンがあります。
恋人のためにどうにかして40万ルピーという大金を手に入れたラム。「どうにかして」の内容は人には言えない手段かもしれません。
その葛藤をダンスで表現。しなやかな肉体と動きが美しい。
屋良朝幸さんて若く見えますが1983年2月1日生まれ。アラフォー、39歳なんですね。まさかそんな年齢とは驚きました。
屋良朝幸さんの身長はWikipediaによると163cm。見た目はもっと大きく見えますが、ジャニーズは小柄な方が多いですね。
お芝居は、現在と過去の少年時代をいったりきたりしながら進んでいきます。
小柄なせいもあるかもしれませんが、少年時代の演技がもとても自然です。
10歳のころはちゃんと子供っぽく見えるし、18歳までの思春期のキュンキュンも伝わってきました。
歌も上手いんですねー。歌い方はちょっと昔のアイドル風味。郷ひろみを思い起こさせました。
ご本人はジャニーズ的なキラキラが苦手っていうことですが、役者として舞台上で輝いていました。
これからは、ジャニーズの枠を超えて、大舞台でもっともっと活躍してもらいたい役者だと思います。
感想:スラムドッグ$ミリオネア:親友役の村井良大 サリム(1幕)とシャンカール(2幕)
屋良朝幸さんて扮するラム・ムハンマド・トーマスの親友は、サリム(1幕)とシャンカール(2幕)のふたり出てきます。
そのふたりを2役で演じたのが村井良大(むらいりょうた)さん。1988年6月29日生まれ。
サリムは幼なじみ。孤児院を飛び出したラムと知り合って親友になります。アクションスターを夢見ていて歌もうまい。
サリムはあやしげな占い師に見てもらったり、あとで引き取られた職業訓練校のヤバさに気づいてないぐらい楽天的でだまされやすい。
そんなのんきな雰囲気がよく出ていて癒しキャラ。悪徳職業訓練校から逃げる「パルクール」のアクションシーンでは、屋良さんとの息もぴったりです。
シャンカールはしゃべれない少年。アーグラでタージマハールの観光ガイドをしていたラムと知り合います。豪邸の一角にある粗末な部屋につれて帰りますが、実はその家の息子。
母親の不倫の現場を見てしまったことから虐待され、心身に障害が残ります。狂犬病にかかっり、はっきりしたうわごとで「ママ、許して、ぶたないで」といいながら死にます。
どちらも共通しているのは、やさしくておだやか。心がやさしくて明るい性格。ところどころおかしみのある演技が印象的です。
屋良さんとのコンビは見ていてほのぼのします。
感想:スラムドッグ$ミリオネア:MC役の川平慈英(かびら じえい)の怪演!プレム・クマール
クイズの人気司会者プレム・クマール役の川平慈英(かびらじえい)さん。楽天カードマンCMの方ですね笑
ハンサムで陽気、ばつぐんの話術。国民的人気を誇るクマールですが、実は暴力的な裏の顔があります。クイズ番組のCMの合間、ラムにクイズを降りるように暴力でおどしたりします。
カメラが回っている時に見せる顔との違いにがく然。ラムの恋人の売春婦に客として大金を支払って暴力をふるったことが、ラムのクイズへの挑戦の目的だったわけです。
クマールは別人に成りすまして、スラムからなりあがった男。年齢は50歳の設定です。大人だけど、スラムや貧乏人を憎みさげすんでいる。
番組の合間に、ラムと二人きりでトイレに立ち(長時間ですが番組大丈夫ですか)、半生を語り、ついにラムから銃口を向けられるシーンは迫力!
こういうところが川平慈英さんはうまいですよねー。持って生まれたルックスと押し出しのよさ。ダンスも上手。独特のだみ声でカッコよかったです。
ラムに全問正解を許したら裏組織に消されてしまうわけですが、それよりも彼はラムに復しゅうされることを選ぶ。
結局は、ラムは彼に手を下さず、クマールはスラムで撃たれて死んでいきます。最後は、ちょっといい奴かも?と思わせるところがにくいですね。
感想:スラムドッグ$ミリオネア:ニータ役の唯月ふうか、スミタ・シャー役の大塚千弘
ラムの恋人の売春婦ニータ役の唯月ふうか(ゆつきふうか)さんは、1996年9月8日生まれ。
身長154センチなので、屋良さんとはちょうどいいバランス。売春婦らしくすさんだ言葉づかいが板についていないという演技。
売春宿を運営しているのが実の兄というショッキングな事実。商品として扱われているわけですが、兄とのやり取りもほとんどない。
彼女の内面を知るようなモノローグなどはないので、感情の表現などが難しいだろうなと思います。
女性弁護士のスミタ・シャー役の大塚千弘(おおつかちひろ)さんは、1986年3月12日生まれのベテラン実力派。ラムより年上の設定。
実はラムがサリムと一緒に住んでいた安アパートの、隣の家のお姉ちゃんだった!あー!そうだったのね!」という展開。
弁護士姿はさっそうとしたパンツスーツ、父親の暴力に怯える少女の時は民族衣装だったので、気づきませんでした。
役としては重要なんですが、大塚千弘ならではの演技というのは、あまりしどころがないかなぁと思いました。
ヒロイン、準ヒロインの二人は、どちらも自分から主張する役ではないので、女優の個性が表現しにくくてもったいないと思います。
感想:スラムドッグ$ミリオネア:カンパニーは何役もこなす芸達者そろい!バンドの名演奏
主な登場人物が4人。あとは7人が一人何役もこなしています。総勢11人。これだけでモブシーンもグループシーンも、アクションシーンも舞台って成り立っちゃうのね。
しかもパルクールもありですよ。どんな体力なの。
ワタクシはどちらかというと大きな劇場で見ることが多いので、シアタークリエはひさびさ。人数の少なさが新鮮でした。みなさんの役の住みわけはざっくりこんな感じ。
池田有希子(いけだゆきこ)……中年女性
辰巳智秋(たつみたともあき)……中年男性
吉村 直(よしむらすなお)……高齢者
野坂 弘(のさかひろむ)……背の高い男性ヤンキー風
阿岐之将一(あきのまさかず)……背の高い男性インテリ風
當真一嘉(とうま いちか)……若い女性
中西南央(なかにし なお)……少年
バンドは舞台上方で生演奏。音楽劇という名に恥じないノリノリの名演奏でした。
コロナ禍がおさまったら、またぜひこのカンパニーで再演してもらいたいです。
感想:スラムドッグ$ミリオネア:演出家・瀬戸山美咲(せとやまみさき)
若手演出家の瀬戸山美咲さんの演出がいいという話は聞いていましたが、本当に良かったです!(語彙
ちょっとした間に笑いが起きたり、セリフ回しもおしゃれ。いい意味で女性らしくない演出だと思いました。
舞台機構もシンプルでスタイリッシュ。インドの猥雑さは感じさせず、ニューヨークにいるかのよう。
ときどき、クラクションの音や犬の鳴き声がかすかに聞こえてくるのと民族衣装で、インドだったと思い出すぐらい。
舞台のセットとしては、天井からぶら下がる洗濯物や大きなカーテン、舞台奥に大きめの階段が数段。舞台上には手すりのついた大きな箱状の大道具がふたつ。
箱は、並べてバスになったり、組み合わせでテーブルになったり、アパートの一室になったり、パルクールの障害物になったり、大活躍。
逆にリアルなのは、売春宿の粗末なベッド、真っ白な病院のベッド、クイズ番組の舞台セット。クイズ番組のセットはピカピカと電飾が輝いて、非日常感があります。
シンプルな舞台装置のおかげで場面転換も早くなるのですね。その分、話に集中できたし、作品の苦難にめげず生きていくというメッセージも際立つように感じました。