感想:2021年2月文楽公演第3部:冥土の飛脚(封印切)梅川忠兵衛

こんにちは。らら子です。

文楽2月公演3部@東京・国立劇場小劇場。近松の名作『冥土の飛脚』行ってまいりました。さっそく3部の感想です。

1,2部の感想と感染症対策についてはこちらを御覧ください。

感想:2021年2月文楽公演第1部:感染症対策は?

感想:2021年2月文楽公演第2部:曲輪文章・菅原伝授手習鑑(寺子屋)

配役はこちらをご覧ください。

【文楽】2021年2月3部配役【東京】出演者・日程・時間変更:令和3年2月文楽公演(人形浄瑠璃)国立劇場:緊急事態宣言&感染予防対策





【文楽】感想「冥土の飛脚」秀逸なタイトルと近松の筆

冥土の飛脚は梅川・忠兵衛の心中物。近松の名作です。クライマックスの封印切りの段が有名なので、「封印切」の名でも呼ばれます。

それにしても冥土の飛脚ってすごくいいタイトルですよね。忠兵衛の生業である「飛脚屋」と公金に手を付け(封印切)で、あっという間にあの世(冥土)にまっしぐらが決定してしまうという暗喩。さすが近松はん。

主な登場人物は、主人公の忠兵衛、遊女・梅川、忠兵衛の友達の八右衛門。歌舞伎だと忠兵衛はいい人で、八右衛門は悪役になっていますが、文楽での八右衛門は分別があり情にも熱い大人の男。未熟で短気な忠兵衛を陰になり日向になりフォローしてくれています。





【文楽】感想「冥土の飛脚」淡路町(あわじまち)の段

飛脚の鑑と言われた老舗の養子に入った忠兵衛さん。養子とはいえ元は大百姓の子なので、お金のことで苦労らしい苦労をしたことはないんでしょうね。遊びたい盛りに山深い新ノ口村からいきなり都会に出てきて、タガが外れてしまった様子。そして養母がまたしっかり者。鼻紙の使い方ひとつ口うるさい。

忠兵衛の留守に武士や八右衛門の使いがやってきますが、相手によって手代が対応を変えるところが、なるほど江戸時代なるほど大坂と思わされます。

あっという間に都会の水になじんだ忠兵衛さんは、養母の様子を探るのに下女に色仕掛け。口説かれた方もなかなか手慣れたもので「腰湯使って待ってる!」とか言うあたり、その気まんまんなんだか意に介していないのかよくわからないところが面白いところです。

忠兵衛を遣うのはさすが勘十郎さん。歌舞伎でいうところの「つっころばし」の忠兵衛さんが本当にもう情けないというか憎めないというかちょっとした風情に色気があります。

八右衛門を口説き落とし、文盲の養母をしゃあしゃあとだまし、一難去ったところに公金が届き、さっそくお屋敷(北)へと向かうところが足が勝手に梅川のいる新町(南)に向かってしまう。

しつこいぐらいに行きつ戻りつする忠兵衛。いつしか羽織も脱げ、ウロウロウロウロ。やがて野良犬のしっぽを踏んづけ、さんざんに吠えつけられます。この野良犬。前回は動物専科の桐竹勘介さんでしたが、今回もそうでしょうか。鳴き声が上手。そして犬を追い払おうと投げつけた石がクリーンヒット。さすが勘十郎さんもとい忠兵衛さん強肩です。

あまりにきれいな放物線を描くので隣にいた友達に「あれは糸で操っているのか?」と聞いてきました。





【文楽】感想「冥土の飛脚」封印切(ふういんぎり)の段

忠兵衛のことを考えて気が滅入る梅川が越後屋に寄っていきます。梅川さんを遣うのが豊松清十郎さん。安女郎ながら品のある梅川さんです。気安い中の女主人・花車にちょっと相手をしてもらおうと入ると、上で朋輩女郎が遊んでいるから気晴らしに上がっていきなさいといざなわれます。

ここの女主人がいい風情だなといつも思います。火鉢の傍らで煙管をふかしたり草紙をひらいたり、酸いも甘いもかみ分けたという雰囲気が伝わってきます。

気のおけぬ朋輩女郎とあれこれを話し込んでいるうちにその場の雰囲気がずっしりと重くなっていきます。気晴らしに浄瑠璃を呼ぼうといってもお目当ての頼母(たのも)はいないというので、頼母の弟子だという禿(かむろ)が何も知らずに三味線を取り出してひとくさり。これがまだその場の雰囲気を重くさせます。

禿は吉田簑悠さん。床を気にしながら懸命に三味線を弾く姿に思わずがんばれと念じてしまったおばちゃんでした。三味線の左手を担当するの左遣いは吉田一輔さんかなーなどと黒頭巾をじっと見つめてしまいました。

さて、お待ちかねの(?)封印切。私はこの文楽の、止める間もなく封印を切ってしまう「短気は損気の忠兵衛」ぶりが気に入っています。「え?もう切っちゃった?」意志の弱さに加えて見栄っ張り、短慮ぶりがこのあっけない封印切に凝縮されているように思います。

ところで、今回不思議な光景を見ました。下手で身請けの手続きをしている間、上手で思案している八右衛門のところへ袖から黒衣さんがやってきて左遣いさんに何やら耳打ち。

八右衛門を遣う吉田文司さんにさらに耳打ちすると、文司さん「あ、そう?」というように反応しては八右衛門チームは客席に背を向けて何やら支度。袖から大きな黒衣さんがやってきて、文司さんが引っ込み、大きな黒衣さんが主遣いさんとして八右衛門が復活。

文司さんはその後、舞台に戻ってきて大きな黒衣さんと交代。舞台は進行し、やがて八右衛門はご注進のため下手へとはけていきました。

何が起きたのかわかりませんが、途中で主遣いが後退するなんて、そんなことってあるんですね。八右衛門ほどの人形を遣うとなるとそれなりにベテランの人形遣いでしょうから、出番のない人形遣いさんが黒衣になって着替えてきたのかなーとか、大きな人形遣いは玉助さんだったのかなーとかいろいろ考えちゃいました。




【文楽】感想「冥土の飛脚」道行相合(みちゆきあいあい)かごの段

道行相合の段。ひたすら切ないですねぇ。梅川もなんでこんな男に惚れたのですかねぇ。朋輩女郎からも慕われ、親思いで信心深く、忠兵衛をかばって時にいさめ。

もっと梅川を大事にしてくれる人がいたと思うんですけどねぇ。田舎の客とは言わないまでも、八右衛門さんにお世話になるとか、すればよかったと思いますよ。




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