【感想】 文楽2019年9月2部『嬢景清八嶋日記(むすめかげきよやしまにっき)』東京・国立劇場

『嬢景清八嶋日記(むすめかげきよやしまにっき)』

あらすじと配役は以下のリンクからどうぞ。

【文楽】嬢景清八嶋日記(むすめかげきよやしまにっき):かんたんあらすじと解説:見どころは?

【文楽】2019年9月公演【東京】2部(嬢景清八嶋日記/艶容女舞衣)配役・出演者・日程:令和元年9月文楽(人形浄瑠璃)国立劇場小劇場

この演目、もとは能の景清の話だということ、首(かしら)はこの演目でしか使われない独特のもの、というのは知っていましたが、実際に見たのは今回が初めてでした。



花菱屋の段

冒頭にキョーレツなおばあさんが出てきました。いかにもゴーツク張りといったところ。店のものに用事をいいつけるいいつける^^;、しかもいちいち意地の悪い感じ。

ここまでくると一つの芸風ですね。対して仏と言われる花菱屋・長(ちょう)。穏やかだでカミさんの尻に敷かれていると自嘲するけど、いうところはビシッと言う。

そこへ糸滝を連れて訪ねてきた佐治太夫。これも道理のわかったいい人。気の毒な身の上の糸滝が金を工面できるように花菱屋に身売りの斡旋をしますが、肝心の糸滝は「身売り」するとどうなるのかよくわかっていない様子。

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上玉になることは間違い無しの糸滝をはじめは大いに気に入っていた婆は、糸滝の身の上を聞いて店に害が及ぶのでは……と渋りますが、身の上に同情した長は破格の待遇で迎えることします。しかも佐治太夫に付添を頼んで日向までの旅費も出してやるという。

店の者たちも糸滝に同情して、餞別の品をもって次々と登場。ここは一人遣いのツメ人形ながら、超若手の人形遣いのオン・パレード。さすがのゴーツク婆もみんなに負けてはいられないと、年季を半分にする大盤振る舞い。

でもちょっと待って??次々と渡される物は、遊女の櫛や笄(こうがい)、やりて婆は言葉だけ、お針子の裁縫道具、飯炊き女にいたってはお弁当箱いっぱいの白飯、みんなタダか店の備品です。ちゃっかりしてますね笑

ここは織太夫さんの朗々とした語り。いつもこのひとは気持ちよさそうに語るなーと思いながら聞いていました。それを支える緩急自在な清介さん。名コンビです。



日向嶋の段

場面は変わってはるばると日向島。

千歳太夫に三味線は富助さん。
事前の解説によると、能楽へのオマージュで、人形遣いの足元を隠す手すりが青竹、太夫の見台は塗りでなく白木ということでした。千歳太夫さんの見台は、真っ白ではなくてちょっと焼き色のついた茶色がかったものでした。

ゴツゴツした岩場を降りてくるみすぼらしい男、景清。立派な武将であった頃の装束がボロボロになっているところがかえって哀れを誘いますが、首から下げたズダ袋はパッチワーク風でちょっとおしゃれかも。

景清を遣うのは玉男さん。堂々たる姿。額に光る汗もカッコイイ!ありあわせの供物で主君の位牌にた向けてる景清。

そこへ佐治太夫とともに糸滝が乗った船が近づいてくる。ので、私の目はもう箕助さまの遣う糸滝にロックオン!遥かに見える島影をワクワクとすっと眺めてきたのだろう風情。体を精一杯に伸ばして、着岸を今か今かと待ちわびる。か、かわいい!

船頭は勘介さん。淡々と舟を扱います。安全航行っぽいプロ。

千歳太夫さんの語りは、景清の重々しい感じ、佐治太夫の如才なさ、里人の田舎じみたところから鎌倉方の武士にがらっと口調が変わるところなど聴き応えがありました。

でも、糸滝はちょっと幼すぎるかなと思いました。いくら身売りが実感できないほどの年齢でも嫁入りしてもおかしくない年。ここは違和感がありました。



すっかり存在を忘れていた娘に心を閉ざして景清は死んだと言い捨てる本人。切々と口説かれているうちに徐々に心が解けていきます。ヒッシと抱きつかれてその顔をひと目なりとも見たいと、まぶたをこじ開けると、赤く光るガラスの眼。コワイー(ToT)

百両を用立てたのは大百姓に嫁いだからと取り繕う佐治太夫の言葉を聞いて、突如として怒り出されて怯える糸滝。ひえええコワイ。怯える糸滝の後ろでいつもはポーカーフェイスの箕助さまも怯えている!

玉男さん操る激怒する景清。怯える糸滝。佐治太夫と周囲の里人はこれが景清の精一杯の芝居であることを見抜いています。

書き置きと百両を残し、佐治太夫につれられ、景清の刀と共に舟で去っていく糸滝。残された景清は人にモノを頼むという心も取り返し、里人に代読してもらうと、糸滝が身売りしたという事実を知ります。

文字通りごろごろごろっともんどりうって悔やみ、苦しむ景清。舞台を転がる景清の動きがすごい迫力です。

その間に里人は武士の出で立ちに生着替え。実は鎌倉方から遣わされた見張り役であったことを明かし、景清は頼朝に従い、糸滝は救われることになります。

島でずっとスタンバイしていたらしい立派な船にはすでにお供も乗っています。鎌倉方にとっても、景清はそれだけの重要人物なのですね。源氏への忠誠の覚悟に、肌見放さず持っていた主君の位牌を船上からぽいっと海に捨てる景清。

その行為はいかがなものかと思いながらも、黒衣の手に掴まれてゆーらゆーらと漂っていく様子をずっと目で追ってしまいました。



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