【文楽】仮名手本忠臣蔵わかりやすくあらすじ見どころかんたん解説:(かなでほんちゅうしんぐら)

『仮名手本忠臣蔵』は、江戸時代の元禄年間(1700年前後)に起きたいわゆる赤穂事件(あこうじけん)、つまり赤穂浪士(あこうろうし)の討ち入り事件を題材にしています。

十一段にわたる壮大なストーリーで、時代物あり、世話物あり、恋愛あり、欲あり、登場人物もキャラが立っていて飽きさせません。

でも、とにかく長いので、今では有名な部分だけ上演したり、何回かに分けて上演したりしています。

2019年には国立文楽劇場35周年記念として春・夏・秋と3回に分けて上演されました。この時の九段目の「山科閑居の段(やましなかんきょのだん)」は、大阪文化祭賞を受賞しました。





目次

仮名手本忠臣蔵と赤穂事件(あこうじけん)のまとめ

仮名手本忠臣蔵は、浄瑠璃三大名作のひとつで、江戸期を通じて最多の上演記録を持つ人気演目です。

赤穂事件とは赤穂藩(あこうはん)藩主の浅野内匠頭(あさのたくみのかみ)が、吉良上野介(きらこうずけのすけ)のパワハラに逆切れして、江戸城内の松の廊下で吉良上野介を切りつけた事件がきっかけ。

浅野内匠頭は抱きとめられて失敗、その日のうちに切腹、お家はおとり潰しとなりました。吉良上野介はおとがめなし。

元・赤穂藩士たちは浪人となります。家老の大石内蔵助(おおいし くらのすけ)をリーダーとして密かに復讐の準備を進めます。

12月の雪の日、元・赤穂藩士たち吉良上野介邸に討ち入り、みごと主君の仇を取ったという事件です。

江戸幕府の怒りに触れないように、舞台を鎌倉時代に変えてフィクションにしたててあります。人物名も時代をずらしたりもじったりして名前を変えてあります。

浅野内匠頭→塩谷判官(えんやはんがん)

吉良上野介→高師直(こうのもろのう)

大石内蔵助→大星由良之助(おおぼしゆらのすけ)

では、各段のあらすじをご覧ください。



大序(一段目)鶴が岡兜改めの段(つるがおかかぶとあらためのだん)

足利将軍の弟・直義(ただよし)が使者として幕府を訪ねてくることになります。饗応役(きょうおうやく:接待役)を勤めるのは大大名の高師直(こうの もろのう)。

その部下の接待役として、大名の塩谷判官(えんや はんがん)と桃井若狭助(もものい わかさのすけ)がつきます。

一方、塩谷判官の妻である顔世御前(かおよごぜん)は、才色兼備。かつては新田義貞(にった よしさだ)の元女官です。

今は、戦場から持ち帰った四十七の兜の中かから、新田義貞の兜を見つけ出すためにお城に呼び出されています。



大序(一段目)恋歌の段(こいかのだん)

高師直は美しい顔世御前に一目ぼれ。

顔世御前が和歌の名手であると聞きつけ猛アタック。

和歌を教えてほしいといいつつ、恋の歌を渡していい寄ります。

困っているところへ、桃井若狭助がやってきて助け船を出します。

高師直は恥をかかされた桃井若狭助を逆恨みしするようになります。

それ以来、なにかと若狭助にパワハラを行なうようになります。


二段目 桃井館力弥使者の段(もものいやかたりきやししゃのだん)

塩谷家の家老・大星由良助(おおぼしゆらのすけ)と桃井家の家老・加古川本蔵(かこがわ ほんぞう)は実は親しい。

大星家の息子・力弥(りきや)との加古川家の娘・小浪(こなみ)は親の決めたフィアンセ同士になっています。

ある日、力弥が塩谷判官(えんやはんがん)からの口上(こうじょう)を伝えに桃井家を来訪します。

母の代わりに応対に出る小浪は力弥のイイ男ぶりに見とれるばかりです。恋する二人はやがて引き離される運命に。

※「桃井館力弥使者の段」は、「桃井館力弥上使の段」となってるものもあります。



二段目 桃井館本蔵松切の段(もものいやかたほんぞうまつきりのだん)

若狭助は、高師直からのパワハラでついにぶち切れます。

家老の加古川本蔵(かこがわほんぞう)を呼び出し、明日、城で師直を切るつもりだと打ち明けます。

そんなことになったら若狭助は切腹、お家は断絶。

しかし若狭助はとにかくカッカときているので、加古川本蔵は反対しません。

庭の松の枝を切り落として差し出し、このように高師直を切れ、明日に備えて今日は早く寝るようにとすすめます。

加古川本蔵は師直にワイロを贈りることを決断。馬を用意させ、ただちに反物と金を用意するために走り去っていきます。



三段目 下馬先進物の段(げばさきしんもつのだん)

※ここ三段目では、物語のカギが急展開。

お城の入口。師直と家来が登城してくると、待ち伏せしていた加古川本蔵が面会したいとやってきます。

師直は本蔵に特別に会うことにします。本蔵は未熟な若狭助がなんとかお役目をつとめられるのも師直の指導のおかげと礼をいいます。

本蔵は師直の家来に、お礼の品を取り次いでほしいと頼みますが、家来は師直の力をかさにきていばりちらして取り合いません。

本蔵は師直の家来にも金を渡し、師直にワイロを贈ることに成功。師直はあまりに高額なワイロにお口あんぐり。

ワイロの効き目はもちろんばっちりで、師直は若狭助と本蔵をほめそやします。

師直は(ワイロをもらった自分を確かめさせるために)本蔵に城へ同行するように誘います。

塩谷判官は、そんなこととは知らずいつも通り登城してきました。塩谷判官は、門番から若狭助も師直もすでにお城に入っていると聞いて、急いでお城に入っていきます。



三段目 腰元おかる文使いの段(こしもとおかるふみつかいのだん)

忠臣蔵のサイドストーリーはいくつかありますが、ここで、恋愛パート担当の勘平とお軽が登場します。

勘平は塩冶家足軽、お軽は顔世御前の腰元です。ふたりは禁じられた職場恋愛なのでおおっぴらには会えません。

今日は、勘平は塩谷判官のお供でお城へ。

お軽は顔世御前が師直を拒否する和歌を届けにお城へ。

恋する二人にとってめったにないチャンスです。

お軽は顔世御前はゆっくり行けと言われていました。出勤前に師直が自分を拒絶する和歌を読んだら、夫の仕事に差しさわりが出る可能性があります。

しかし、お軽は勘平に会いたくてさっさとお城に行ってお使いを済ませてしまいます。

そのまま二人はデートのために抜け出し、その間に事件が発生することになります。




三段目 殿中刃傷の段(でんちゅうにんじょうのだん)・裏門の段(うらもんのだん)

殿中松の廊下。桃井若狭助はワイロのことなど知らないので、予定通り師直を切ろうとしています。

師直はワイロが効いているので、若狭助に今までのパワハラをあやまり、若狭助をおだて、ぺこぺことご機嫌を取ります。

桃井家家老の加古川本蔵は物かげからその様子を確認します。

師直はワイロのためとは言いながら、若狭助に頭を下げたことで不機嫌になっています。

しかもお軽が早く手紙を届けたせいで、顔世御前に拒否された手紙を仕事の前に読んでしまった師直。

腹いせのために塩谷判官をいじめのターゲットに変更します。

登城が遅い、家で妻といちゃついているからだ、と師直はさんざん嫌味を言います。塩谷判官を視野の狭い鮒侍(ふなざむらい)と侮辱します。

しつこくいじめられた塩谷判官は、ついに切れ、松の廊下で師直に切りかかります。しかし加古川本蔵に抱きとめられて失敗。

お城中大騒ぎに。

三段目 裏門の段(うらもんのだん)

持ち場を離れていた勘平とお軽は、騒ぎを聞きつけて裏門に戻ってきます。

しかし、塩谷判官は罪人の乗る網乗物(あみのりもの)に載せられて屋敷へ戻された後でした。

主人の一大事に持ち場を離れていた!しかも理由は逢引!

勘平とお軽はどの面下げて戻ることができましょうか。勘平とお軽は申し訳なさに、お軽の故郷へと逃げていきます。



四段目 花籠の段(はなかごのだん)

※四段目「塩谷判官切腹の場」は古くから「通さん場」と呼ばれ、客席への出入りが禁じられてきました。

今も、「この段上演中の出入りはご遠慮たまわりますよう、お願い申し上げます。」と注意書きがあります。

舞台上では大広間。襖には鷹の羽の家紋があります。

判官の最終処分の言い渡しに上使が来る日となりました。塩谷判官の妻、顔世御前は、花を生けて塩谷判官の心をなぐさめようとしています。

四段目 塩谷判官切腹の段(えんやはんがんせっぷくのだん)・城明渡しの段(しろあけわたしのだん)

上使は、石堂右馬丞(いしどううまのじょう)と薬師寺次郎左衛門(やくしじじろうざえもん)です。

石堂右馬丞は塩谷判官に同情的です。薬師寺次郎左衛門は、高師直 (こうのもろのう)と仲が良いので、何かと無礼な言動をします。

塩谷判官は切腹、藩はおとりつぶしという厳しい処分でした。領地は没収され、藩士は行き場を失います。

塩谷判官はすでに覚悟はできていて、切腹の準備はととのっていました。

しかし塩谷判官は国家老の大星由良助を待っています。何度も息子の力弥に「由良助はまだか」と尋ねます。

刀を腹に突き立てた時、国許からやっと由良助が駆け付けます。ここで有名なセリフ「遅かりし由良之助」と。

塩谷判官は「無念」と伝えて自ら頸動脈を切って絶命。

塩谷判官の遺骸がかごで運び出されると、家来一同は名残惜しそうに室内を見まわして去っていきます。

続く城の明け渡しの段。由良助が門の外に出た頃には、夜が明けていました。由良助は、手に持った提灯から家紋を切り取りって懐紙に挟みます。

由良助は形見の腹切刀(はらきぎがたな)を見つめ、かたき討ちの決意をして、立ち去っていきます。



五段目 山崎街道出合いの段(やまざきかいどうであいのだん)

お軽とのデートにうつつをぬかし、お家の大事に持ち場を離れていた勘平。

今はお軽の実家で猟師として暮らしています。

主君に顔向けできず、仇討ち参加に必要なお金も用意できず、悶々と暮らす勘平。

ある時、勘平は山でたまたま元同僚と出会い、討ち入りに参加するには金が必要と知ります。





五段目 二つ玉の段(ふたつだまのだん)

お軽は父・与市兵衛(よいちべえ)と相談して遊女になる決意をします。

与市兵衛は代金百両の半分を受け取って帰る途中に、山賊・斧定九郎(おのさだくろう)に殺され金を奪われます。

一方、夜に山へ猟にでかけた勘平、鉄砲でイノシシをしとめた!

しかし、近づいてみるとそれは人間!あわてて助け起こすと、ふところに五十両!

お金が欲しかった勘平、思わずそのお金を自分の物にし、死体を隠すと、金を同志に渡してしまいます。




六段目 身売りの段(みうりのだん)・早野勘平切腹の段(はやのかんぺいせっぷくのだん)」

勘平が帰宅するとお軽が連れていかれるところ。人買いは与市兵衛に前金は払ったという。

勘平はどうも山で撃った人間が義父らしいと気づくが、そのままお軽を送り出す。

そこへお軽の父親の遺体が運ばれてきて、混乱しているところへ原郷右衛門(はら ごうえもん)と千崎 弥五郎(せんざきやごろう)もやってきます。

五十両を持っていた状況から、犯人は勘平となります。

勘平も早合点して切腹。

しかし、与市兵衛の遺体を確かめると致命傷は鉄砲ではなく刀によるもの。勘平の疑いは晴れ、連判状に名を乗せることが許されました。



七段目 祇園一力茶屋の段(ぎおんいちりきぢゃやのだん)

世間の目をくらますため毎晩お茶屋でどんちゃん騒ぎの大星由良之助。

そのお茶屋には遊女になったお軽がいます。

お軽は大星由良之助が読んでいる手紙から仇討の進行状況を盗み読もうとします。

大星由良之助もそのことに気づき、口封じのために殺そうとお軽を身請けするとだます。

※この一力茶屋の場面は、衣装も舞台も美しく、はなやかな雰囲気の中、二人のかけ引きがスリリングです。由良助の酔っ払いぶりが見どころ。

仇討に参加したいお軽の兄・寺岡平右衛門(てらおか へいえもん)も登場。由良助にはとりあってもらえません。

平右衛門に父と勘平の死を知らされ嘆くお軽。

平右衛門は口封じのためにお軽に切りかかります。すべてを悟った由良助。

山賊・斧定九郎のの父親のスパイ現場も押さえ、お軽に仇をうたせ、兄と勘平も討ち入りの同志と認めます。



八段目 道行き旅路の嫁入(みちゆきたびじのよめいりのだん)

打って変わってあかるい場面になります。背景には大きく描かれた富士山。

可愛らしい振袖姿の小浪(こなみ)と、おちついた身なりの若々しい本蔵の妻・戸無瀬(となせ)の舞踊の場面です。

本蔵の妻・戸無瀬は後妻です。本蔵の娘・小浪とは血のつながりはありません。

しかし戸無瀬と小浪とは姉妹のように仲良しです。

小浪は、フィアンセである力弥に嫁入りしたいと望み、二人で京都山科の大星家を目指して旅をします。

※二人で大星家に向かう途中の、不安ながらも浮かれた気分がほほえましいです。

九段目 雪転がしの段(ゆきころがしのだん)

由良助が祇園から取り巻きを連れて雪玉を転がしながら、にぎやかに山科の家まで朝帰りしてきます。

※だいたい5kmほどの距離。google マップによると1時間強。雪の朝なら凍えると思います。

取り巻き連中が帰るとそれまでの浮かれポンチぶりからガラッと雰囲気が変わる由良助。

力弥に向かい、雪玉は雪のひとつひとつは非力だが集まれば強いのだと浪士の結束をにおわせます。



九段目 山科閑居の段(やましなかんきょのだん)

加古川本蔵(かこがわほんぞう)の妻・戸無瀬(となせ)と小浪(こなみ)が訪ねてきます。

大星家では本蔵のせいで判官様は師直を討ち漏らした。本蔵はワイロを贈る「へつらい者」だ。嫁入りしたければ本蔵の首を持ってこいと拒否。

※ここの戸無瀬(となせ)と顔世御前は二人とも老け女形で同じ首です。

実は、大星家は力弥が討ち入りにいけば、小浪が未亡人になるので拒否していたのでした。
力弥と結婚できないならば死ぬと覚悟を決める娘と継母。

外でその話を聞いていた本蔵は力弥と争い、わざと力弥に討たれます。
判官を止めたのは判断を誤った、小浪を嫁入りさせてくれと望んで本蔵は息絶えます。

※忠義ものの本蔵さん、罪もないのに死んでいきます(涙)



十段目 天河屋の段(あまがわやのだん)

和泉の国堺の商人・天河屋義平(あまかわやぎへい)は、塩谷(えんや)家に恩があります。妻や使用人も遠ざけ、ひそかに武具を用意しています。

由良助は、義平の真意を試すために捕り手に変装して天河屋を捜索します。
疑いは晴れて由良助は義平に謝ります。そして「天」と「河」を討ち入りの際の合言葉にすることを約束します。



十一段目 花水橋引き揚げの段(はなみずばしひきあげのだん)・光明寺焼香の段(こうみょうじしょうこうのだん)

目的を達した浪士たちは、隊列を整えて晴れ晴れと塩谷判官(えんやはんがん)の菩提寺・光明寺を目指します。

同じ立場だったかもしれない桃井若狭助(もものいわかさのすけ)は、馬でおいつき、一行を見送ります。

光明寺で墓前に師直(もろのお)の首を供える。師直を見つけ出した矢間十太郎(やざまじゅうたろう)がまず一番に焼香。勘平の分も義兄・平右衛門が焼香します。

※忠臣蔵を題材にしたドラマは討ち入りのシーンがクライマックスですが、文楽は討ち入りそのものは出てきません。四十七士だけで舞台上は大変なことになっちゃいますからね。

十一段目は、「花水橋引揚の段」「光明寺焼香の段」いずれかが上演されることが多いそうです。

より詳しい情報は、文化デジタルライブラリー「仮名手本忠臣蔵」をどうぞ。https://www2.ntj.jac.go.jp/dglib/contents/learn/edc21/index.html



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