こんにちは。らら子です。
2013年9月に上演された『伊賀越道中双六』を通しで観たときの観劇記録です。
通し狂言でほぼ10時間の大曲ですが、通しで観ました。
大阪では事の発端となる「鶴ケ岡の段」が上演されたそうなのでもっと長い。
国立劇場にいた時間は約11時間。座り過ぎてお尻が四角くなりました。
目次
伊賀越道中双六 <第一部> 感想 あらすじ ネタバレ
<第一部>11時開演
和田行家屋敷の段
円覚寺の段
唐木政右衛門屋敷の段
誉田家大広間の段
沼津里の段
平作内の段
千本松原の段
冒頭から刃傷沙汰オンパレード
敵を追って各地を転々としながら東海道を上るのをすごろくに見立てた、
仇討ものなのねーという軽い気持ちで見始めたら、あらビックリ。
冒頭からいきなり刃傷沙汰だわ、大名対旗本のえげつない抗争(旗本が悪い感じ)を見せつけられるわ、巻き込まれて何人も死ぬわ、駆け落ちまでした恋女房を一方的に離縁した上に満座の中で恥をかかせるわ、息をもつかせぬ予想外の展開の連続。
そもそもは、「武将」に献上する名刀をめぐる騒動なんですが、義理とか誉とか忠義とか大義とか、そんなものの前には人の命なんて軽いものなのねー。
顎が落ちる思いでした。
呂勢大夫の透き通った美声
「沼津里の段」の中盤の豊竹呂勢大夫。
この人は、声も外見も舞台を見るたびに印象が違う。
今回は声がのびやかで透き通っているように思いました。
沼津の段では「瀬川」という元遊女を人間国宝の吉田簑助サマ
もうなんたって、人形の動きが別次元です( ;∀;)
月並みな言い方ですが、人間に居の意が人形の息吹を感じました。人形の動きに圧倒されてしまいました。
伊賀越道中双六 <第二部> 感想 あらすじ ネタバレ
<第二部>4時30分開演
藤川新関の段
引抜き 寿柱立万歳
竹藪の段
岡崎の段
伏見北国屋の段
伊賀上野敵討の段
どんどん人が死ぬ
大義の本懐を遂げるために、ただ見回ってただけの関所の役人をはじめ、
無関係な人間がバタバタと死んでいきました。
極めつけは、無辜の赤ん坊。
舅の仇をさぐるために別人に成りすましてたところを、
離縁した女房が赤ん坊を一目会わせたいと雪の中ようよう連れてきたのに、
ここで正体がばれるとまずいってんで、いきなり刺殺して庭にポイって投げ捨てちゃう。
憎しみの連鎖
それさー、仇とってもらう本人も喜んでないと思うよ。だって初孫だもの。
いきなり夫に子どもを殺された母親は発狂寸前。
この人だって仇とってもらう人にとっては愛娘ですよ。
その他にも、たまたま主筋が敵味方に別れちゃったがゆえに、
全然関係ないところで生き別れの父息子がそうと明かせないまま忠義のために会ったその晩に死に別れたり。
何が仇討だ、何が大義だ。もうね、憎しみは憎しみしか生みませんよ。
討ち取られた方の縁者だって今度は黙ってないと思うし。
もっとみんな話し合おうよ!と死に急ぐ登場人物たちに語りかけたい晩でございました。
仇討する志津馬が弱すぎる
ところで、仇討をしなきゃいけないのは元放蕩息子の志津馬(しづま)@美男子。剣術もあんまりうまくなくて義兄の助太刀が必須。
しかも弱い。怪我をしたら直らないし、旅の疲れがでて眼病にもなっちゃう。
それを献身的に看病する元遊女の妻。
この志津馬、いうたらアホボン。
悪者に唆されて遊女に入れあげた挙句に身請けの金策に名刀を勝手に質入れしたのがそもそもの騒動の始まりなんですが。
でも女にモテる。
元遊女の妻ある身でありながら茶屋の娘(父は関守)が自分に気があるのを知ると、うかうかとその気にさせて通行手形をほかの旅人からくすねさせるわ、関所破りに同行させるわ、挙句の果てに茶屋娘の許嫁の名を騙ってしっぽり一晩過ごしちゃう(その後、真実を知った娘は落飾仏門入り)。
文楽にダメんずが多い理由
志津馬のような優男。
こういうモテモテのダメダメな男がやたら文楽に多いのを不思議に思ってたんですが、イヤホンガイドの解説でふに落ちました。
昔は文楽の観客はほとんどが男性だったので、こういう男のファンタジーが人気だったんだそうですわ。なるほど。
岡崎の段、二番に出てきた呂勢さんは普通でした。
こういったら不遜ですが普通にうまいというか。よく4人も演じ分けてて偉いというか。
昼の部の沼津はなんか神がかってたんだけどなあ。
名人嶋大夫のド迫力
盆が回って、名人嶋大夫登場。長丁場には気圧されました。
すごい迫力。
見台(譜面台)にしがみつくように両手をおいて、
語るというより身体全体からほとばしるような義太夫でした。
人形遣いは、たばこを刻んだり糸を繰ったり肩もみをしたり目薬さしたり巻紙に手紙書いたり馬に乗ったり、細かい動きが面白かったです。
イヤホンガイドガイドの解説も適切な量で、よかったです。