感想『近松心中物語』KAAT神奈川:田中哲司×笹本玲奈×石倉三郎、松田龍平×石橋静河×朝海ひかる:長塚圭史演出:神奈川芸術劇場

こんにちは。らら子です。
KAAT神奈川芸術劇場プロデュース『近松心中物語』を見てきました。

ワタクシあまりストレートプレイは観ないのですが、近松モノだし、元宝塚トップスターの朝海ひかるさんも出るし、というので文楽好きヅカ好きとしては見逃せないわねと。

結論から申し上げますと、舞台装置、役者、展開ともにとてもよかったです!






感想『近松心中物語』KAAT神奈川

『近松心中物語』は、1979年の蜷川幸雄の演出で帝国劇場で上演され、以後、何度も上演されています。

孤高の劇作家、秋元松代(あきもと まつよ)が初めて大衆的な人気を得た作品だそうです。

申し訳ないぐらいの予備知識で出かけました。

今回、2021年4月から任期5年の予定で長塚 圭史(ながつか けいし)がKAAT神奈川芸術劇場の芸術監督を務めることになり、その1シーズン目として上演される。

元・宝塚雪組のトップスター朝海ひかるが出る。

音楽はスチャダラパーが担当する。

『近松心中物語』は、『冥途の飛脚』と、『ひぢりめん卯月の紅葉』、その続編『跡追心中卯月のいろあげ』の三篇を組み合わせてガラガラポンした作品。

『冥途の飛脚』の梅川忠兵衛はわかるけど、『ひぢりめん卯月の紅葉』のお亀与兵衛は知らへんなー。ぐらいの予備知識だす。





感想『近松心中物語』KAAT神奈川:舞台装置がスタイリッシュ

スチャダラパーの軽快なリズムに乗って幕があいたら着物の人たちが。あ、洋装じゃないんだ。ポスターが洋服だから現代劇かと思ってたら、本格的に江戸時代なのね。

八百屋舞台というのでしょうか、傾斜がついた舞台。一点透視的に奥に行くほど狭くなっていて、廓の通りにもなり、路地にもなり、座敷にもなり、店先にもなり。

両側のパネルのスキマから人が出たり入ったりするのも立体感があって面白い。横から提灯で照らされたりするものいい。

田舎者をバカにする廓の人々の悪態がひとしきりにぎやかに繰り広げられた後、本編へ。




感想『近松心中物語』KAAT神奈川

粋(すい)を重んじる廓でも、やはりモノを言うのは金。いびり遊郭で金に物を言わせて好き放題する金持ちを見て、呆れたような無力感を味わう与兵衛。

廓では大店傘屋の若旦那としてちやほやされ、白菊という遊女にも惚れられているが、自分が婿養子でなんの力もないことを思い知っている。

与兵衛を演じるのは松田龍平。無気力ながらも優しい心根の持ち主で遊ぶ気持ちも失せているが太鼓持ちたちにせびられると「ほな遊ぼうか」と断れない。関西弁が心地いい。

家を追い出され、廓に入り浸っているところを養母である傘屋の女将が迎えに来て、廓の人々の面前でつまらないことは気にせずさっさと家に帰れと命じられ、引きずられるように帰って行く。

この朝海ひかる演じる傘屋の女将が、すぱすぱした物言いや物腰がいい。

一方、ふと拾った手紙の中に小銭が入っているのを見つけた飛脚宿の若旦那の忠兵衛。為替を扱う人間として持ち主に返さなければという律儀な気持ちで新町の廓街に足を踏み入れるが、慣れない場所でまごまごしていると、同じ飛脚宿仲間で友人の八右衛門と偶然出会って茶屋まで案内してもらう。

八右衛門は遊びを心得た大人の男。その割にしつこく遊んでいけと誘うが、忠兵衛の心意気をを気に入った茶屋の主人のとりなしで、まっすぐ店に帰ることに。

しかし、忠兵衛は帰りしなに梅川とすれ違った二人は一瞬で恋に落ちてしまい、二人の運命は大きく変わっていくことに。




感想『近松心中物語』KAAT神奈川:梅川×忠兵衛×八右衛門

八右衛門が亀屋を訪ねると、あれ以来、商売に身が入らず夜になると出かけていくと心配する養母。いっそ身を固めさせたらいいだろうと話し合っていると忠兵衛の帰宅。

縁談に気の乗らぬ上に、実父も了承済みと聞いて激高する忠兵衛。忠兵衛は真面目なおとなしい男だがやや短気(だから封印も切っちゃう)。原作では梅川に短気を諭される場面があったように記憶していますが、この演出ではいきなり短気。

田舎の客の身請け話が持ち上がっていることを八右衛門から知らされ、居ても立っても居られない忠兵衛。今夜も店を出ていきます。

八右衛門はその田舎の客に恩義があって肩入れしており、飛脚宿仲間としても忠兵衛の深入りを心配しており、なんとしても田舎の客に勝ってもらいたいと思っていますが、梅川の朋輩も、女郎屋もみな梅川・忠兵衛の味方。とりあえず手付で50両を入れておけということになりますが……。

感想『近松心中物語』KAAT神奈川:お亀×与兵衛×養母

ところ変わって与兵衛の店。養母に廓から連れ戻されてからはほぼ軟禁状態、養母に嫌味を言われ妻のお亀にはしつこくやきもちを焼かれる毎日。

家付き娘のお亀はいまだに振袖で少女気分が抜けない夢見る夢子ちゃん。継母である養母とも仲良く、まずまず幸せに暮らしている。与兵衛は親戚筋とはいえ家の中には格差があり、きっとこのまま一生頭が上がらないまま生きていくのだろうと無気力になっている。

そこへ、同じ郷里の八右衛門が与兵衛に50両を貸してくれと言われ、二つ返事で引き受ける与兵衛。金入れの錠前を壊して「ちょうどこんだけあったわ」と忠兵衛に渡します。

忠兵衛の心配をよそに、自分を頼ってくれて嬉しいからとさらりという与兵衛。店の金50両を盗む。それがどういうことか分かっていても止められない破滅願望。

与兵衛にしてみれば、カゴの中の鳥のような自分の身に比べ、遊女とのっぴきならぬ仲になっている忠兵衛がうらやましいんでしょうね。恋に燃える忠兵衛に自分の夢を託して、破滅する道を選びます。

傘屋を出奔し、その優しさからお亀に謝りに舞い戻る与兵衛。

お亀の情熱に突き動かされるままに、しじみ川の辺まで行ってきた与兵衛は、生きるつもりもないし、死ぬつもりもない。川に落とした刀を拾うために川に入って溺れ、助けようとして川に入ったお亀は死に、与兵衛は死にきれず不名誉な片割れとして生き残る。




感想『近松心中物語』KAAT神奈川:ラスト

心中物でありながら、次の世代に続くような救いのあるラストシーンが染み入りました。

原作ではそれぞれ意地の悪い人がでてくるけれど、登場する人々がみな優しいのもよかった。す

忠兵衛の友人、八右衛門は同業者として厳しいことも言わなければならないが、忠兵衛の身の幸せを心から願っている大人の粋な男。養子である忠兵衛が肩身が狭いと感じている亀屋の大女将も、養子に気を遣ってあれこれ心配している。

与兵衛の婿入り先の傘屋の女将はポンポン厳しいことを言うけれど、継子のお亀をかわいがり、出奔した与兵衛が舞い戻ってくると知らぬふりして金包みを与える。終盤に少しだけ出てくるお亀の父も、甥にあたる与兵衛を助けてやりたいと絞り出すような声でつぶやく。

侍や役人はいばりちらし、金持ちは金に飽かして好き放題する。そんな世の中では大店の主人といえども、弱い立場。その中に養子に入った与兵衛や忠兵衛はその中でもさらに弱い立場。何不自由ないはずのお亀も古い商家の跡取り娘としてがっちりと組み込まれている。さらにさらに貧しく弱い立場の遊女たち。

幾重にも重なった格差の中で、あるものは死ぬことで魂の自由を得、あるものは格差を受け入れ優しく生きていく。





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