襲名とは?なぜ「襲」う(おそう)と書くの?襲名するのはどんな時?襲名(しゅうめい)の意味や読みをわかりやすく説明:

襲名(しゅうめい)って何?っていう方にわかりやすく説明しますね。

簡単にいうと先祖や師匠の名前を名乗って、名前を継ぐことです。
襲名すると、何代目〇太夫、何世〇郎のように、何の部分の数が増えていきます。

それにしても襲名(しゅうめい)って字はなんかコワイですよね(^^;
おめでたいはずなのに、なんだか名前を襲(おそ)って、強引にうばう感じ。

実は、「襲」という漢字は、「かさねる」という意味を持っているのです。
先人の名をつぎの世代にかさねていくんですね。

さて、襲名にはどんなメリットがあるのでしょう?




襲名されるのはどんな名前?名跡とは?

名前だけでなく、先代の芸や精神まで受け継いで、気持ちも新たにさらに向上していくという願いが込められています。

襲名するのはふつうの名前ではなく「名跡(みょうせき)」という由緒ある名前がほとんどですが、古い名前とは限らず、今でも、一代でビッグネームにして二代目に襲名されたら「初代(しょだい)」と呼ばれたり、自分であえて「初代」と名のることもあります。

追贈(ついぞう)と言って、死後にその名跡を贈られることもあります。




襲名する時はどんなイベントがある?

特にビッグネームは大名跡(だいみょうせき)といって、襲名の時は話題になります。

襲名披露となるとイベント盛りだくさんの場合もあります。

もっとも大掛りなのは歌舞伎俳優の名家の襲名で、興行者の商業政策にも影響され、とくに重々しく儀式的に扱い、華やかに披露興行を催し、その公演では披露のための「口上(こうじょう)」を設け、当人は大役を勤める。興行に先だっても、各方面への配り物と挨拶(あいさつ)とか、父祖・先代たちの墓前への報告など、いろいろの行事を行う。[松井俊諭]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)





「歌舞伎は襲名で、宝塚歌劇は退団で儲ける」

よく言われるのが「歌舞伎は襲名で、宝塚歌劇は退団で儲ける」というように、歌舞伎では大きなお金が動く大イベントになります。

宝塚歌劇はトップスターの退団ともなると、チケットが完売したり、さかんに記念グッズやDVDの販売がされたりします。

宝塚は各組のトップスターの任期は2~3年で入れ替わりのサイクルが早く、5組あるので毎年1,2名のトップスターが退団している感じです。

歌舞伎は、大名跡であればあるほど襲名お披露目は大掛かりになります。

2020年に予定されている、市川海老蔵さんの十三代目市川團十郎襲名は、5月、6月、7月の3か月にわたって歌舞伎座で行われることになっています。

また、6月、7月には息子の勘玄(かんげん)くんが、八代目市川新之助としての初舞台を迎えるのも大きな話題です。




文楽でも襲名はあります。親の名を継いだり師匠の名を継いだり

さてさて、らら子は文楽(人形浄瑠璃)ファンなので、文楽はどうなの?ってことをお話しましょう。文楽でも襲名があります。

歌舞伎よりも規模は小さめですが襲名披露はあります。

文楽は世襲制ではなく、実力本位の世界です。なので、歌舞伎ほど「家」は重視されません。

大事なのは師匠と弟子つながりなで、師匠の名前を襲名することがよくあります。
考えてみたら落語や講談もそうですね。

たとえば、人気の人形遣いの吉田玉男さんは二代目で、名人といわれた初代吉田玉男の弟子として、師匠の名を襲名しました。

もちろん親子で文楽をやっている方もいますから、自然の流れで親の名前を襲名することもあります。

吉田玉男さんと並んで人気の人形遣いの桐竹勘十郎さんのお父さんは、人間国宝の人形遣い、二世桐竹勘十郎で、今の勘十郎さんは三世です。

それから、三世桐竹勘十郎さんの息子は同じく人形遣いの吉田蓑太郎さん。いずれ四世桐竹勘十郎を襲名することになるのでしょうね。

孫が祖父の名前を襲名することもあります。最近では、吉田幸助さんが五代目吉田玉助を襲名しました。玉助さんのお父様は、やはり人形遣いの故・吉田玉幸さんで玉助さんの師匠でもありますが、四代目をお父様に追贈して、ご本人は五代目になりました。

また、古い名跡を復活させる動きもあります。

2020年に竹本津駒太夫さんが襲名した竹本錣太夫(たけもとしころだゆう)は80年ぶりの復活だそうです。




襲名以外で変わる名前もある

襲名以外にも名前が変わることがあります。たとえば、ついているお師匠が変わって、新しいお師匠様に由来のある名前にしたり、自分の思い入れのある名前に変わったりします。

もともと文楽は世襲ではなく実力本位の世界なので、襲名ではなく新しい名前をつけることも多いです。出世魚のように一人でどんどん名前が変わるとか、それぞれの事情があります。

襲名でなく改名の例は、2019年の初代豊竹藤太夫(とよたけとうだゆう)さんの改名ですね。

もともとは竹本文字久太夫(たけもと もじひさだゆう)さんでした。「藤太夫」という名のご先祖様がいらっしゃるのにちなみ、苗字も竹本から豊竹に変更して初代豊竹藤太夫さんとなりました。

イケメン三味線の豊澤龍爾(とよざわ りょうじ)さんは、お師匠さんが変わったのを機に、鶴澤友之助(つるざわ とものすけ)さんに改名されました。

ちなみに、若い技芸員さんたちが最初に名のる芸名は、お師匠さんの前名を名のることもあれば、まったく新しい芸名の場合もあります。

新しい芸名の場合は、本名やお師匠さんの芸名にちなんだり、お師匠さんがいくつか案を考えてくれた中から、自分で選んだりするそうです。

初代吉田玉男さんは、吉田玉ナントカさんの一門の一人として新しく玉男を名のり、一代で大名跡にした例です。




文楽の襲名披露は歌舞伎どう違う?

さて、歌舞伎に比べてなんとなく地味な文楽。やはり襲名披露も歌舞伎ほどの派手さはなく、こじんまりしています。

といっても、こじんまりとした中でも派手めな襲名披露をされる場合もあります。
その時は、劇場外にご贔屓筋やファンの方から贈られた「祝 襲名 〇〇さん江」というようなのぼりが立ち並び、ロビーには胡蝶蘭が飾られたりします。なかなか華やいでええもんでっせ。

歌舞伎ではあまり見ないきがしますが、ご祝儀袋をずらりと並べた白木のパネル(?)が出ます。日本酒のたるも飾られます。上品なしつらえですよね。

らら子の記憶では、吉田玉男さんの時は、女から男になるということで、後援会が「成男会(読み方は、じょうなんかい)」という襲名披露特設サイトをつくってました。

成男会 http://tamame-tamao.com/

吉田玉助さんの襲名の時も、ご本人の明るさもあって明るく華やかでした。

太夫で大がかりに襲名披露興行をやった方では、豊竹呂太夫さんが記憶に新しいです。

六代目竹本錣太夫(たけもと しころだゆう)さんの時は、ロビーの飾りやのぼり旗などはありませんでした。きっとこの違いには、大人の事情があるのでしょうね。




文楽の襲名披露の口上はどんな感じ?

歌舞伎だと襲名披露公演では幹部俳優がズラリとならんでにぎにぎしく順番に口上を述べますが、文楽の襲名披露は、歌舞伎に比べるとぐっと地味です。

太夫、人形、三味線の主な演者さんたちが順番に口上(こうじょう)を述べて、だいたい祝福の言葉と、ご本人や先代とのエピソード、ちょっとした暴露話を話します。

文楽の場合、襲名するご本人は一言も発しないことが特徴的。襲名するご本人はだまって土下座のような体勢でじっと下を向いています。

もっとも、元NHKアナウンサー山川静夫さんの著書(『山川静夫の文楽思い出ばなし』岩波書店 ,2017)によると、豊竹咲太夫の襲名の時は茶目っ気たっぷりにご本人が口上を述べたとありますから、絶対的なルールではないようです。




文楽の襲名披露は地味^^;

ところで、口上で舞台に上がる皆さんは、おそろいの肩衣(かたぎぬ)と袴をつけています。これは、すべて襲名する人が全員分の衣装を用意するそうです。やっぱりお金かかりますね。

肩衣(かたぎぬ)と袴はピンクとか萌黄とか派手な色のこともあります。が、歌舞伎と違って、白塗りの化粧をした人や子役が出ることはなく、ナチュラルヘアで素顔のおじさん達だけなのでそこも地味です。

大名跡(だいみょうせき)の襲名や、花形スターの襲名は舞台上で口上がありますが、そうではない場合は、太夫がすわっている台(太夫台)の上で紹介されたりすることもあります。

極端な例だと、公演プログラムや公式サイトに書いてあるだけという場合もあります。

そういう時も、お芝居の開始合図で黒衣さんが「東西東西(とざいとーざい)」と声をかける時に、演者の名前が変わったことが紹介されます。

そんなときは客席から温かい拍手が起こってなかなかいいもんです^^





文楽の襲名披露でお練り(ねり)のパレードをすることも!

とはいえ、たまにどーんん!と派手な襲名興行をする方もいます。
文楽界のサラブレッドにして広告塔の竹本織太夫さん。

豊竹咲甫太夫さんから竹本織太夫に襲名されたときは、大阪の文楽劇場の近くのいくつかの商店街で、お披露目のお練り(おねり)が行われました。

織太夫さん親子をはじめ、人形遣いや三味線弾き、もちろん人形も参加。

地元出身の織太夫さんだけに、商店街を練り歩くと多くのお客さんがつめかけて声援を送ったようです。テレビや新聞でその様子が紹介され、多くのお客さんと握手しながら練り歩くにぎやかな様子が伝わってきました。

華やかですね~。もっとお練りをする文楽の演者さんが増えると楽しいですよね。





襲名を盛り上げる襲名記念グッズ

襲名も改名も心機一転、さらなる飛躍を期待されます。華やかな襲名の雰囲気にお客の側もウキウキとテンションがあがりますね。
襲名の記念にグッズも作られたりします。文楽の襲名の時はオーソドックスなところでは、ごひいきに手ぬぐいが配られたりします。
大きな襲名披露パーティーをやったりする方は、引き出物も特注したりするということです。
襲名披露公演では襲名する方のお名前で特設テーブルが用意されて、そこで鑑賞チケットを引き換えることが多いのですが、その時に手ぬぐいとパンフレットをいただいたりします。時間帯によってはご本人があいさつに出ていたりして、「おめでとうございます」なんて声をかけるのも、気分がいいものです。

襲名によってひと回り大きく深く、芸の道は遠いですね。次はどなたが襲名するのか楽しみです。




参考にさせていただいたサイト

コトバンク襲名 https://kotobank.jp/word/%E8%A5%B2%E5%90%8D-162211