2023年7月、芹香斗亜(せりかとあ)&春乃さくら(はるのさくら)新トップコンビお披露目公演の感想です。
結論から申し上げて、大変レベル高くすばらしく大満足です。元は韓国のミュージカル。
舞台装置も衣装も美しく、楽曲は宝塚歌劇団と相性のいい、フランク・ワイルドホーン氏。
若手はイケメンとイイ女祭り。すみずみまでフレッシュな力がみなぎって、いいモノを見ました。
ネタバレありで感想を。
目次
- エクスカリバー宝塚:感想『Xcalibur エクスカリバー』第一幕:芹香斗亜のキラキラ王子
- エクスカリバー宝塚:感想『Xcalibur エクスカリバー』春乃さくらは姉御肌?
- エクスカリバー宝塚:感想『Xcalibur エクスカリバー』モーガン真白悠希がすごい!
- エクスカリバー宝塚:感想『Xcalibur エクスカリバー』若翔りつマーリンとモーガンの物語
- エクスカリバー宝塚:『Xcalibur エクスカリバー』第二幕:ダークサイドに落ちたアーサー
- 感想:宝塚宙組『Xcalibur エクスカリバー』第二幕:悠真倫もカッコいい!王になるとは
- 感想:宝塚宙組『Xcalibur エクスカリバー』コーラスの宙組!楽曲とかビジュアルとか舞台装置とか
エクスカリバー宝塚:感想『Xcalibur エクスカリバー』第一幕:芹香斗亜のキラキラ王子
芹香斗亜さん(以下:キキちゃん)。長すぎる二番手時代に別れを告げ、堂々たるトップスター誕生です。
現れたのは、キラキラ王子様でしたー。若い!
もともと、ふだんのお化粧はお風呂上がりの赤ちゃんのようなキキちゃんですが、それにしても驚くほどの若々しさです。
爽やかなブルーのお衣装。外はねの金髪。華奢と思えるほどのスレンダーな体型。
少年アーサーは、父エクター(松風輝:以下まっぷー)に溺愛されています。まっぷーの父は慈愛そのもの。
アーサーもパパが大好き。
いろいろ理不尽なことはあれど、兄のように育ったランスロット(桜木みなと:以下ずんちゃん)や農民たちと共に、ぽやぽや~っと幸せに暮らしています。
この天然の甘えん坊さんな感じが、キキちゃんならではの持ち味。ですが、後の過酷な人生を思わせてせつない。
魔法使いで預言者のマーリン(若翔りつ:以下リッツ)が現れ、アーサーの出生の秘密と、王となる運命を告げます。
アーサーは、ショックを受け止めきれず、混乱。怒ってマーリンに対して出て行けと歌います。
このお歌も長い。
父エクターに諭されてエクスカリバーを引き抜くアーサー。盛り上がる人々の輪から離れて、ランスロットがアーサーが特別な人間とは気がつかなかった、と歌います。
ずんちゃんのランスロットは、とても人間臭い。庶民オーラ出してる温かい、気のいいアニキ。
エクスカリバー宝塚:感想『Xcalibur エクスカリバー』春乃さくらは姉御肌?
王となる決意を固めたアーサーの元へ、ヒロインのグィネヴィア(春乃さくら:以下さく)登場。はきはきとした美人の女戦士。カッコイイね。
さくちゃん、ワタクシといたしましては「できるOL風」というイメージがぬぐえないんですが、だんだんヒロインぽくユメユメしくなっていくのかな。
でも宙組はあんまりユメユメしい娘1はいなかったか。
今回は、頼りないアーサーを励まし引っ張る役なので、さくちゃん合ってますね。
アーサーが王になると決心し、城を建て始めますが、すぐにサクソン軍がおそってきます。いきなり試練の連続ですよ。
円卓の騎士も揃い、アーサーとグィネヴィアはあっという間に相思相愛になり、結婚。
ランスロットもグィネヴィアに恋心を抱いていますが、苦悩の末、身を引きます。このランスロットがいい人で、泣けてきます。
お揃いの金色の縫いとりがはいった長く白いお衣装、トップコンビの美しいこと。
アーサーの村をおそって返り討ちになったサクソン軍の残党が戻ってきて、アーサーを狙った毒矢で父エクターが死にます。
父を失い、自暴自棄になるアーサー。円卓の騎士たちの言うことも聞かず、孤立を高めていきます。岩場で父を慕って嘆くアーサー。
新妻の言葉も入らず、父がいないと何もできない、独りぼっちと嘆くアーサー。いや、そこは分かち合おうよと思いました。
エクスカリバー宝塚:感想『Xcalibur エクスカリバー』モーガン真白悠希がすごい!
アーサーがやさぐれたところで1幕終わり。休憩時間は客席のあちこちで「すごい」「すばらしい」という声が聞こえます。
ほんと圧巻。すばらしい。
なかでも私の心をとらえたのは、アーサーの腹違いの姉モーガン。
アーサーが生まれたことで父に棄てられ、マーリンに養育されて「地獄のような修道院」で過ごしているところから登場。
真白悠希(ましろゆうき)さん。なんと104期男役ですよ。2位入団の優等生。
お顔がキキちゃんに似ています。
モーガンのメイクをすると専科の美穂圭子さんにちょっと似ている面差しの美女です。立ち居振る舞いも貫禄たっぷり。
歌も上手くて、たまーに高音が不安定な時もあるけど、長いソロ曲を歌いこなしていました。
2023年宙組公演007『カジノ・ロワイヤル ~我が名はボンド~』で、王冠を持って出てくるかわいらしい少年役でしたねー。
2022年宙組『HiGH&LOW』新人公演ではリン役(本役:留依蒔世)に大抜擢。早く場数を踏ませようという劇団の期待が見えます。
1幕目で度肝を抜かれたので、2幕目もすごく集中して彼女を観ていました。
修道院長の有愛きい(ありあきい)ちゃん。まだ新人公演学年ですが、さすが「ありあ」という苗字だけあって、歌声がすばらしかったです。
エクスカリバー宝塚:感想『Xcalibur エクスカリバー』若翔りつマーリンとモーガンの物語
宿命の物語がもう一つ。マーリンとモーガンです。
マーリンの若翔りつは、今や宙組に欠かせない歌うま。濃いお顔の長身のリッツと、しゅっとスタイリッシュのモーガンの重唱は迫力も合ってカッコイイ。
モーガンの人生は彼女にとっては理不尽そのもの。辛い日々を癒してくれた育ての親ともいえるマーリンともう一度会いたい。
再会しさえすれば幸せな新たな人生が始まると思っていたのに、一方でマーリンはアーサーを生き延びさせ、成長したアーサーを王に導いていた!
自分は孤独に絶望のうちに生きてきたのに、アーサーは愛されて生きてきてエクスカリバーも手に入れている!
マーリンは自我が強大になりすぎたモーガンを警戒して距離を置きます。
モーガンは自分を受け入れようとしないマーリンに苛立ち、自分で黒魔術を勉強していきますが、それすいさめられて混乱していきます。
モーガン可哀そうすぎる。モーガンが一番感情移入できる人物でした。
モーガンは姉として、アーサーとも渡り合うのですが、ちゃんとお姉さんに見えましたよ。妖しさも強さも悲しみもひしひしと伝わってきます。
真白悠希さん、今回は二番手娘役として強烈な個性をはなっています。なんならヒロインを食っちゃってるかも。
いやあ、マーリン凄い子を育てたな(違
カーテンコールのあいさつも、余裕しゃくしゃくって感じでカッコよくて、お辞儀のあとはさささっと下級生の定位置に下がっていったのも、新鮮でした。
エクスカリバー宝塚:『Xcalibur エクスカリバー』第二幕:ダークサイドに落ちたアーサー
さて、自暴自棄になったアーサー王は、仲間からの信頼も急激に失っていきます。
1幕での爽やかな衣装から黒いファー付きの衣装に変わり、姉のモーガンとつるむことが多くなってきます。
王の立場にこだわり、自分の心を分かってくれるのは姉上(モーガン)だけと、ランスロットや王妃グネヴィアの心からの言葉も聞こうともしません。
半分しか血がつながらないとはいえ身内の愛に飢えてるんでしょうか。モーガンは着々とアーサーを陥れていきます。
もともとランスロットはグネヴィアを愛していて、アーサーのために身を引いていたのが、ついに二人は心通わせてしまいます。
二人は国外追放となり、アーサーはますます孤立を深めていきます。
アーサーを支えると決めたずんちゃんの抑えた演技がいいんですよね。
お兄さん設定のランスロットというのも新しい解釈ですが、ずんちゃんがキキちゃんのお兄さん役というのも初めて。
あごひげがかっこいい大人っぽい思慮深いランスロットです。これからトップスターを支える立場とも重なって心がじんわりします。
感想:宝塚宙組『Xcalibur エクスカリバー』第二幕:悠真倫もカッコいい!王になるとは
やがてサクソン軍との戦闘になります。サクソン軍の大将ウルフスタンは専科の悠真倫(ゆうまりん)さん。
歩き方からしてもう豪快で強そう。
私は花組『太王四神記』での悠真倫さんがやった優しいフッケ将軍をちょっと思い出しましたが、全然こっちのほうが悪らつそう。
共通点は息子のかたき討ちも兼ねているところですかね。
この立ち回りががかっこいいですよね。ストップモーション風で、いやぁこのお稽古も大変だったろうなと思います。
すみずみまで目をやると、妙にかわいらしい小柄な兵士がちらほら。娘役さんもはいってるんですね。奮闘しています。
若手の娘役だと立ち回りに慣れていないので、キキちゃんも勝手が違ったと話していました。
アーサー王は戦いには勝ちますが、ランスロットを失い、グネヴィアは去っていきます。
孤高の存在となったアーサーは、「王になるとは」という歌を歌いながら一人舞台上方へ。
静かにエクスカリバーを掲げて誓いをたてるというところで幕。寂しげに、しかしすがすがしさを感じます。
誰も幸せにならない、切ない話ですが、美しい。
感想:宝塚宙組『Xcalibur エクスカリバー』コーラスの宙組!楽曲とかビジュアルとか舞台装置とか
今回のお披露目公演は30名強のカンパニー。農民と兵士とか大勢ぐちも必要なので、お衣装替えが大変そう。
これは大劇場で人数増やしても見応えがありそうですが、ブリリアホールの舞台には合っている感じ。舞台の天井が高く幅が狭い。
人数の少なさを感じさせません。それともう一つはさすがコーラスの宙組。しかもみんな滑舌がいいので、歌詞がよく聞き取れます。
それにしても、難しい大曲ばかりですなー。
フランク・ワイルドホーン氏の曲なので耳なじみのいい親しみやすい曲が出てくるのかと思ってましたが、テーマ曲のモチーフが繰り返されるのではないのですね。
主要な登場人物がそれぞれの曲で心情を歌うので、お稽古の大変さは想像をこえます。
お衣装もサクソン軍もアーサー率いるキャメロンもビジュアル最高です。サクソン軍は赤を基調とした衣装に顔に赤いペイントをしていますが、これも凄味があってたいへんけっこう。
舞台装置は、基本的に岩場。これが最後にぐるっと回ってラストシーンは、なるほどこうなるのかという形になります。
若手の皆さんはモブ芝居が多いのですが、一人一人のお顔もよくわかってきらりと光る子を見つけたりして、やはり小劇場公演の良さですねー。
私は106期の波輝瑛斗(なみきえいと)君が気になりました。長身で月組の鳳月杏(ほうづきあん)さんに似ている美形。
カーテンコールでキキちゃんのすぐ後ろに立っているので、ずいぶんファンが増えたのでは?
新生宙組のこれからが楽しみです。