感想『心中・恋の大和路』2022年雪組:和希そら・夢白あや:梅川忠兵衛の新たな伝説!異例の追加公演ディレイ配信!

こんにちは。らら子です。

2022年雪組『心中・恋の大和路』。ワタクシなんとか東京公演のチケットをゲットして見てまいりましたので、さっそく感想をお届けします。和物姿も美しい和希そらさん、新たな伝説を作りました!





感想:心中・恋の大和路:追加公演とディレイ配信決定!感動の舞台挨拶

新型コロナウイルス感染第7波の影響であえなく休演。梅田芸術劇場シアタードラマシティ公演は2022年7月20日から25日までの上演。

東京・日本青年館の千穐楽が予定されていた2022年8月9日15時半の回と、急きょ決定した8月10日11時と15時半の回、計3回が上演されました。

2022年8月28日ディレイ配信も決定しましたよ!すばらしい公演がお蔵入りしなくてよかった!

作品の世界観を守るために通常は一度幕が下りたあとは梅川忠兵衛が客席に一礼して雪山に戻っていくのみなのですが、この事態なので特別に全員が顔を見せてのカーテンコール。

3回とも和希そらさんは涙をみせず。おだやかにほほ笑みながら上演再開と追加公演ができたことへの感謝を述べていました。さらに「お客様にたくさんの幸せが訪れますように」と祈ってくれました。

千穐楽の挨拶は少し違っていて、今まで何度か経験している悔しさはあるけれど、改めて役を深め、芸事に一層精進していくと話してくれました。

「今まで何度か経験している悔しさ」という言葉の重みがずーんと伝わってきました。

最後はスタンディングオベーション。和希そらさんが一人だけ幕前に出てきて、ユーモアを交えて挨拶してくれました。宝塚の皆さんにもたくさんの幸せが訪れますように。

あらすじ、解説はこちらをご覧ください。

心中恋の大和路あらすじ解説~冥途の飛脚~宝塚・文楽・歌舞伎の違い見どころ原作は?八右衛門は悪者?封印切・梅川忠兵衛・恋飛脚大和往来

和希そらさんに暑苦しく語っている様子はこちらから。

和希そら人気の理由!ダンス歌芝居センス抜群!小粒でぴりりと辛い!性格は?他のジェンヌとの関係は?





感想:心中・恋の大和路:さすが和物の雪組!美しい所作!注目は希翠那音(きすいなおと)

宝塚では何度も繰り返し上演されている本作。ここ3回は雪組で上演されています。

さすが、和物の雪組。着物の着こなしも所作も「お腰が入って」美しく、安心してみていられます。

真ん中の3人がいずれも他組からの組替えメンバーなのに、和物の世界に違和感なく入り込めるのは、周囲の和物のスキルの高さが大きいでしょうね。

大阪商人のあきんど言葉がすうっと流れるように入ってきます。

専科の悠真倫(ゆうまりん)さんを筆頭とする、宿衆(=飛脚問屋の旦那衆)の大阪商人ぶりも板についていてよかったー。

悠真倫さんはネイティブ大阪弁スピーカーなので、頼もしい存在だったでしょうね。

大体がセリフの応酬ですが、宿衆(=飛脚問屋の旦那衆)の静かで幻想的な輪踊りが入ります。これも悠真倫さんの上手さが際立っていました。さすが専科の貫禄。

飛脚問屋亀屋の番頭は真那春人(まなはると)さん。この番頭さんは亀屋の格や店先の雰囲気を創り出します。

演技指導のOG立ともみさんから「こびへつらえ」と教えられたとかで、りっぱなこびへつらいぶりでした。仕事にきびしいだけでなく目下のものには優しいまなざしをむける温かい番頭さんでした。

亀屋の隠居・妙関の千風カレン(ちかぜかれん)さん。隠居というにはちょっとお若い漢字でしたが、しっかりと場を引き締めていました。

丁稚や子役の演技にいたるまで、舞台のすみずみまで芝居が行き届いていて、満足でした。

ひとつ感心したのが、蜆売りの希翠那音さん(きすいなおと)さん。105期生なんですね。天秤棒を担いで「あさりーしじみー」と低い声で呼ばわりながら、舞台の下手から上手を横切っていきます。

姿勢も足元も呼び声の音程もテンポも確か。後の場面では幇間(ほうかん)で登場しますが、なかなかな芸達者。これから注目していきたいです。





感想:心中・恋の大和路:美しい和希そら忠兵衛のこじらせっぷり

和希そらさん。美しかった!

どちらかというと、和物からは遠い印象。それが和物の雪組に組替えになっていきなりの主演。しかも忠兵衛はニンにない軟弱な役。どうなるのかちょっと心配してました。

さすが仕事を期待以上にこなすソラカズキ。

ポスター画像はあっと驚く美しさです。同期の妃華ゆきのさんが、終演後毎日和物メイクの練習をしていたと、宝塚専門チャンネルの「ナウオンステージ」で明かしていました。

舞台ではさらに美しくなっていました。

忠兵衛は「短気で損気」の設定。和希そらさんの忠兵衛は、声も高く、どこか少年ぽい。一言でいえば軟派な奴。

養子に見込まれ、若くして飛脚問屋の主人に収まるほどなので、ぼんくらではなく仕事もできるはず。手代の与平に封印に手を付けてはいけないと諭したりする分別もある。

でも、とにかく短気で切れやすい。田舎育ちのコンプレックスの裏返しか、必要以上に自分を大きく見せようとする、ガラスのようなこじらせ青年です。

しかも周囲に甘やかされている。ふしぎな魅力があります。

『オーシャンズ11』のライナスが、役作りの引き出しに入ってたんでしょうね。

実家では継母に邪険にされていた極道息子だと、あとから父・孫右衛門の口から語られます。

体よく田舎から都会に養子に出され、たった一人の友達の八右衛門に廓の遊びを教わり、そこで出会った梅川が破滅へ向かう「ファムファタル(運命の女)」だったわけですね。




感想:心中・恋の大和路:夢白あや遊女梅川はメンヘラっぷりがうまい

梅川の身請けの手付金のことで、忠兵衛は梅川に八つ当たりします。浮気者となじられ梅川は短刀を首にあてて死のうとし、すったもんだの挙句に忠兵衛も必死に止めます。

忠兵衛は田舎の客に取られるぐらいなら、梅川が死んだ方がいいと思ったといいます。

忠兵衛からそれを聞き、さらに「梅川」ではなく「お梅」と呼ばれて有頂天。

夢白ちゃんの梅川はその一言でぽわわわーんと顔が輝き、愛の証に「立派に死んでみせます!」とか言い出します。

うわー、梅川は、本心で言ってるんだな、ヤバいぞこれ、と思わせる。

夢白ちゃん、おそろしい子!

忠兵衛もあとで友達の八右衛門に「あれほど梅川をかわいいと思ったことはなかった」と述懐。

こじらせ&メンヘラの最強コンボで破滅への道まっしぐらです。

身請けが決まった姉女郎のかもん太夫がお別れに最後の舞を披露するシーンで、ひとり手酌で深酒する夢白梅川。このすさみっぷりがまたリアル。

千鳥足で、かもん太夫に連れ舞いをしつこくねだるのも、かもん太夫と二人で座敷に残って忠兵衛を思いきるように意見されて泣き崩れる時も、ほんとコワイ。

忠兵衛しか見えていなくて、ふわふわうかうかとしている立ち居振る舞いや、「○○なんですネ」というような語尾の「ネ」までが、浮世離れした女を感じさせるのです。




感想:心中・恋の大和路:涙を流して封印を切る破滅への道

田舎から出てきて飛脚問屋の主人に収まったものの、どこか居場所がない忠兵衛。和希そらさんの忠兵衛は軟派に明るく振る舞っていても、どこか寂し気な影があります。

それでいてプライドは高い。

心うちとけられるのは遊び仲間の八右衛門と、遊女梅川だけです。梅川恋しさから、廓に通いつめ家業がおそろかになっていくと、ますます店にづらくなり梅川の元へ。

いけないと頭ではわかっていながら店の金を使い、堂島に届ける金を持って外にでれば「石ころや、でも、金や」と迷いに迷って、ついには廓に向かってしまう。

しかもそこで立ち聞きしてしまう八右衛門の悪口。

そっと立ち去ることもできたのに、ここでプライドの高さが爆発してしまう。ここまで八右衛門にあけすけにされたら、商売の信用も失ってしまった忠兵衛。

破滅の道へまっしぐらです。

梅川は、舟女郎(ふなじょろう)になって(売春をして)もかまわないから無理に金を使うなと諭しますが、もはや忠兵衛の耳には入りません。

一瞬のためらいを見せるものの、1つめの封を切ったら止まりません。この世は金次第と皮肉にうたいながら、罪の大きさに涙を流して次々と封印を切って小判をばらまいていく。

どんどん壊れていく忠兵衛。おろかしいと思いながら、和希そらさんの弱い忠兵衛が哀れでたまりません。

舞台上は小判の雨に狂乱。絶望する八右衛門、オロオロするばかりの梅川。観客も固唾をのんで小判の雨を眺めています。

狂気と哀しみのなか、幕が下ります。




感想:心中・恋の大和路:廓から大和への恋の逃避行の切なさ

幕があがるとうってかわって静まり返り、忠兵衛も落ち着いて梅川の身請けの清算します。

この金は養子縁組の持参金なので大丈夫、養母の気が変わらないうちに梅川を会わせるので、すぐに連れ帰るととウソをつきます。

遊女仲間にも祝儀を渡し、突然のことに信じられない幸せに包まれている梅川を見て、忠兵衛は心を痛めます。

この時の夢白ちゃんの、ぽーっとした浮足立った様子がまた見事。

かもん太夫が廓の大門出るのを見送ろうとする一同について、ふわふわと座敷を出ようとする梅川のわかってなさぶりがうまい。忠兵衛は真実を告げます。切ない。

梅川は驚き悲しむものの、女冥利に尽きると心中する気まんまんです。忠兵衛は生きるために逃げるのだと説得して、早く廓を出るようにせかします。

ちょうど同じタイミングで大門を出るかもん太夫をうらやましそうに見送る梅川。このあたり夢白ちゃんは青白く発光しているような輝きを見せ、目が離せません。

梅川には遊女なりの夢があったのに、自分が犯罪に巻き込んでダメにしてしまったことを、忠兵衛は痛感して何も言えません。和希そらさんの繊細な演技にうなります。

忠兵衛のふるさと新ノ口村への逃避行が、二人にとって初めての廓の外。路銀もあるので初めは物見遊山気分で旅をしていきますが、しだいに困窮し、どんどん追い詰められていきます。

忠兵衛の自業自得ではありますが、盲目的に忠兵衛を愛する梅川と、梅川を気遣う忠兵衛と、行き場のない道中が、見ていて本当に辛いです。




感想:心中・恋の大和路:逃避行のはて、父・孫右衛門(汝鳥伶)がすべてを持っていく

お参りをしたりお祭りを見たり、かんざしを買ったりしながらの逃避行の道中。しだいにどんどん弱っていく二人。ふるさとまであと一息というところで、追っ手の存在に気づきます。

父をいきなり訪ねるのは止めて、目立たぬように野良着に着替えようと提案する忠兵衛。お百姓のおかみさんになって、りっぱに作物を育てて見せると嬉しそうな梅川が涙を誘います。

傀儡師や飴売りになっている宿衆のみなさんも芸達者で楽しめます。

忠三郎(真那春人2役)を訪ねていく二人。忠三郎の新妻おかね(琴羽りり)の安定した立場が、梅川にはまぶしい。

物陰から見ていると、孫右衛門が目の前で転びます。思わず助けに飛び出す梅川。ここからはもう涙涙。

孫右衛門は梅川の正体に気づき、すべてを飲み込んだうえで、他人の旦那に会う理由はないと忠兵衛に会うことを拒否。

「金が要るなら相談でもあれば、先祖代々の田畑を売り払ったものを」と絞り出すように言い残すと、義理を優先して涙ながらに去っていきます。

汝鳥伶(なとりれい)さんは過去にも孫右衛門を演じていますが、毎度、出てくるだけで場の雰囲気が変わるのが分かります。出番はほんの10分足らず。強烈な印象を残します。

たまらず走り出て「おやじどの~!」と地面につっぷして嘆く忠兵衛。

すべて忠兵衛の心の弱さが招いた事態ながら、なぜか憎めないかわいい忠兵衛。

そして何より、雪山で幸せそうに眠りにつく二人の美しいこと。純愛なのか狂気なのか若気の至りなのか、なぜ死ななきゃいけなかったのかと涙が止まりません。




感想:心中・恋の大和路:凪七瑠海:八右衛門アニキの義理と人情の板挟み

忠兵衛のアニキ分の遊び仲間。凪七瑠海(なぎなるうみ)さん演じる丹波屋八右衛門は米問屋の主人。たぶん色街の遊びを教えたのも八右衛門。

89期の凪七瑠海さんは96期の和希そらさんとの年齢差を感じさせない若々しさ。

終盤に宿衆に「青二才!」と捨て台詞を吐かれるので、若いのでしょうね。洗練された上品な身のこなし、代々の米問屋のボンボンなんでしょう。

八右衛門は遊びもするけど商人の魂を大事にしていて、米問屋の仕事もきっちりとする。でもついつい忠兵衛を甘やかしてしまうんですねぇ。

忠兵衛に頼まれるといやと言えない。和希そらさんの忠兵衛の甘え方も可愛いので、気持ちはわかります。

忠兵衛が丹波屋宛に店に届いた江戸銀五十両を身請けの手付に使ってしまった時も、怒りはするが忠兵衛に頼み込まれて口裏を合わせて受け取ったと言ってしまう。

なんとか忠兵衛を救いたいと知恵を絞り、宿衆とあらそうように自分も独自に探索に出かける八右衛門です。後悔で張り裂けそうになっているのに最善を探る八右衛門の心情。

忠兵衛の妻となった梅川に敬意を払って「ご新造」とよび、炒り豆と路銀を渡して生き延びてくれ、片隅からでも便りをくれ、と励ますシーンは、客席全体がすすり泣いていました。

でも、炒り豆かー。もっとカロリーの高い食べ物はなかったのかなとも思います。

二人をとらえようとする宿衆に、二人を雪に閉じ込めてやってくれという八右衛門が切ない。幕前のでの大絶唱も心に響きました。




感想:心中・恋の大和路:かもん太夫(妃華ゆきの)と手代・与平(諏訪さき)

原作にはないアナザーストーリーが、かもん太夫と手代の与平の交流です。この二人の登場によって、色街の習わしや、金銭感覚が現代の観客にもよくわかるという仕組み。

かもん太夫を演じるのは96期の妃華ゆきの(ひめはなゆきの)さん。雪組公演『夢介千両みやげ』では、きっぷのいい芸者を演じていました。

上品できれいだけど今一つ印象が薄かったのですが、このところの活躍がめざましいです。日本舞踊がうまくて、声がきれい。匂い立つような色気と貫禄があります。

かもん太夫に憧れる手代・与平を演じたのは99期の諏訪さきさん。存在感がぐっと増してきています。期待の若手スターが演じる与平役を射止め、さらに飛躍しそうですね。

与平がなけなしの銀三十文を差し出すと、かもん太夫は感動して金を受け取り、盃を交わします。

身請けが決まっているかもん太夫は、簪(かんざし)を記念にと与平に手渡します。ゆきのちゃんのかもん太夫は、粋(すい)で拝みたくなるような美しさです。

思いがけないできごとに、喜んでテンションが上がる忠兵衛がかわいい。一方、恐縮して固まる与平。

諏訪さきさんの与平はいつも恐縮しています。忠兵衛にからかわれて恐縮、お座敷に上がっても恐縮。もう少し朴訥とした雰囲気が出ても良かったのになと思いました。




感想:心中・恋の大和路:かもん太夫にほれぼれ

かもん太夫の身請け前夜にお別れの舞のシーンではほれぼれします。ひらひらと舞う指先までしなやかに反って所作が美しい。

梅川と二人きりで座敷に残り、忠兵衛をあきらめるように説得するシーンでは、さすが姐さんの貫禄。

目の前の幸せだけでなく、ずっと先の女の幸せを考えろというかもん太夫。苦界を生きてきた人ならではの重みがあります。

一夜あけて、かもん太夫で廓の大門から出ていきます。そのために梅川忠兵衛は西門(=西方浄土を連想させる不吉な方角)から出ていくことになっています。

物陰から見送る梅川とそれを見守る忠兵衛。梅川の純粋さと忠兵衛の焦りがきわだちます。

かもん太夫を身請けした男性は、地味な町風の装いになったかもんを門の外で待っています。それを聞いてうらやましがる妹分たち。

かもん太夫は、廓の水に慣れ親しみ過ぎて外へ出るのがこわいとしみじみ言い、大門に向かって花魁道中のように八文字で歩きだします。

ふと足をとめて、振り返ってほほえむと堅気の女としてふつうに歩きだし、門を出ると駆け出していきます。

それを眺めて「姐さん、うれしそう」と、わがことのように祝福する梅川。

あのように晴れがましく廓の門を出たかったのかと思い至った忠兵衛。急がせようと梅川の方にのばした手を、戸惑いの末、引っ込めます。和希そらさんの繊細な役作りがここにも。




感想:心中・恋の大和路:さすが雪組!槌屋の女将・遣り手・遊女

今回の『心中・恋の大和路』は出演者が比較的若いので、槌屋の場面は色街の雰囲気がどのぐらい出せるのかなとも思っていました。

舞や唄の場面も多いのですが、少人数な公演なので、ひとりひとりの芸も目立ちます。

遊女・鳴渡瀬(莉奈 くるみ)が歌い、かもん太夫がひとさし舞う。遊女・千代歳(愛陽 みち)と連れ舞をする、どちらもエンタテイメントとして質が高いです。

夢白ちゃんの梅川は、手酌ですさんでいるのですが、かもん太夫に夜通し踊りたいとねだって一緒に踊ります。

これがまたなかなかどうして。夢白ちゃんが日本舞踊がうまいのにも感心しました。

廓の場面では、女将・お清(愛すみれ)の包容力も、遣手・おたつ(羽織 夕夏)の如才なさも良かったです。

あらためて雪組の丁寧な芝居に感心しました。槌屋のみなさんは良い人ばかりですね。

考えてみれば、意地悪な人が誰も出てこないんですよね。それなのにどんどん追い詰められていく不幸。切ない話です。

コロナ禍で多くの日程が休演になってしまったのが本当に惜しまれます。近いうちに再演してもらいたいですね。その時はぜひロングラン公演で。




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