感想『グレート・ギャツビー』月組:月城かなと爽やかすぎて逆にミステリアス、鳳月杏と風間柚乃は当て書き?さすが芝居の月組!若手からベテランまで目が足りない

こんにちは。らら子です。
月組公演『グレート・ギャツビー』を観てきました。

再演ですが、お芝居だけを2幕構成にした初の一本物です。トップスター月城かなと(つきしろかなと)さんの美しさや男役芸がいかんなく発揮された作品となりました。お芝居の月組らしくすみずみまで丁寧な芝居が展開されていて、目が足りません!




感想『グレート・ギャツビー』月組:月城かなとギャツビーが美しい。爽やかすぎて逆にミステリアス

ギャツビーは戦後のドサクサに紛れ、若くして巨万の富を得た謎めいた人物。

5年前に燃え上がり引き裂かれた恋人とまた再開することを願って、彼女が住む小さな入江の対岸に邸宅を構え、日夜眺めている。

一途で思い込みが激しい努力家。

月城かなとさんは、もうかっこよくて美しくて、スーツが似合って、黒服が似合って、ロングコートが似合って、タバコが似合って、もうどうしましょうっていうぐらい素敵でした。

でも、うさん臭さをまったく感じさせないギャツビー。こんなさわやかなギャツビーは予想外でした。ご本人のお人柄か、とても誠実そうなんですよねー。

闇の社会を生きる仲間からの人望も厚く、決して裏切らないと太鼓判を押されている。麻薬を扱うことを頑なに拒否した結果、仲間は離れていき、一からやり直すことを決める。

こんないい人なら、デイジーにこだわらなくてもふつうに立身出世していい人とめぐり逢いそうなものです。

が、当時のアメリカに根強く残る階級社会や、複雑な社会情勢が背後にあるんでしょうね。

月城ギャツビーは、まっしろすぎて却って底しれぬ闇を感じさせます。

デイジーへの執着のモチベーションは、もしかしたら本人への恋心ではなく、自分をないがしろにした社会への復讐だったのかもしれないですね。

最後に、デイジーをかばい嘘を突き通して死んでいくときに、ちょっと誇らしげに満足そうにほほえむ笑顔が美しすぎて、涙がこぼれます。




感想『グレート・ギャツビー』月組:海乃美月(うみのみつき)デイジー

乳母にかしずかれ、乳母と一緒にお嫁入りしちゃうような上流階級のお嬢様、デイジー18歳。

最高判事の父と世間体を気にかける母。アメリカ建国以来の由緒ある家柄って、要するに歴史が浅いってことですが、浅いがゆえに歴史の古さにこだわるんでしょうね。

周りからチヤホヤされて育った怖いもの知らずの気まぐれなお嬢様が、壮行会で知り合った28歳のギャツビー中尉と恋に落ちる。

フランス出征するギャツビーを追って家出しようとして乳母と両親に阻止され、「女の子はバカでかわいい方が幸せになれるというなら、私はバカでかわいい女の子になって見せる!」と決心の歌を歌う。

はっきり申し上げて、それまでもバカで世間知らずな女の子だったし、その後の結婚生活でも世間知らずなままだと思うんですが……。

その後、生まれた娘もバカでかわいい子に育てると決めています。

ただ、海乃美月さんはバカっぽく見えない人なので、この歌は、ちょっと空回りしています。

ギャツビーと引き離されてから*半年間は*手紙を送り続け、やがて富豪のトム・ブキャナンに熱烈アタックされて結婚してしまう。

子育ては乳母に任せ、自分は暇を持て余してバレエに熱中し、夫にも興味が持てない。ギャツビーとの悲恋は過去のスパイス、今の生活を手放すほどの決心もつかないんですねー。

エピソードをつなぎ合わせると、デイジーは享楽的で浅はかな女性なんですが、海乃美月さんのデイジーは、考えているように見えてずるずると流されているだけに見えます。

デイジーの心情を歌う一曲か独白があればいいんですけどね。





感想『グレート・ギャツビー』月組:鳳月杏(ほうづきあん)トム・ブキャナンごうまんな男を演じさせたらピカいち。

イェール大学卒で頭もよくスポーツマンで、代々の遺産を受け継ぎ、自分たちをアメリカの貴族といってはばからない。

女好きで仲間たちと遊び暮らしている傲慢(ごうまん)な男。

自分は浮気し放題だが、妻がよその男に取られるのは許せないのも、

ギャツビーの邸宅を見て金はかかっているが成金趣味と吐き捨てるのも、

ギャツビーの車を見てサーカスの宣伝カーのようだとからかうのも、

全部根っこは同じ。

特に悪い人ではなく、そういう生まれの人だから。

鳳月杏(ほうづきあん)さんは、こういう男を演じさせたら、今の宝塚で右に出るものはいませんね。

まさに待ってました!という感じ。

自動車工場主のウィルソンへの態度は虫けらに対するようにぞんざい。一方ウィルソンの妻マートルとの不倫はかなり深みにハマっている。

光月るうさん演じるウィルソンのさえなさっぷりが、また理不尽さを際立たせています。

トム・ブキャナンのもう一人の火遊びの相手、フォーリーズの踊り子ヴィッキー。

こちらは楽屋を訪問するとヴィッキーのヒモのスレイグル(蓮 つかさ)とゴシップ専門の新聞記者ミッチェル(佳城 葵)が乗り込んできて、トムは金品をたかられます。

ここで少しも慌てず金払いの良さを見せつけ、ヴィッキーにあっさり別れを告げます。

くーっ





感想『グレート・ギャツビー』月組:風間柚乃(かざまゆの)ニックの「いい人オーラ」で救われる

対象的なのが、トム・ブキャナンのイエール大学の同期で、証券会社社員のニック。風間柚乃(かざまゆの)。

デイジーのまたいとこなのでこちらも上流階級の出身。たよりなくもあるが、おおらかでいい人オーラ全開。

ギャツビーとデイジーを結びつけるキーとして、ギャツビーに頼み込まれて二人の仲を取り持ち、最後までギャツビーとの友情を育む。

ニックは風間柚乃さんの育ちの良さがにじみ出ていて、誠実なニックの存在が一服の清涼剤になります。墓地でのシーンもニックの振る舞いにより救われるように思います。

女流プロゴルファーである恋人ジョーダン・ベイカーにレッスンを受けて、コンペにも出場、という役どころですが、

実は風間柚乃(かざまゆの)さんの父はプロゴルファーの小達敏昭氏。故・夏目雅子さんの兄でもあります。

風間柚乃さんも小さい頃からゴルフに親しんでいるので、とても上手なのですが、わざと足を開いたり、グリップの両手の間を開けすぎるようにしたり、下手に見せるために苦労したそうです。

余談ですが、池ポチャの効果音は一階席後方のスピーカーから出ていました。凝ってますね。





感想『グレート・ギャツビー』月組:彩みちる(いろどりみちる)ジョーダン・ベイカー&天紫 珠李(あましじゅり)マートル

女流プロゴルファー、ジョーダン・ベイカー役は99期の彩みちる(いろどりみちる)ちゃん。トム・ブキャナンの愛人でデイジーの運転する車で轢き殺されたマートル・ウィルソンは101期の天紫 珠李(あましじゅり)ちゃん。

出番が多いのはジョーダンだけど、印象深いのは二番手のマートルかなぁ。トップ娘役に向けての熾烈な戦いが始まったのでしょうかー。

雪組の頃はベビーフェイスだった彩みちるちゃんがすっかり大人のタフな女性になっていて、感慨深いです。

彩みちるちゃん、滑舌もよく仕草や目線が魅力的。最後にあっさりとニックを捨てて旅立つところもかっこいい。

天紫 珠李ちゃんのマートルはドラム缶の上に座って上手側のすっぽんセリから登場。ミュージカルらしくていいですよね。

マートルは性に奔放なフラッパー。安っぽいアクセサリーにピラピラした派手な服装。戦争で男たちが出征してしまい、夫を選び損ねたと嘆きます。

この物語を紐解くには戦争は欠かせない。戦争があるからギャツビーとデイジーは出会い、ギャツビーは成り上がる。

変わらないのはトムとデイジーの住む上級階級。

トムはマートルを単なる遊び相手としか見ていないけど、マートルはトムは灰の谷のすすけた暮らしからの救い主。マートルがしがみつくほどにトムは冷淡になっていきます。

いきなり平手打ちしちゃうしねー。ウィルソンの妻なのに。そしてウィルソンも怒る前に「妻が粗相をしましたか?」とトムの機嫌を伺う。ひどす。





感想『グレート・ギャツビー』月組:輝月ゆうま (きづきゆうま)&英真なおき(えまなおき)専科の効果!

今回、専科からの出演は、ベテラン英真なおき(えまなおき)さんと元・月組で95期の輝月ゆうま (きづきゆうま)さん。輝月ゆうまさんは、トップスター月城かなとの同期でもありますね。

輝月ゆうまさんは裏社会のボスマイヤー・ウルフシェイム。原作のマイヤーは小柄な男という設定ですが、身長177cmでがっしりした体格の輝月ゆうまさんは迫力が半端ない。

懐が深く仕事には厳しい。怖いだけじゃなくて愛嬌をのぞかせるところが、大物感を醸し出しています。

悪の一味が、俺たちはまだ上を目指す……と歌うダンスナンバー。他の若手が悪い顔キメキメで踊るセンターで、ちょっと肩の力の抜けた感じで、でもきっちり踊っているところが本当にカッコイイ。

まゆぽん(輝月ゆうま)、専科に組替えになった時はさびしい気持ちでいましたが、これはいい異動でしたね。宙組『プロミセス・プロミセス』でも、深みのある老医師の役がよかったし、専科異動の意義が大いにあります。あちこちに降臨してほしい。

ギャッツビーの父親役の英真なおき(えまなおき)さん。ラスト墓地のシーンに登場。ニックが出した新聞広告を見て、田舎から駆けつけてきます。

息子を突然失った悲しみを抑えながら、息子自慢をする教養のなさそうなおじいさん。華やかなギャツビーとの違いが際立つシーンですが、場内の涙をかっさらっていきます。

さすが専科。

英真なおきさんは、この短いシーンだけ?先日、病気休演だったしやっぱり体調が悪いのかな??と思っていましたが、幕あき冒頭に運転手役で出ていらしたんですねー。

出番的に、もっと若い子かと思ってました。じょうずな若手が要るなーと思ってたんですが、英真なおきさんだったんですね、納得です。




感想『グレート・ギャツビー』月組:夏月都(かげつみやこ)&白雪さち花(しらゆきさちか)ベテラン娘役の存在感!

専科チームに負けず劣らず、芝居に奥行きと重みを与えているのが、夏月都(かげつみやこ)&白雪さち花(しらゆきさちか)のベテラン娘役。

夏月都さんは、デイジーの乳母の役。デイジーの結婚にもついてきた。若き日のデイジーがギャツビーの後を追って家出しようとしているところを、両親にチクって阻止。

デイジーの当時の上流婦人としての幸せをひたすら祈っているのがよく伝わってきます。

副組長を務める夏月都さんは、「グレート・ギャツビー」東京公演千秋楽をもって、宝塚歌劇団を退団することが発表されています。なっちゃん最後の作品がこれでよかったな。

白雪さち花さんは、デイジーの母と女流ゴルファーの二役。それ以外にもダンスシーンでバリバリ踊っています。貴族や上流階級の婦人をやらせたら宝塚で一番なんじゃないだろうか。

デイジーやギャツビーに対する毅然とした姿。この人の言うことを守っていれば間違いないと思わせる貫禄があります。デイジーも母や乳母の言うこと聞いていればよかったのにね。

ああ、長くなったので主要メンバーとベテランはここまで。若手注目株は別記事で書きます!





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