こんにちは~。らら子です。
今回は、人形浄瑠璃文楽のストーリーテラー、太夫について説明しますね。
文楽は、またの名を人形浄瑠璃という通り人形劇です。
しゃべらない人形の代わりにセリフやナレーションを語る(かたる)のが太夫の担当。太夫について今回は深掘りしてまいりましょう。
目次
太夫は人形浄瑠璃文楽(にんぎょうじょうるりぶんらく)の語り手:歌舞伎義太夫も同じ立ち位置
こんな大阪の地下鉄日本橋駅にこんなクイズが張り出されていたそうです。
文楽には3つのパートがあります。物語を語るもの、三味線の伴奏者、人形を操る者。物語を語る者は何と呼ばれている?
地下鉄日本橋の駅でこんなポスター見つけました(^o^) pic.twitter.com/hgSAAzOmFb
— 文楽応援団 (@bunrakuouendan) August 19, 2016
正解は、太夫です。
つまり太夫は語り手(かたりて)なんですね。
歌舞伎でも太夫が語る場合があります。歌舞伎の場合は、歌舞伎義太夫といいますね。
太夫は語り専門。パペットマペットとは違う
よく誤解されがちですがパペットマペットみたいに、人形をあやつりながらしゃべってるわけじゃないんです。
人形を操る人形遣いは基本的に無言です。とはいえ勢いをつける場面では「ハッ!」とか掛け声を出すときがあります。
— パペットマペット (@papeushikaeru) June 19, 2019
太夫は舞台のどこに座っている?人形浄瑠璃文楽・歌舞伎
人形浄瑠璃文楽では、舞台の向かって右側の上手(かみて)に、舞台から客席へななめにせり出した「床(ゆか)」というスペースがあります。太夫と三味線はここに座って語ります。
床は「ぶん回し」といわれる作りで、次の出番の太夫との入れ替わりは回転床でどんでん返しになります。
こちらは国立劇場小劇場に設置された床です。これは取り外し可能です。
座席表には「出語り床(でがたりゆか)」と書いてあります。
ふつうは、上手側(右側)の出語り床だけが使われます。人数が多いと舞台の端まで座ります。
下手側の出語り床が使われる演目は、【文楽】妹背山婦女庭訓(いもせやまおんなていきん)が代表的です。この演目では上手と下手と両側から掛け合いもあります。
歌舞伎の場合は本舞台の上手に出語り床が設置されます。
太夫の前にある台はなに?
下は大阪の国立文楽劇場の出語り床です。本拠地だけあってさすがに立派ですね。
よく見ると、床の上に台がぽんぽんと置かれています。
本日は、初春文楽公演の立稽古を行いました。立稽古は、舞台に大道具は飾らず、太夫と三味線が床で稽古を行います。人形遣いは稽古を聴きながら人形拵え等準備をします。
初春文楽公演のチケットのお求めはこちらから下向き矢印
⇒https://t.co/TTdn4ZqWhV pic.twitter.com/t1qbZEPDSV— 国立劇場文楽公演(東京・大阪) (@bunraku09) December 26, 2020
書見台のようなもので見台(けんだい)といいます。この上に床本(ゆかほん)を載せます。
これは呂勢太夫さんと鶴澤清治さんのDVDのジャケット写真ですが、呂勢太夫さんは見台コレクターとして有名だそうです。ご本人いわくビョーキだとか。
太夫は人名や芸名にも使われる。もとは官位。
芸名で「〇〇太夫」という芸名に使います。
文楽の語りは義太夫節(ぎだゆうぶし)といって浄瑠璃というジャンルのひとつです。
義太夫節は、竹本義太夫(たけもと ぎだゆう)さんという人がルーツです。歌舞伎義太夫は人間国宝の竹本葵太夫さんのように〇〇太夫となります。
女性義太夫の場合は、たとえば名人の竹本駒之助さんなどもそうですが、太夫はつきません。
文楽以外の芸名、神主さんなどの神職、遊女の敬称や称号としても使われます。
NHKの大河ドラマ「麒麟が来る」では、尾野真千子さん演じる女芸人の伊呂波太夫(いろはだゆう)が登場します。
落語『紺屋高尾(こうやたかお)』にも出てくる有名な高尾太夫(たかおだゆう)は、芸能者ではなく花魁(おいらん)といわれる格の高い遊女です。
着物に白塗りでチクショー!!と叫ぶお笑い芸人のコウメ太夫さんは、そっち系のパロディ(のつもり)なんでしょうね。
噂によるとチクショーは松竹の逆で竹松、コウメ太夫の梅で松竹梅が揃うそうです。
「太夫」なの?「大夫」なの?
さて、太夫は「大夫」と書くこともあります。
らら子が文楽を見始めた数年前は、太夫さんたちの芸名は「〇〇大夫」のように「大」の字が使われていました。
そのころは「太夫の○○大夫さん」のように漢字変換がめんどうだったのですが、2016年4月に「太夫」に統一されました。
「大夫」というのは1953~54年から使われていたそうなのですが、「義太夫と同じにしたい」という太夫さんたちの要望により約60年ぶりに戻したそうです(出典:日経新聞2016年3月14日 )
その約60年間に出版された本や公演プログラムには、太夫の芸名は「〇〇大夫」になっています。
イケメン太夫の豊竹咲寿太夫(とよたけ さきじゅだゆう)さんはいまだにSNSの表記が「大夫」ですね。何か思い入れがあるのでしょうか。
芸名の読みは「たゆう」か「だゆう」か「たいふ」か:読み方のルールはある?
ところで、芸名の「太夫」の場合、読みは「たゆう」でしょうか「だゆう」でしょうか?
どこかに読み方のルールがちゃんと書いてあるのかもしれませんが、らら子の観察によると、「〇〇太夫」の〇〇の部分が2音だと「たゆう」、それ以外だと「だゆう」とにごるようです。
豊竹咲寿太夫さんは「さきじゅだゆう」←(「咲寿」がさ・き・じゅの3音)
豊竹咲太夫さんは「さきたゆう」←(「咲」がさ・きの2音)
竹本織太夫さんは「おりたゆう」←(「織」がお・りの2音)
豊竹呂勢太夫さんは「ろせたゆう」←(「呂勢」がろ・せの2音)
豊竹呂太夫さんは「ろだゆう」←(「呂」がろの1音)
ねでも、2019年4月に竹本文字久太夫(たけもと もじひさだゆう)から改名した豊竹藤太夫(とよたけ とうだゆう)さんは、太がにごるんですよね。
ま、「とうたゆう」とは言いにくいですものね(^^;
話は変わりますが、2014年9月に国立劇場で上演された『不破留寿之太夫』は、太夫を「たいふ」と読んでました。
この演目はシェイクスピア原作「ファルスタッフ」のパロディで、主人公の名前がファルスタッフ、つまり、不破留寿之太夫(ふぁるすのたいふ)。
ま、芸名じゃないですから(^・^)
『不破留寿之太夫』は、ファンタジックで楽しい、とてもきれいな舞台でした。
また見たいです。
参考にさせていただいたサイト
公益財団法人 文楽協会 https://bunraku.or.jp/index.html
コトバンク「太夫」https://kotobank.jp/word/%E5%A4%AA%E5%A4%AB-94485
文楽の芸名「太夫」に戻します 「大夫」から60年ぶり 2016/3/14 21:23
https://www.nikkei.com/article/DGXLASDG14H5N_U6A310C1CR8000/
不破留寿之太夫特設サイト https://www.ntj.jac.go.jp/kokuritsu/h26/falstaff.html