【文楽】「仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら)」かんたんあらすじと解説:見どころ

『仮名手本忠臣蔵』は、江戸時代の元禄年間(1700年前後)に起きたいわゆる赤穂事件(あこうじけん)、つまり赤穂浪士(あこうろうし)の討ち入り事件を題材にしています。
十一段にわたる壮大なストーリーで、時代物あり、世話物あり、恋愛あり、欲あり、登場人物もキャラが立っていて飽きさせません。
でも、とにかく長いので、今では有名な部分だけ上演したり、何回かに分けて上演したりしています。

2019年には国立文楽劇場35周年記念として春・夏・秋と3回に分けて上演されました。九段目の「山科閑居の段(やましなかんきょのだん)」は、大阪文化祭賞を受賞しました。

祝!大阪文化祭賞受賞!「11月文楽公演」の成果:仮名手本忠臣蔵 九段目 山科閑居の段 出演者ご一同





目次

仮名手本忠臣蔵と赤穂事件(あこうじけん)のまとめ

仮名手本忠臣蔵は、浄瑠璃三大名作のひとつで、江戸期を通じて最多の上演記録を持つ人気演目です。

赤穂事件とは、今の兵庫県西部にあった赤穂藩(あこうはん)藩主の浅野内匠頭(あさのたくみのかみ)が、吉良上野介(きらこうずけのすけ)のパワハラに耐え兼ねて、江戸城内で切りかかった刃傷事件(にんじょうじけん)が発端。

浅野内匠頭は抱きとめられて失敗、その日のうちに切腹、お家はおとり潰し。浪人となった元・赤穂藩士たちは家老の大石内蔵助をリーダーとして密かに準備を進め、吉良上野介邸に討ち入り、みごと主君の仇を取ったという事件です。

江戸幕府の怒りに触れないように、舞台を鎌倉時代に変えてフィクションにしたててあります。浅野内匠頭→塩谷判官(えんやはんがん)、吉良上野介→高師直(こうのもろのう)、大石内蔵助→大星由良之助(おおぼしゆらのすけ)と名前を変えてあります。

では、各段のあらすじをご覧ください。



大序(一段目)鶴が岡兜改めの段(つるがおかかぶとあらためのだん)

足利将軍の弟・直義(ただよし)が使者として幕府を訪ねてくることになります。饗応役(きょうおうやく:接待役)を勤めるのは大大名の高師直(こうの もろのう)。

その部下の接待役として、大名の塩谷判官(えんや はんがん)と桃井若狭助(もものい わかさのすけ)がつきます。

一方、戦場から持ち帰った四十七の兜の中かから、新田義貞(にった よしさだ)の兜を見つけ出すために、元女官で今は塩谷判官の妻である顔世御前(かおよごぜん)が呼び出されています。

大序(一段目)恋歌の段(こいかのだん)

高師直は美しい顔世御前に一目ぼれ。

顔世御前にラブレターを渡していい寄るところへ、桃井若狭助がやってきて助け船を出します。恥をかかされた高師直は若狭助を桃井を逆恨みし、なにかと若狭助にパワハラを行なうようになります。




二段目 桃井館力弥使者の段(もものいやかたりきやししゃのだん)

塩谷家の家老・大星由良助(おおぼしゆらのすけ)の息子・力弥(りきや)と、桃井家の家老・加古川本蔵(かこがわ ほんぞう)の娘・小浪(こなみ)はフィアンセ同士。

力弥が塩谷判官(えんやはんがん)からの口上(こうじょう)を伝えに桃井家を来訪。母の代わりに応対に出る小浪は力弥のイイ男ぶりに見とれるばかり。

二段目 桃井館本蔵松切の段(もものいやかたほんぞうまつきりのだん)

ところで、師直から逆恨みでひどいパワハラをうけている若狭助。明日、城で師直を切るつもりなので邪魔をするなと加古川本蔵に打ち明けます。

そんなことになったら若狭助は切腹、お家は断絶。しかし反対しても意味がないことを知っている本蔵は、庭の松の枝を切り落とし、若狭助に無念を晴らせと同調します。

ところが本蔵は先回りして高師直にワイロを贈ります。

※「桃井館力弥使者の段」は、「桃井館力弥上使の段」となってるものもあります。



三段目 下馬先進物の段(げばさきしんもつのだん)・腰元おかる文使いの段(こしもとおかるふみつかいのだん)

※ここ三段目では、物語のカギが急展開。

師直が若狭之助をいじめないように加古川本蔵は師直にワイロを贈ります。

ここで、恋愛パート担当の勘平とお軽登場。勘平は塩冶家足軽の、お軽は顔世御前の腰元で職場恋愛。お軽は顔世御前が師直を拒否する手紙を届けにお城へ。

お軽はゆっくり行けと言われたのに、勘平に会いたくてさっさとお使いを済ませ、デートに抜け出してしまいます(その間に事件発生!)




三段目 殿中刃傷の段(でんちゅうにんじょうのだん)・裏門の段(うらもんのだん)

殿中松の廊下。ワイロのことなど知らない若狭之助は師直を切ろうとしているが、ワイロが効いている師直はぺこぺことご機嫌を取る。

しかもお軽が早く手紙を届けたせいで、顔世御前に拒否された手紙を仕事の前に読んでしまった師直。腹いせのために塩谷判官をいじめのターゲットに変更。

師直に「鮒侍(ふなざむらい)!」と侮辱され、しつこくいじめられた塩谷判官は、松の廊下で師直に切りかかるが、加古川本蔵に抱きとめられて失敗。お城中大騒ぎに。

騒ぎを聞きつけて勘平は裏門に戻ったが、塩谷判官は罪人の乗る網乗物で屋敷へ戻された後。申し訳なさに、勘平とお軽はお軽の故郷へ逃げます。



四段目 花籠の段(はなかごのだん)・塩谷判官切腹の段(えんやはんがんせっぷくのだん)・城明渡しの段(しろあけわたしのだん)

今日は、判官の最終処分の言い渡しに上使が来る日。顔世御前は花を生けて塩谷判官の心をなぐさめようとする。

塩谷判官は切腹、藩はおとりつぶし(=藩士はリストラ)と決定。切腹の場で由良助を待つ塩谷判官。

刀を腹に突き立てた時、国許からやっと由良助が駆け付けます。塩谷判官は「無念」と伝えて絶命。

城の明け渡し。形見の腹切刀(はらきぎがたな)を見つめ、由良助はかたき討ちの決意をする。

※四段目「塩谷判官切腹の場」は古くから「通さん場」と呼ばれ、客席への出入りが禁じられてきました。今も、「この段上演中の出入りはご遠慮たまわりますよう、お願い申し上げます。」と注意書きがあります。



五段目 山崎街道出合いの段(やまざきかいどうであいのだん)・

お軽とのデートにうつつをぬかし、お家の大事に持ち場を離れていた勘平。今はお軽の実家で猟師として暮らしています。

主君に顔向けできず、仇討ち参加に必要なお金も用意できず、悶々と暮らすうち、勘平は山でたまたま元同僚と出会い、討ち入りに参加するには金が必要と知ります。

五段目 二つ玉の段(ふたつだまのだん)

お軽は父・与市兵衛(よいちべえ)と相談して遊女になる決意をします。与市兵衛は代金百両の半分を受け取って帰る途中に、山賊・斧定九郎(おのさだくろう)に殺され金を奪われます。

一方、夜に山へ猟にでかけた勘平、鉄砲でイノシシをしとめた!しかし、近づいてみるとそれは人間!あわてて助け起こすと、ふところに五十両!お金が欲しかった勘平、思わずそのお金を自分の物にし、死体を隠すと、金を同志に渡してしまいます。




六段目 身売りの段(みうりのだん)・早野勘平切腹の段(はやのかんぺいせっぷくのだん)」

勘平が帰宅するとお軽が連れていかれるところ。人買いは与市兵衛に前金は払ったという。
勘平はどうも山で撃った人間が義父らしいと気づくが、そのままお軽を送り出す。

そこへお軽の父親の遺体が運ばれてきて、混乱しているところへ原郷右衛門(はら ごうえもん)と千崎 弥五郎(せんざきやごろう)もやってきます。50両持っていた状況から、犯人は勘平となります。

勘平も早合点して切腹。しかし、与市兵衛の遺体を確かめると致命傷は鉄砲ではなく刀によるもの。勘平の疑いは晴れ、連判状に名を乗せることが許されました。



七段目 祇園一力茶屋の段(ぎおんいちりきぢゃやのだん)

世間の目をくらますため毎晩お茶屋でどんちゃん騒ぎの大星由良之助。そのお茶屋には遊女になったお軽がいます。

お軽は大星由良之助が読んでいる手紙から仇討の進行状況を盗み読もうとします。大星由良之助もそのことに気づき、口封じのために殺そうとお軽を身請けするとだます。

※この一力茶屋の場面は、衣装も舞台も美しく、はなやかな雰囲気の中、二人のかけ引きがスリリングです。由良助の酔っ払いぶりが見どころ。

仇討に参加したいお軽の兄・寺岡平右衛門(てらおか へいえもん)も登場。由良助にはとりあってもらえません。平右衛門に父と勘平の死を知らされ嘆くお軽。

平右衛門は口封じのためにお軽に切りかかります。すべてを悟った由良助。山賊・斧定九郎のの父親のスパイ現場も押さえ、お軽に仇をうたせ、兄と勘平も討ち入りの同志と認めます。



八段目 道行き旅路の嫁入(みちゆきたびじのよめいりのだん)

本蔵の後妻・戸無瀬(となせ)と娘・小浪は、フィアンセ力弥に嫁入りしたいと望み、京都山科の大星家を目指して旅をします。

※小浪とは姉妹のように仲良しです。二人で大星家に向かう途中の不安ながらも浮かれた気分がほほえましいです。

九段目 雪転がしの段(ゆきころがしのだん)

由良助が祇園から取り巻きを連れて雪玉を転がしながら、にぎやかに山科の家まで朝帰りしてきます。
※だいたい5kmほどの距離。google マップによると1時間強。雪の朝なら凍えると思います。

取り巻き連中が帰るとそれまでの浮かれポンチぶりからガラッと雰囲気が変わる由良助。
力弥に向かい、雪玉は雪のひとつひとつは非力だが集まれば強いのだと浪士の結束をにおわせます。



九段目 山科閑居の段(やましなかんきょのだん)

加古川本蔵(かこがわほんぞう)の妻・戸無瀬(となせ)と小浪(こなみ)が訪ねてきます。

大星家では本蔵のせいで判官様は師直を討ち漏らした。本蔵はワイロを贈る「へつらい者」だ。嫁入りしたければ本蔵の首を持ってこいと拒否。

※ここの戸無瀬(となせ)と顔世御前は二人とも老け女形で同じ首です。

実は、大星家は力弥が討ち入りにいけば、小浪が未亡人になるので拒否していたのでした。
力弥と結婚できないならば死ぬと覚悟を決める娘と継母。

外でその話を聞いていた本蔵は力弥と争い、わざと力弥に討たれます。
判官を止めたのは判断を誤った、小浪を嫁入りさせてくれと望んで本蔵は息絶えます。

※忠義ものの本蔵さん、罪もないのに死んでいきます(涙)



十段目 天河屋の段(あまがわやのだん)

和泉の国堺の商人・天河屋義平(あまかわやぎへい)は、塩谷(えんや)家に恩があります。妻や使用人も遠ざけ、ひそかに武具を用意しています。

由良助は、義平の真意を試すために捕り手に変装して天河屋を捜索します。
疑いは晴れて由良助は義平に謝ります。そして「天」と「河」を討ち入りの際の合言葉にすることを約束します。



十一段目 花水橋引き揚げの段(はなみずばしひきあげのだん)・光明寺焼香の段(こうみょうじしょうこうのだん)

目的を達した浪士たちは、隊列を整えて晴れ晴れと塩谷判官(えんやはんがん)の菩提寺・光明寺を目指します。

同じ立場だったかもしれない桃井若狭助(もものいわかさのすけ)は、馬でおいつき、一行を見送ります。

光明寺で墓前に師直(もろのお)の首を供える。師直を見つけ出した矢間十太郎(やざまじゅうたろう)がまず一番に焼香。勘平の分も義兄・平右衛門が焼香します。

※忠臣蔵を題材にしたドラマは討ち入りのシーンがクライマックスですが、文楽は討ち入りそのものは出てきません。四十七士だけで舞台上は大変なことになっちゃいますからね。

十一段目は、「花水橋引揚の段」「光明寺焼香の段」いずれかが上演されることが多いそうです。

より詳しい情報は、文化デジタルライブラリー「仮名手本忠臣蔵」をどうぞ。https://www2.ntj.jac.go.jp/dglib/contents/learn/edc21/index.html



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