こんにちはらら子です。2021年10月歌舞伎座で『十月大歌舞伎』第一部を観てきました。
演目は、猿之助の男女の早変わりが話題の天竺徳兵衛新噺(てんじくとくべえいまようばなし)と、おめでたい舞踊の俄獅子(にわかじし)。なにげに、尾上松也大活躍の部でした。
四世鶴屋南北 作「彩入御伽草」より
奈河彰輔 脚本
石川耕士 補綴・演出
市川猿翁 演出
三代猿之助四十八撰の内
一、天竺徳兵衛新噺(てんじくとくべえいまようばなし)
小平次外伝
二、俄獅子(にわかじし)
十月歌舞伎第一部行ってきました。早変わりお見事! pic.twitter.com/3MXOwB5w78
— らら子 (@bunrakukimono) October 18, 2021
目次
感想:天竺徳兵衛新噺(てんじくとくべえいまようばなし):猿之助(えんのすけ)早変わり:あらすじ・ネタバレ
猿之助は主人公小平次(こへいじ)と、女房おとわの二役。
先に観た友人達から、猿之助はドヤ顔で早変わりしていると聞いていましたが、その通りでした!
さすがにどうやって早変わりしたのか分からないというほどではないですが、手品のすり替えと同じで、観客の目をそらしたり、何度か同じ動きをやって見せて、油断させてという間(マ)が絶妙。
幽霊となった小平次が宙乗りをして、着物のすそを長ーくスーーーーーっと引きずっているのもマンガチックで楽しかったし、なにより宙乗りのうまさが、さすがお家芸と思いました。
屋根から入ったり、窓から出たり、蚊帳からずるりと半身が抜けてきたり、かと思えば、トコトコ歩いたり、頭をかちわられた凄惨な姿ながらユーモラスな幽霊でした。
女房おとわは、気持ちのいいほどの「悪婆(あくば)」。小平次が巡礼の旅に出ている間に、坂東巳之助扮する多九郎(たくろう)といい仲になって、結託して小平次を殺してしまう。
もとは御殿女中で小平次と不義の罪で追放されたそうです。本当は上品な振る舞いの人なんですよねぇ。が、とてもそうは思えない品のなさ。
絵に描いたような「はすっぱ女」ぶりが魅力的です。
何度も沼に沈められてもこの世の未練から這い上がってくる小平次に、ためらいもなく刃を向け、杭にしがみつく小平次の指を一本一本切り落としていく残忍さ。
夫である小平次の父や妹と一つ屋根で暮らしていながら、間男の多九郎を家に引き入れるわ、悪に見えて意外と純情な多九郎を手玉に取るわ、怖いもの知らず。
鋭いところのあるが人の良い律儀な小平次と、ふてぶてしい悪女ぶりの切り替わりも、あざやかで感心しました。
感想:天竺徳兵衛新噺(てんじくとくべえいまようばなし):巳之助(みのすけ)・松也(まつや)・米吉(よねきち)
坂東巳之助扮する多九郎は、はじめの登場こそさっそうと現れていい人そうですが、実は悪党。しかも小物。
巳之助さんも中年に差し掛かって貫禄が増し、ふとしたしぐさが三津五郎そっくりになってきました。小悪党ぶりもどこか憎めず、幽霊に怯えるようすもコミカルで、おいしい役でした。
尾上松也演じる尾形十郎は小平次の主筋にあたり、どこをとってもいい男。冷静沈着で頭脳明晰な上にイケメン。
尾形十郎は、小平次が惨殺された蛍沼を通りがかったときに、血の匂いから事件をかぎとり、おとわを疑って一夜の宿を借りに来ます。
そこで小平次の妹がぞっこん一目惚れ。なりふり構わず言い寄るのも物ともせず、小平次殺害と下手人を明らかにし、小平次から家宝の鏡も受け取り忠義の目的も果たします。
妹おまきは中村 米吉(なかむら よねきち)。何しろちょっとタレ目のお顔立ちがかわいい。
おとわに意地悪を言われて「びびびびのびー」とむくれる姿もかわいいですが、かわいい顔して尾形十郎に言い寄るところのギャップもまたいいです。
妹おまきは、兄の死を知ってもかまわず恋に浮かれる様子を父に固く戒められ、外に縛られてしまいます。
そうしている間に幽霊となった小平次に体を乗っ取られ、急に腕っぷしが強くなって多九郎をやっつけます。このギャップもまたいいのですよね。
残念ながらおまきちゃんの恋心は実りませんが、鮮烈な印象を残したことでしょう。
奴磯平の男寅さんは型通り演じていたけれど、ちょっと学芸会みたいでしたねー。
感想:俄獅子(にわかじし)松也(まつや)・新悟(しんご)・笑也(えみや)あらすじ・ネタバレ
俄獅子(にわかじし)は初めて見ました。吉原の俄行事の様子。いかにも江戸の華やかな祭りの雰囲気にウキウキしていきます。舞扇を獅子頭に見立てた踊りが洒落ています。
いなせな鳶頭は尾上松也。すっきりと美しいです。音羽屋の紋、抱き柏を首抜きにした白い着物がよくお似合い。
若い衆を率いて華麗に見得を決めます。
花道から登場するのは博多帯を柳に締めた芸者二人。市川笑也と坂東新悟。笑也のほうが、お姉さん格のようです。
憧れの鳶頭にばったりいきあって舞い上がる妹分(新悟)をたきつけたり、からかったり。
新悟さん、ウブな雰囲気がよく出ていますが、このひと、なんで女形なんでしょうね。背も高いし表情も硬いし。見るたびに立役が出てきたかと思います。
清純な雰囲気で好きではあるのですが、もう30歳になるし、そろそろ老け女形もできないとねぇ、なんて老婆心。
笑也さんは、はんなりと柔らかいながら安定感があって、さらに現代的な雰囲気を身にまとった女形ぶりです。ちょっとしたポーズもさわやかな色気があって好き。
固い新悟さんと柔らかい笑也さん。そしてどこからみてもいなせでかっこいい松也さん。感心して見ているうちにアレあれ?眠くなってしまいました。
最後は夢心地でポーっとしているうちに終わってしまいましたよ。
良かったのかな。
感想:感染対策と歌舞伎座ガラガラに思う:チケット高すぎ問題もあり!イヤホンガイドのオペレーション
平日の昼間とはいえ、客席はガラっガラでした。仁左衛門玉三郎出演の回だけ客席が埋まるという状況が続いているようです。
観客の年齢層が高いので、まだまだ外出を控えている歌舞伎ファンが多いのでしょうね。それにしてもこの客入りで大丈夫なんでしょうか。
比較的人気のあると言われている一部でこれなので、演目が渋すぎる二部はもっと難しいでしょうね。評判の良い三部もやはり平日の入りは悪いようです。
宝塚ファンのらら子としては、歌舞伎のコスパの悪さも気になります。
歌舞伎はずっと三部制、客席も2つ置きに空席を続けています。チケット代が1等15000円、2等が11000円。桟敷は論外としても、高いですよねー。
宝塚は3時間みっちり公演して、S席9500円です。その上にSS席がありますが、それでも12000円。
これだって安いと思いませんが、実質的な上演時間が1時間半で歌舞伎座のこの強気の値段設定はどうしたことでしょう。
文楽だって三部制のときは少し安くなりますけどねー。このままでは、ますます客足は遠のくでしょうね。
パンフレット1300円も高いなー。伝統とうんちくがみっちり詰まった力作なんでしょうけど、荷物を減らしたいご高齢の方々が好んで買い求めるとも思えない。なにか頑張ってほしいものです。
ところで、イヤホンガイドは良かったです。解説員のクオリティはもちろん、受け渡しも。ロビーないではなく外で受け渡しというのがスムーズ。幕見席の入口前にテントを出して貸し出していました。
電子決済ができるのも良き。国立劇場は無駄なデポジット料金がなくなったのはいいけど、未だに現金授受なので(食券販売方式の、引換券販売機もいつの間にかなくなっていた)ここは歌舞伎座に軍配。
勝負じゃないけど。伝統芸能がんばれ。