こんにちは。らら子です。
宝塚歌劇花組公演 『Liefie(リーフィー)-愛しい人-』 を見てきました。
ロマンチックコメディと銘打たれた、作・演出/生駒 怜子先生オリジナル宛書き作品です。コメディというほどには笑えず、思わせぶりな訳あり設定もツッコミどころ満載。
ですが、主演の聖乃あすか(せいのあすか)さんの美しさを愛でつつ、ふんわりした優しさに癒され、侑輝大弥(ゆきだいや)さんの切れ味するどいカッコよさに心震わせる、ビジュアル最強なハートウォーミング作品。
御園座『ドン・ジュアン』の裏番組のせいか若手男役が多くて、フレッシュ♪大掛かりなバウホール公演みたいでした。
目次
感想:リーフィーはてな?いっぱいの作品設定と伏線
100期の聖乃あすかさんもいつの間にか花組2番手。ポスター通り、とにかく美しい。
先に見た人からは、「はてなが一杯」「ふわふわ」という話を聞いていたので、覚悟して着席。
前半からバンバン思わせぶりにでてくる「事件」とか「言葉」とか謎めいた人物のソロ歌とか、いわくありげです。
なのに、終盤になっても伏線が回収されなかったり、回収されても「なぁんだ、そんなこと?」だったり。
同じく花組『ハンナのお花やさん』のような、実は硬派な作品なのかと思っていましたが、設定の甘さが目につきました。
だが、それがいい!なんでしょうね。別の友達は気楽に楽しめてよかったと言っていたので、好みがあるのでしょう。
ワタクシらら子は心が汚れているので「ははぁん、生駒先生はLiefie(リーフィー)というオランダ語を使いたかっただけなのね」と思ってしまいました。
聖乃あすかさんの持つ、美しさとふんわり包みこむような優しさが、生駒先生のインスピレーションを搔き立てたんでしょう。
必然的に場所はオランダ。主人公のダーンは新聞記者。
15年前の乗用車とダンプの事故の話がモチーフになっていますが、それが町では風化させてはいけない大事件だったぐらいの、小さな田舎町が舞台。
時代設定はわかりません。
原稿は鉛筆で書いていて、パソコンもないし、電話もない。
用事がある人は直接訪ねてきます。後半にリーフィーが喧嘩に巻き込まれた時は、若者が警察を呼びにどこかに行ったので、電話のない町なのかも。
感想:リーフィー鏡星珠たち若手の新聞記者ズ
新人新聞記者トーマスが、ハミ出し者ばかりの部署に配属されるところから話が始まります。
トーマスの目を通して、ダーンの人となりや想いが浮き彫りになっていきます。
ダーンはほのぼのふわふわ優しい美青年だけど、この街の人たちの声を聴き、小さなネタを集めることにかけては右に出るものはいない。
しかも若手の頃から新聞広告の枠を買い取り、連載をしている変わり種。
新聞購読率が下がっている現代、若いお客さんに通じるんですかね〜とふと思う。
一面トップを飾りたいという張り切るトーマスに、ダーンたち先輩がまずは町ネタを集めることが大事だといい、「ほのぼのやろうぜー」というナンバーが繰り広げられます。
いかにも古き良き時代のミュージカルを思い出させるメロディーと振り付け。記者がダーンも含めて6人ぐらい?
新人公演メンバーばかりの若手男役ばかりなので、聖乃あすかさんはさすがに上級生の貫禄があります。
ところで、ほとんど犯罪も起こらなそうな小さい町なのに新聞記者がぞろぞろいて、しかも男性のみ。女性はマイラ社長(美風舞良組長)だけ。
きっとドン・ジュアンで娘役が不足なんでしょう。
ほのぼのしている記者たちの中で、100期の泉まいらさん演じる敏腕記者ジェームズは先輩格。15年前の事件についても現実から逃げずにしっかり見つめろ!と、ひとり尖っています。
独白でもいいから、過去にあった具体的なできごとや葛藤があっての今、というのがわかればよかったんですが、なんとなく空回り気味で使われ方がもったいなかったと思います。
感想:ミラ(七彩はづき)健闘
ダーンは幼なじみのミラ(七彩はづき)のことをずっと好きで、何かと優しく気にかけています。実は相思相愛なのだが、二人とも相手の負担になることを恐れていて一歩踏み出せない。
ミラは15年前の自動車事故の唯一の生存者で両親を失ない、喫茶店店主である祖父ヨハンは、ミラを過保護に育て、ゆっくり大人になってほしい願っている。
幼なじみのアンナ(真澄ゆかり106期)は姉御肌で、子どもの頃から今に至るまでミラを守ると決めている。
ミラを大事にするあまり、時にダーンも排除しようとする動きを見せる。
事故は15年前で当時ミラたちは11歳。ということは今は26歳なわけで、それをいつまでも子ども扱いはよくないでしょう、おじいちゃん達。
みんながお互いのことを知っていて、ふだんは事件がなかったかのように振る舞っているけど……って田舎町あるあるなんでしょうか。
いつまでも成熟しないミラは、悲劇のヒロインとして特別扱いされてきた境遇に引け目を感じている、らしい。笑顔を作ろうとすると、無意識のうちに変な風に顔をゆがめてしまう。
じっさい、あやしい男が店を訪ねてきていわくありげなことを言って帰ったりする(この人の正体は結局よくわかりませんでした)
七彩はづきさんは107期。雪組娘役エースの白綺華(しらきはな)ちゃんと同期ですね。
歌もダンスも上手いけどまだまだ未知数。今回のような地味で清楚なヒロインにはピッタリですが、これからどんどん華やかにきれいになる予感があります。
感想:リーフィー侑輝大弥(ゆきだいや)レオはカッコよすぎるが惜しい使われ方
ところで舞台セットはシンプルな木の椅子をたくさん組み合わせたもの。
編集部の椅子にも喫茶店の椅子にも、ミラの想像の中の椅子取りゲームにも使われる。居場所を暗示しているとのこと。
この椅子は収納性にも優れていて、可動式の舞台装置に収納場所が空けてあって、出演者が自分で出し入れもする。折り畳み机も出てくるんですよ。
アーチ型に高く積み上がった椅子は背景の構造物にもなっていて、楽しい(#^^#)
お衣装も作品のテーマカラーのオレンジ色をベースにして、皆かわいくて、ふわふわした人たちが歌ったり踊ったりしたあとに、積み上がった椅子の後ろから影のある青年レオ(侑輝大弥)登場。
隣の席の全身オレンジ色の女性が思わず「カッコいい♡」と呟いてしまったほど。
他の登場人物とは一線を画した鋭い雰囲気。ツーブロックがよくお似合いです。
シャイでぶっきらぼうなレオは、幼い頃に両親に死に別れ孤独のうちに育っている。
このため、悲劇のヒロインのミラをやっかんで、わざわざ嫌なことを言いに来たり、止めに入ったリーフィーを殴ったりして自己嫌悪に陥ったり。
やっちまったあと、自分を責める姿もカッコいいわ〜♡
でも、和解したあとから理由を聞かれて「寂しかったから」って。
てっきり15年前の事故で亡くなったダンプ運転手の遺児とかで、恨みがあったとかそういう設定かと思ってた。
感想:リーフィー子ども(ヤン)役の初音夢(はつねゆめ)が持っていく
今回、目をひいたのは初音夢(はつねゆめ)さん演じるヤンという少年。設定では11歳。
身長159センチ。105期生。お顔立ちもくっきりと美形。とにかくガキンチョらしくがなり、よく跳ね、走り、毬のように動く。
娘役として出来上がってくる時期だろうに、ここまで吹っ切れたわんぱくぶりを発揮してい
るのはお見事。
ヤンが出てくると舞台が明るくなるし、何かやってくれるんじゃないかという客席の期待が高まる。
役柄は新しく開店する本屋の息子。幼いころに両親が別れ、この町に夫を残して母子で暮らしていたが戻ってきた。
そのせいか、天真爛漫というよりは、大人の気持ちを測るようなませたところがある。
あとから、敏腕記者ジェームス(泉まいら)の息子ということが分かってジェームスの同僚一同びっくり!
ということなんだけど、こんなに小さな町で町ネタを集める新聞記者たちが誰も気づかないなんてこと、ありますかねぇ、という密かなツッコミ。
夫婦の葛藤も復縁も、思わせぶりな伏線はありましたが、何も明かされないのでドラマはありませんでした。惜しいなあ。
初音夢さんとしては、フィナーレナンバーではゾクゾクっとする色気のあるカッコいいダンスを見せてくれました。
感想:リーフィー一樹千尋・峰果とわ・美風舞良のベテラン勢
若手中心の舞台に奥行きとふくらみを加えるベテラン勢をご紹介。
今回、専科からの出演はミラを溺愛する祖父役の一樹千尋(いつきちひろ)さん。孫がふびんで事故をなかったことにするのが良いと思っている。
ゆったりした一樹千尋さんの持ち味が、この喫茶店にくればだれもがホッとできる居場所だということを物語っています。町のみんなが楽しみにしているクイーンズデイでは、鼓笛隊のメンバーとしても出演。町の人気者であることも伝わってきます。
若手中心の舞台ではやはり専科の力は偉大ですね。
98期の峰果とわさんはしぶい大工の親方。冒頭のシーンで、走り回る少年ヤンにぶつかられて道具箱をひっくり返した時も、不器用な生き方をする青年レオにも優しく話しかけます。
峰果さんはしばらく休演していたので、久しぶりにお顔が見られてよかったです。ダンスもキレキレでほっとしました。
組長の美風舞良さんは新聞社のマイラ社長でお笑い担当。秘書のアンジュ(翼杏寿)とともに、清掃人に変装してダーンの悩みを聞いたりもします。
今回は、舞台装置の転換に時間がかかるそうで(椅子を積み上げているから?)、いったん緞帳が下りた後フィナーレナンバーが始まるまで、幕前で組長が場をつなぐという演出。
日本青年館は緞帳が富士山の柄なので、毎公演富士山にまつわる小ネタを披露することになっているそう。芸達者ぶりをみせてくれました。