ボーヒュースニット(Bohus knit)。日本でも数年前に大流行しました。もとはスウェーデンのある地方で、ほんの数年だけ製造されていたという幻のニットです。
近年は復元させる動きがあるということで、特徴や歴史、編み図の入手方法までいろいろ調べてみました。
Stickcafé nu på onsdag 24/2. Föredrag om Bohusstickning, kl. 17.30 samt 19.00 https://t.co/Gd5VARkoUa pic.twitter.com/yi5xEspqZp
— Nordiska museet (@nordiskamuseet) February 22, 2016
目次
ボーヒュースニットはテレビでも大人気
NHKあさイチでは、2020年12月24日はスウェーデンのボーヒュースニットが紹介されました。ニットデザイナー三國万里子さんが訪ねて行ったスウェーデンで取材したものです。
このスウェーデンの旅は、2019年11月7日にNHK「世界はほしいモノにあふれてる」で放送。登場したニットの本場は、イギリスとスウェーデンでした。
なかでも、番組に登場した「幻のニット」ボーヒュースニット(ボーヒュースセーター)に話題騒然でした。ボーヒュースニットについて調べてみました。
番組については、こちらもご覧くださいね。
ボーヒュースニットは2020年2月の「冬のほっこりスペシャル」でも再登場。またまた話題沸騰中です。ボーヒュースニットって、いったいどんなニットなんでしょう??
ボーヒュースニットとはどんなニット?発祥はどこ?
ボーヒュースニットはどんな編み方かというと、フェアアイルのように裏に糸の渡る編込みが、表目・裏目と組み合わせてを組み合わせた編物で、材料はアンゴラ羊毛混。
複雑に色目が組み合わさって霧のようなグラデーションが出るのが特徴です。
とても手が込んでいるので、当時でもたいへん高価なものだったとか。
今はボーヒュースニットを編む人も減ってしまって、オリジナルのボーヒュースニットも編み方も、見かける機会は減っているそうです。
ボーヒュースニットはスウェーデンの西側、Bohuslänという地方で生まれました。
Bohuslänはボーヒュースレーンとか、ブーヒュースレーンと発音するみたい。län(レーン)は、郡とか県という意味。つまりボーヒュース県とかブーヒュース県ということですね。
今は、ヴェストラ・イェータランド県(Västra Götalands län)に属しています。
県庁所在地はGöteborg。日本語ではイェーテボリ、イエテボリ、エーテボリなどいうそうです。
ボーヒュース県に誕生したボーヒューススティックニング(Bohus Stickning)という会社が、ボーヒュースニットの生みの親です。
ボーヒュースニットの歴史は?幻といわれる理由はなぜ?
ボーヒュースニットは、スウェーデンの伝統的な編み方として、長く続いている編み方ではありません。
前述のBohus Stickning(ボーヒューススティックニング)または英語名でBohus Knitting(ボーヒュースニッティング)という会社が開発した編み方です。
この会社が1939年~1969年に活動していた間だけ作られていたニット製品です。
ボーヒューススティックニングは、ボーヒュース県知事夫人のエマ・ヤコブソン(Emma Jacobsson)さんが設立しました。
もともと石切りが主な産業だったボーヒュース県。
エマさんは恐慌によって貧困に苦しむ家庭に収入を提供するために、地元の女性たちが編み物が得意なことに目をつけ、家内工業として生産できるように設立された会社です。
エマさんは創業者としてだけでなく、デザイナーとして高級ニットを生み出し、国内外のデパートやブティックなどで発売しました。
時代の流れとともに、ボーヒュースニットの人気にもかげりが出て、ついに1969年に会社はクローズし、ボーヒュースニットも廃れてしまったということです。
当時、最年少の編み手だったというKerstin Olsson(シャスティーン オルソン)さんは、今も、小さなアトリエで当時のサンプルや編み図をもとに、今にボーヒュースニットを伝えています。
ボーヒュースニットのオリジナルと復元(リバイバル)
ボーヒュース(レーン)博物館(Bohuslans museum)
三國万里子さんも訪ねて行った、地元ボーヒュース博物館ではオリジナルが見られます。
Bohuslans museum(英語ページ)https://www.bohuslansmuseum.se/e
現地だとボーヒュースレーンミュージアムっていったほうが通じるかもしれませんね。
博物館のWebサイトも充実しています。
ボーヒュース博物館のショップでは本やキットの販売も!
博物館ショップでは、ボーヒュースニットに関する本やキットの販売などをしています。
https://ehandel.bohuslansmuseum.se/c/bohus-stickning/
美しいニットが編めるキットもありますが、残念ながら現時点ではオンラインでの通信販売はないそうです。
https://www.bohuslansmuseum.se/en/produkter/?store_category=knitting
ボーヒュースニットのリバイバル(復元)の動き
ボーヒュースニットのオリジナルを保存するだけでなく、新たにまた作り出していこうというリバイバルの動きがあります。
ボーヒュースニット誕生の80周年にあたる2019年12月19日にはボーヒュース博物館でシンポジウムも開かれ、復元された5つのうち3つのデザインが発表されたそうです。
ボーヒュースニットの復元:毛糸の生産やキットの販売への取り組み:ネット通販も!
『世界はほしいモノであふれてる』で紹介された、アンゴラウサギの毛糸やボーヒュースニットを復元している、”Angora Garnet”のPernille Silvferbergさんや、”SOLsilke”のSolveig Gustafssonさんもシンポジウムに参加していました。
Angora Garnet https://www.angoragarnet.com/en
SOLsilke http://www.solsilke.se/
Angora Garnet のFacebookページ(https://www.facebook.com/AngoraGarnet/)では、新しいキット発売の情報やウサギの毛を刈る様子などが見られます。
書籍:”Bohus knitting again: The Revival”または”BOHUS STICKNING på nytt. The Revival”
前述のシンポジウムの参加者のViveka Overland さんがボーヒュースニットの復元をまとめた本があります。
スウェーデン語だと”BOHUS STICKNING på nytt. The Revival”、英語だと”Bohus knitting again: The Revival”というタイトルで出版されています。
編み図が14パターン入っているそうです。
— ぶぶ (@yhoobooboo) February 20, 2020
ボーヒュースレーン博物館のサイトでこの本について紹介
ボーヒュースレーン博物館のサイトでも、この本について紹介があります。
「Bohus Knittingについての新しい本であり、 スウェーデン語と英語で説明が詳しく、また、14パターンの編み図も含まれている」とのことです。
https://ehandel.bohuslansmuseum.se/c/books-dvd/bohus-knitting/
書名:BOHUS STICKNING på nytt. The Revival
ISBN: 978-91-7686-268-1
著者: Viveka Overland
価格: 365 SEK(スウェーデンクローネ)
Bohus Stickningpånytt。 リバイバル
遠くアメリカでもボーヒュースニットを復元!
なんと、アメリカ合衆国ミズーリ州東部にあるセントルイスでも、ボーヒュースニットの復元にチャレンジしている人たちがいるようです。
Seven Oaks Farm&Knitting https://sevenoaksfarm.net/category/knitting/
こちらも2019年にシンポジウムが開かれたそうですよ。
日本で買えるボーヒュースニットの編み図入り本
編み図があればいいとしても、やはりスウェーデン語や英語はハードル高すぎ……。
手に入りやすい毛糸でもっと手軽に日本でもチャレンジしたい方のために、編み図を探してみました。
2013年の『毛糸だま』秋増大号159号 ブーヒュースニット
2013年の『毛糸だま』秋増大号159号には、兵頭良之子(ひょうどうよしこ)さんと野口光(のぐちひかる)さんによるボーヒュースニットのデザインが載っています。
表記はブーヒュースニットになっているようですよ。
毛糸だま 秋増大号 2013 №159 – richmoreのブログ https://t.co/P1lLqJDUBP
— ぶぶ (@yhoobooboo) February 17, 2020
野口光『ニットデザインノート』日本ヴォーグ社 (2019/10/31)
野口光さんといえば、ダーニングでも有名。NHK『美の壺』セーターの回でも教室の様子が紹介されました。
2019年秋に発売されたこちらの新刊には、ボーヒュースニットのデザインも載っているとのことです。
野口光『ニットデザインノート』日本ヴォーグ社 (2019/10/31)
これなら手軽に挑戦できそうですね!
Wendy Keele『Poems of Color: Knitting in the Bohus Tradition』Interweave; 2nd edition (December 1, 1995)
もっと本格的に挑戦したい方に、日本で購入可能なボーヒュースニットが掲載されている本です。英語で書かれたペーパーバックです。
著者はWendy Keeleさん。ボーヒュースニット生みの親エマさんについても書かれています。Amazonなどのネットショップで買えます。
Poems of Color: Knitting in the Bohus Tradition https://t.co/LktaQKfERb pic.twitter.com/b2jYN3Bjrk
— AMJ Global Marketing (@amj2101) December 29, 2015