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こんにちは!らら子です。
紀尾井ホールで行われた『素浄瑠璃・出世景清』に行ってきました。
『素浄瑠璃・出世景清』出演者
出演者
(浄瑠璃)竹本三輪太夫(たけもと みわたゆう)、豊竹呂勢太夫(とよたけ ろせたゆう)
(三味線)鶴澤燕三(つるざわ えんざ)、竹澤宗助(たけざわ そうすけ)
(解説)葛西聖司(かさいせいじ)、渡辺保(わたなべ たもつ)
曲目
- 解説
葛西聖司
渡辺保 - 出世景清(しゅっせかげきよ)
- 阿古屋住家の段(あこやすみかのだん)
浄瑠璃 豊竹呂勢太夫
三味線 竹澤宗助 - 観世音身替りの段より清水寺の段(かんのんじみがわりのだんよりきよみずでらのだん)
浄瑠璃 竹本三輪太夫
三味線 鶴澤燕三
ロビーに入ると、復活上演の発案者である鳥越文蔵(とりごえぶんぞう)さんが車いすにのっていらっしゃいました。周囲にお知り合いの方々に囲まれてニコニコとごきげんそうでした。
入り口近くに素敵なお着物姿の女性がいらっしゃると思ったら、燕三さんの奥様、杉江みどりさんでした。にこやかにみなさんにご挨拶していらしゃいました。
『出世景清』復活のわけ。ルネッサながと「ながと近松文楽」での上演の様子
上演前に、もとNHKアナウンサーの葛西聖司さんと演劇評論家の渡辺保さんの対談。
2018年7月に山口県ルネッサながとで「ながと近松文楽」として一日だけ現代に上演された経緯や鳥越さんのこの演目の復活にかける情熱などが語られました。
『出世景清』は竹本義太夫と近松門左衛門の初のコラボ作品で、そして『出世景清』によって、古浄瑠璃から当流(新)浄瑠璃へときっぱり分かれたと。
古浄瑠璃というのは観音様がどうしたこうしたという話だったのが、登場人物が自分の考えで動くようになった、というのが新しい浄瑠璃の始まりだったそうです。
そんな画期的な作品なのに、初演以来、通しでは一度も上演されていない『出世景清』。
鳥越文蔵さんは、
「台本を読むのと、浄瑠璃として上演されるのは、まったく違う。
この目で浄瑠璃を聴きたい、人形の動きを見たい」
という情熱で上演実現に向け奔走し、そしてルネッサながとで「ながと近松文楽」実現。
この時は、人形浄瑠璃として人形も含んだ上演だったで、経費もかかったそうですが、私財をなげうって実現にこぎつけたとか。
らら子は、先ほどロビーで人々に囲まれてご機嫌のご様子、そして今、最後列のスペースで車いすで鑑賞しているお姿に思いをはせて胸が熱くなりました。
当日は台風で、東京チームと大阪チームに分かれてそれぞれ長門を目指しますが、空の便は欠航。大阪から船で乗り込んだり、自家用車で向かったり、何十時間もかけて集まったそうです。
客席は満員。公演は大成功。
鳥越さんの依頼で鶴澤燕三さんが作曲に取り掛かったのは8年前でしたが、その間、燕三さんがご病気だったりしたので、本格的に作曲に取り組んだのは4年前からだそうです。
そして、公演の評判を聞いた紀尾井ホールの働きかけで『素浄瑠璃・出世景清』の上演が実現したとのこと。
こんなふうにいろんな人たちの想いが300年以上の時を経て復活上演されたのですね。
なんだか、人って素晴らしいなと思いました。
『出世景清』阿古屋住家の段:あらすじ(ネタバレ含む) 出演 呂勢太夫 宗助
あらすじ
信仰篤い景清は清水寺に向かう途中、遊女阿古屋の家に立ち寄り、二人の間の子どもとの再会を喜ぶ。一方、阿古屋の兄・伊庭十蔵は景清を訴人して恩賞を得ようと妹をそそのかす・そこへ恋敵・小野の姫から景清あての文が届き阿古屋は逆上しついに訴人に加担する。
公演パンフレットより
幕が上がると中央に毛せんを敷いた台。
上に呂勢太夫さんと宗助さん。後ろに銀色のびょうぶが置いてありました。
お話の展開は、途中までまるでホームドラマ。
清水寺にお参りに行く途中で、ひさしぶりに恋人阿古屋さん宅に立ち寄る景清。阿古屋さん上機嫌で「あらひさしぶりねー。1年も手紙もくれないんだもん。子どもたちもすっかり大きくなったわよ。そういえば最近、小野のお姫様といい仲なんですって?」とチクリ。
景清さん「いやー冗談じゃないよ、その人とは口も聞いたことがないよハッハッハ。好きなのはお前だけさ、じゃ、お参りに行ってくるよ。」と、ごまかして清水寺へ。
そこへ、悪いお兄ちゃん伊庭十蔵がやってくる。
「おたずね者の景清を突き出せば賞金ががっぽりだぜ」と阿古屋さんをそそのかす。 当然きっぱり断るところに、小野の姫から手紙が届く。
「さいきん連絡ないけど、もしや阿古屋とかいう遊女のところにいるんじゃないの?私という存在がありながら。」
遊女??カッチーン!ときた阿古屋さん。ちょっと迷いますが、訴え出ることに決めます。
壇ノ浦兜軍記(だんのうらかぶとぐんき)の凛々しい阿古屋さんとはまるで違うキャラでした。
ここまで呂勢太夫さんが表情豊かに、景清、阿古屋、十蔵を語り分け。
前から思ってたんですが、呂勢太夫さんは女の人を語るのがうまい気がします。遊女のようなちょっと艶っぽい感じ。いい意味でおばさんぽくていいなと思いました。
さて、呂勢太夫さんは、写真とちがって髪型が七三分けになってました。
『出世景清』観世音身替りの段より清水寺の段:あらすじ(ネタバレ含む)。出演 三輪太夫、燕三
あらすじ
【観世音身替りの段】頼朝は大仏殿を再興、佐々木四郎高綱に命じて景清の首をはねるが、畠山重忠が景清はまだ牢にいるという。頼朝が真偽を確かめるために都に戻り、首をみているとやがて、景清の首が千手観音へと変わってしまう。
【清水寺の段】
頼朝は景清と対面する。景清に宿る観世音の霊験から、頼朝は二度目の私財は麺児日向への下向を命ずる。思わず反射的に切りかかった景清だったが、無礼を詫び、両方の目玉を自らえぐって差し出し、信仰を新たに日向へと向かうのだった。
公演パンフレットより
休憩と葛西さんの解説のその後、第二部。
観音さまを熱心に信仰している景清。処刑されたものの観音様が身代わりとなって助かります。頼朝は感心して九州の日向に領地を与えます。戦の昔話など語り合っているうちに景清はすっかり戦場にいる気分にもどり、頼朝の背後から切りかかってしまいます。
頼朝を見ると切りかかってしまうこの目がいけない、と自分で目をくり抜き(痛!)頼朝に差し出すという話。
この緊迫する場面、燕三さんの三味線もバチバチと激しい音を出します。
ピチカートのように左指で弾いたり、高音を出したり、聞いたことのない演奏方法がいろいろ出てきて引き込まれました。
らら子の萌ポイント
いやー、素浄瑠璃って人形がないぶん、集中できるんですね。
もちろんお人形さんも大好きなんですが、フツーの公演だと見るとこ多すぎて目が足りないのです。
途中で集中しきれずちょっとウトウトしちゃいましたが^^;
いいもの聞いちゃったーと言う感じです。
燕三さんの作曲も良かったし、太夫・三味線を正面から観ながらというのもよかった。
いつか本公演で人形浄瑠璃として上演されるのが楽しみです。
『出世景清』「六波羅新牢から牢破りの段」は、9月21日の赤坂文楽「床コンIII」上演予定。
素浄瑠璃を「床だけコンサート」略して「床コン」っていうんですね。
パンフレットにチラシが挟まってました。
今回上演されなかった「六波羅新牢から牢破りの段」は浄瑠璃が豊竹睦太夫さんで、三味線がもちろん鶴澤燕三さん。ゲストに桐竹勘十郎さん。
行きたいなー行こうかなー。チケットは6月18日(火)からφ(..)