【文楽】嬢景清八嶋日記(むすめかげきよやしまにっき):あらすじ【歌舞伎】『孤高勇士嬢景清(ここうのゆうしむすめかげきよ)』元ネタのかんたんあらすじと見どころ解説

『嬢景清八嶋日記(むすめかげきよやしまにっき)』の主人公は悪七兵衛景清(あくしちびょうえかげきよ)と、その娘、糸滝(いとたき)。明和元(1764)年初演。全五段のうち三段目のみ残っています。
悪七兵衛景清の悪は、悪いという意味ではなく、今風にいうと超強いという意味だそうです。

NHK『ちかえもん』で、繰り返し登場した出世景清や、能楽の『景清』など、「景清もの」のジャンルがあります。

もとは『大仏殿万代石楚(だいぶつでんばんだいのいしずえ)』という話の三段目の花菱八尾團をそのまま人形浄瑠璃にあてはめたのが本作です。

2019年11月に国立劇場で歌舞伎作品として上演の『孤高勇士嬢景清(ここうのゆうしむすめかげきよ)』は、その前に「東大寺大仏供養(とうだいじだいぶつくよう)」を合わせて、通し狂言としています

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通称 日向島(ひゅうがじま)・盲景清(めくらかげきよ)

景清は、名高い平家の侍大将でしたが、今は源氏の世となっています。景清は奈良・東大寺の大仏供養に現れた源頼朝(みなもとのよりとも)への復讐に失敗して、今は、日向国(宮崎)に流人となっています。

源氏の世の中を見たくないからとか、源氏の姿を見ると復讐の血がたぎるとか、という理由で自分で両目をえぐり取って盲人になっています。

景清には、目を開けると真っ赤に目をくりぬいた痕が覗く専用の一役首(ひとやくかしら)を使います。

この演目は能の「景清」へのオマージュで、人形遣いの足元を隠す手すりには青竹を使います。太夫の使う床本を置く見台(けんだい)も、通常の漆塗りではなく、白木のものを用います。



花菱屋の段(はなびしやのだん)

糸滝は数え14歳の少女。2歳の時に母と景清は別れ、親だと思っていた乳母にも死なれ、天涯孤独になりました。

自分の出生を知った糸滝は、百両あれば盲人が検校(けんぎょう)という位を買うことができると聞きつけ、父・景清を官位につけるため遊女奉公を決心します。

話を聞いた口入屋(人材斡旋業者)の佐治太夫(さじだゆう)は糸滝を花菱屋に連れて行きます。

花菱屋の主人も話を聞いて糸滝に同情して百両の金を渡し、店の者達もさまざまな餞別(せんべつ)の品をくれ、糸滝は佐治太夫に付き添われて、日向に向かいます。



 日向嶋の段

景清は、すっかり落ちぶれて源氏への恨みは忘れず過ごしています。

佐治太夫とともに、日向島に到着した糸滝。目の前の老人が当の本人とは知らずに、景清の行方を尋ねると、景清は「その男は餓死した」と告げます。

はるばる訪ねてきたのに、ショックでへたへたと座り込んでしまう糸滝。佐治太夫がせめて墓参りをしようと肩を貸して歩き出します。

とおりかかった里人達に道を尋ねると、先ほどの男が景清だと教え、親子の対面となります。

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画像の場面ですね。娘を無情にも追い返そうとする景清でしたが、娘に抱きつかれると見えない目を押し上げて開こうとします。

糸滝は百両を渡し、その金は大百姓に嫁いだために得た金だと佐治太夫が説明すると、景清は突然はげしく怒り出します。

源氏の世の中で平家の武将の親がいては娘に差し障りがあるという親心でした。

名刀とともに糸滝を追い返した景清は、里人から糸滝が残していった書き置きの中身を聞きます。娘の身売りの真相を知り号泣します。

里人達は実は頼朝の家来で、景清を見張っていたことを明かし、頼朝に従うようにすすめます。糸滝は救われることになり、景清は島を離れる船に乗り込みます。



見どころは「景清(かげきよ)」という特殊な首(かしら)

嬢景清八嶋日記(むすめかげきよやしまにっき)』「日向嶋の段(ひゅうがじまのだん)」の景清に用いられる首(かしら)は、その名も「景清」、この演目でしか使われない特殊な首です。

落ちぶれても昔の武骨さを失わない武将のつらがまえを表現するために、顔は縮緬(ちりめん)の布張りです。手・足も縮緬張りの特殊なものを使います。つまり、他の人形のように滑らかな肌ではないのですね。

そして、いつもは目を閉じていますが、無理に開けると、両眼をくりぬいた痕を見せるために赤いガラスをはめ込んであります。眉毛も動きます。


参考サイト
令和元年11月歌舞伎公演「孤高勇士嬢景清(ここうのゆうしむすめかげきよ)―日向嶋―」:https://www.ntj.jac.go.jp/sp/schedule/kokuritsu_l/2019/11173.html

令和元年9月文楽公演特設サイト://www.ntj.jac.go.jp/kokuritsu/2019/bunraku_9.html