【感想】文楽鑑賞教室A班2019年12月【東京】『伊達娘恋緋鹿子』火の見櫓の段:『平家女護島』鬼界が島の段

文楽鑑賞教室A班。

12月8日(日曜日)11時から。
文楽観劇仲間と行ってきました。

配役はこちらから。

令和元年(2019年)12月文楽公演(東京・国立劇場小劇場)の配役です。 リンクを貼ってある出演者名は芸歴などの情報が見られます。 ...

B班の感想はこちらから。

文楽鑑賞教室Bプログラム。 初日の夜は社会人のための文楽教室。 文楽初観劇の友達と行ってきました。 ロビーで豊竹藤太夫...




伊達娘恋緋鹿子(だてむすめこいのひがのこ)火の見櫓の段(ひのみやぐらのだん)

八百屋お七。Aプロは桐竹紋臣さん。Bプロの桐竹紋秀さんを先に観ているので、つい比べてしまうが、穏やかなお七。悶々とするというよりは、じっと思案に暮れている。

死に直面する恋人を想い、狂おしいというよりは、絶望の淵にいるような……。

床は竹本南都太夫さんと鶴澤清志郎さんが筆頭。南都太夫さんのつややかな美声に聞きほれる。正直、これほど美声の持ち主とは知らなかったです。

清志郎さんが手堅く、丁寧な演奏。B班より全体に年齢層が上?落ち着いた布陣。

たおやかなお七の動き。やがて櫓の上に上りきるとなだれ込んでくる、お杉(吉田簑太郎)、武兵衛(桐竹亀次)、丁稚(桐竹勘介)、太左衛門(吉田玉峻

このお杉は強そう。わっせわっせと刀を運ぶ。武兵衛の亀次さん、ひときわ鮮やかなエンジ色の袴をつけている。それはそうと、勘介さんの丁稚弥作が妙にケンカがうまい。まさか文楽でこんなリアルなケンカシーンが見られるとは思わなかったです。

弥作は、かなり痛めつけてる感が(;’∀’)

それにしてもチームワークがいい。八百屋OneTeam

運動神経のよさそうなA班。丁稚が投げた刀をお杉がキャッチするのも危なげなく。

勘介さんの丁稚が武兵衛を用水桶に突っ込むときに、太左衛門の玉峻さんがニヤリと笑ったような気がしました(笑)




解説「文楽の魅力」

A班の解説は、クリップボードを持たせたら文楽いちの豊竹希太夫さん。クリップボードを片手に慣れた様子で解説を進めていきます。文楽の全体的な話をサクサクと。

とても分かりやすく聞きやすい。

では、床の説明をいたしましょうと床へ移動。床の盆が回ると鶴澤寛太郎さん登場。

希太夫さんもクリップボードをもったまま床に移動、見台にクリップボード置いてました。そりゃそうか。

あれ?希太夫さんの紋付きは五つ紋、寛太郎さんは三つ紋。肩衣をつけてしまえば紋の数は気にならないけど、なぜか希さん格が高かったですね。

こちらは仮名手本忠臣蔵、裏門の段のセリフを使って、声と三味線で人物の語り分け。

まずふつうに語ってから、お軽をおばあさん、勘平をおじいさんで。三味線もぽきぽきと枯れた感じで弾いて、わかりやすい。

それから、三味線の奏法についての解説。A班のお二人はどちらかというと技巧解説派かな。笑いと取るわけではなく、淡々と説明が進みますが、独特のおかしみで場内から笑いが起きていました。





人形解説は吉田玉誉さん。汗をかきかき真面目な解説。今回の公演から前方スクリーンに人形遣いの手元や人形の顔を後方席にも見えるようにカメラがはいったのですが、初日に比べるとカメラワークがよくなってました^^

左遣いは吉田玉彦さん、足遣いは吉田玉延さん。やっぱりかわいい♡

人形説明もA班は、笑いを取りに行くこともなく、アドリブもなくきっちりきっちり説明をして、大変によくわかりました。

そもそも鑑賞教室の解説は必要な要素と順番は同じなので、どれを聞いても同じように思いがちですが、それぞれの技芸員さんたちの工夫やメンバーの組み合わせの違いもあって、一期一会だなあと思います。

ふたたび希太夫さんが登場。B班とは違ってさっくり人形遣いも退場(笑)平家女護島(へいけにょごのしま)の人物解説を淡々として終わりました。





「平家女護島(へいけにょごのしま)」鬼界が島の段(きかいがしまのだん)

床は千歳太夫さんに豊澤富助さん。

千歳さんは病気休演の豊竹呂勢太夫の代役という口上も聞かれました。客席も心配そう。

B班で豊竹藤太夫さんの見台は塗(ぬり)ではなかったので、この演目は白木を使うのかと思っていましたが、千歳さんの見台は塗でした。太夫も三味線も着物は黒。

俊寛は吉田和生さん。こちらの方が吉田玉男さんの俊寛より枯れた風情。お坊さんぽい。 風に吹かれて立っているのもやっとというような無常感が漂う。

吉田玉勢さんの平判官康頼がよろよろと登場。蔦を頼りに岩場を降りてくるけど、帰りもまた蔦を頼って戻っていかはるんやろかとかしょうもないことを思う。

吉田勘市さんの丹波少将成経も登場。つつましやかな二人との再会を喜ぶ静かな俊寛。そこへ千鳥登場。千鳥は豊松清十郎さん。初々しい。年端のゆかぬ純粋な海女。

思わず、実のお父さんお母さんはどこにいるの??と疑念が。他の人たちは衰えているのにこの子はきれいなおべべを着て健康そのもの。実はこの島はもっとずっと大きくて、俊寛たち三人がいるところは島の突端か何かで他はもっと栄えているんだろうか??とか思ってしまう。

結婚話でキャイキャイともりあがっているところ、康頼が大きな船が近づいてくることに気づく。

と思う間もなく接岸。






瀬尾太郎兼康(吉田玉也)、丹左衛門基康(吉田清五郎)。清五郎さん相変わらずびしっとオールバックが決まっている。

都からの上使ゆえ尊大な態度を見せる瀬尾太郎。名前を呼ばれると我先にと、もう必死に名乗り出る3人。俊寛以外の2人は赦されと知らされ、絶望の淵に落とされる俊寛。抑えた動きに深い絶望が窺えます。

やがて俊寛も岡山までは戻れると聞き、千鳥も連れて喜び船に乗り込もうとする3人に、初めから敵意丸出しの瀬尾太郎から無情な沙汰が。

まあまあ時間をかけてみんなが納得するようにしたら?と丹左衛門がとりなすものの、聞く耳もたぬ瀬尾。瀬尾さん口が悪くて頭の固いひとだけど、勤め人としての瀬尾さんの立場もわからないでもない。の気持ちもちょっとわかる。

ひとり残され、浜辺で身もだえる千鳥。かわいい。
ふと気づけば千歳太夫さん、全身をつかって大熱演。おお。ちょっと床に気をとられちゃう。

そして、たまらず船を降りてきた俊寛と、俊寛をとらえにきた瀬尾との一騎打ち。

玉男さんの俊寛は瀬尾への怒りが原動力になっていたように感じたけど、和生さんの俊寛はもはや失うもののない深い絶望が俊寛を前へと向かわせていたように感じました。

船が出てしまった後、岩場の突端までよろよろと上っていく俊寛。船の行方を狂おしく追うでもなく、小さくなっていく船の帆影をしみじみと確かめるように見つめるのみ。

この人はこの先どうやって日々を過ごしていくのだろうと思わせる無常感が残りました。





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