【文楽】艶容女舞衣(はですがたおんなまいぎぬ):かんたんあらすじと解説:見どころ

艶容女舞衣(はですがたおんなまいぎぬ)のかんたんなあらすじをご紹介します。

この話は、元禄八年(1065年)に大阪千日の墓所で起きた、実際の心中事件をもとにしています。
これを歌舞伎で上演して大ヒット。以来、歌舞伎や文楽でさまざまにアレンジされて「三勝半七物(さんかつはんしちもの)」というジャンルになっています。この作品もその1つです。



通称:「三勝半七(さんかつはんしち)」/「酒屋(さかや)」

大阪上町の酒屋・茜屋半兵衛(あかねやはんべえ)の息子半七は、三勝(さんかつ)との間にできた娘を、半兵衛の実家の酒屋に置き去りにして、心中します。

世話物で長い長い話ですが、有名なのは「酒屋」の段だけ。メインキャストも、心中する三勝と半七ではなく、残された妻のお園(おその)とその親たち。彼らの嘆きが涙をさそいます。

半七はもともと三勝と深い仲で、あとから結婚したお園は、一度も床を共にすることなくほったらかし。半七、それなら結婚するなよとも思いますが、その当時はそうもいかなかったのでしょうね。お園は、実家に帰されていますが、今でも半七を思い続けていています。

ある時、三勝が茜屋に酒を買いに訪れ、半七との間との娘を丁稚にあずけて姿を消します。

お園は、父・宗岸(そうがん)に頼み、また半七とよりを戻りたいと、茜屋にやってきますが、半七の父・半兵衛(はんべえ)にはとりあってもらえません。

半兵衛は、息子が殺人犯になっていることを代官所で聞かされ、お園をまきぞえにしたくないと考えていたのです。



結婚以来、ずっと放っておかれている妻お園。

今、半七は殺人を犯して愛人との間にできた子どもを親元に押し付けて心中しようとしています。その半七を恨むでもなく、半七に愛されないのは自分のせいだと思いを述べるお園。

現代女性にはおよそ理解できない心情です。それもこれも、元はといえば、三勝がいるのにお園と結婚した半七の優柔不断さが招いたこと。これが文楽のファンタジーでしょうかねぇ(タメ息)。ですが、この時の人形の動きが実に美しいのです。

お園は半七と三勝の娘がお通(おつう)を知っていて、さきほど置き去りにされた娘がお通であることがわかります。お通の着物をさぐると出てくる書置き。家族で交互に読んでいくしっとりとした場面。

半七と三勝は、店の外で頭をさげ、そっと心中へと向かうのでした。

艶容女舞衣(はですがたおんなまいぎぬ)の見どころ。「今頃は半七っつぁん、どこにどうして、ござろうぞ」

半七三勝」ものといいながら、ヒロインは半七の妻のお園(おその)。「今頃は半七っつぁん、どこにどうして、ござろうぞ……」で始まる口説(くどき)は、有名です。文楽を観たことのない人でも、どこかで聞いたことがあるのではないでしょうか。

愛人と行方不明になっている夫に対し、恨みを言うのではなく、自分が未熟なせいだと一方的に自分を責めるお園。

お園の父宗岸(そうがん)と半七の父半兵衛、それぞれ不運な我が子を思う愛情に満ちたやりとり。半七の書置きに切々とした詫びのことばと「未来は必ず夫婦」という言葉に喜ぶお園。切ないです。