【文楽】生写朝顔話(しょううつしあさがおばなし):かんたんあらすじと解説:見どころ

こんにちは。らら子です。今回は生写朝顔話についてご紹介します。
このお話、元は西国(九州・山口)の大大名の大内氏お家騒動にすれ違いの恋を絡ませた物語です。今は若い男女の恋のすれ違いを描いたメロドラマにポイントがしぼられて上演されています。





生写朝顔話は壮大なるすれ違いドラマ:昭和のラジオドラマ『君の名は』にたとえられる

この演目の目玉は愛し合う男女の「すれ違い」。これでもかこれでもかと、二人はすれ違いや行き違いになり観客をやきもきさせます。
この演目は、同じくすれ違いがテーマだった戦後のラジオドラマ『君の名は』にたとえられることが多いですが、今となっては古すぎますよね。
韓流ドラマ『冬のソナタ』……も、もう古いか。いつの世もすれ違いの悲恋は永遠のテーマですね。
今は、お家騒動を描いた大序は上演されることはほとんどなく、すれ違いの悲恋の部分がクローズアップされています。
文楽公演でも、明石船別れの段(あかしふなわかれのだん)・笑い薬の段(わらいぐすりのだん)・宿屋の段(やどやのだん)・大井川の段(おおいがわのだん)と上演するのが一般的です。
この演目のクライマックスは「宿屋」です。



生写朝顔話(しょううつしあさがおばなし)みどころ

恋人を慕って泣き暮らしているうちに盲目となった深雪が朝顔とあだ名される芸人となり、当の恋人の前で琴に合わせて見の上話を語るところです。
琴を弾くのは、当時はお嬢様ならではの芸事だったそうで、これで深雪が上流階級の出であることが自然と分かります。
翌朝、その男が恋人であるとわかって、後を追いかける段切れと続く「大井川」は人形の見せ場です。
前半の「笑い薬の段(わらいぐすりのだん)」は、チャリ場(コメディシーン)のど真ん中です。茶を点てる人形の動きにもご注目です。もちろん笑い薬のせいで笑い転げる人形も見ものです。
この時に人形遣いは、もちろん真面目な顔で人形を操ります。笑いが止まらない演技をする太夫は汗をかきかき大熱演です。一方、笑い声を演じる太夫の脇で、涼しい表情で控えている三味線弾きを盗み見るのもちょっとした楽しみです。



生写朝顔話(しょううつしあさがおばなし)かんたんあらすじ

大序 大内館の段(おおうちやかたのだん)

西国(山口から福岡・大分あたり)、大大名の大内氏のお家騒動がモチーフ。大内氏は全国にいますが、この大内さんの姓は多々良(たたら)。

朝廷より玉橋の局が大内家の宝である薬王樹(やくおうじゅ:びわ)を借りに来訪し、山岡玄蕃之允と駒沢了庵が饗応役(=接待役)を担当します。

当主の義興は幕府のある鎌倉にいて、国許を守るのは義興の母で賢夫人の園生の方。天皇の命令なので、しかたなく玉橋の局に薬王樹を渡すことにします。

ところで、鎌倉で義興は遊興三昧のあげく、いさめる家臣を切ったりしているらしい。

将軍様のお咎めがある前に国許に呼び戻したいと園生の方は山岡玄蕃之允と駒沢了庵に相談します。駒沢了庵は甥の宮城阿曽次郎を使いにやるといいますが、駒沢と反目する山岡は大げさだといって取り合いません。どうも、何やら悪だくみをしている様子。

やがて山岡の手下の赤星運八が「宝物殿から霊府の尊像を盗み出した」と報告にきます。山岡は赤星に岩代と協力して義興をバカ殿にしたて上げろと命じます。

玉橋の局は薬王樹を持ち帰ります。



多々羅浜の段(たたらはまのだん)

駒沢の実子はワガママゆえに勘当されていて、今は多々羅浜で浮洲の仁三郎として宿なしにまでおちぶれています。

薬王樹を盗み出すために玉橋の局に化けていた老婆が登場します。

老婆は大内を亡ぼして大友の家を再興する野望を抱いていて、そのために薬王樹が必要だったのです。首尾よく薬王樹を手に入れてほくそ笑む老婆。

そのやり取りを聞いていた浮洲の仁三郎は、老婆の後を追います。



治川蛍狩の段(うじがわほたるがりのだん)

ハンサムな武士、宮城阿曾次郎(みやぎあそじろう)は京都で学ぶうちに、通りがかりに暴漢から武家の娘・深雪(みゆき)を救い、恋仲になります。
阿曾次郎は深雪の扇に朝顔の歌を書きます。
しかし、阿曾次郎はお家騒動を阻止すべく故郷の周防(すおう)へ急いで戻ることになります。一方、別れを悲しむ深雪もまた安芸(あき)に両親に連れられて帰っていきます。





明石船別れの段(あかしふなわかれのだん)

それぞれ別の船に乗った二人は、明石浦での風待ちの停泊中に偶然再会。しかし、船が動き出し二人は離れ離れに。深雪はとっさに扇を投げ入れます。
その後、阿曾次郎は後に駒沢次郎左衛門と改名しており、深雪との縁談が持ち上がります。
しかし、なんということか駒沢の正体を知らない深雪は縁談を拒んで家出。
阿曾次郎を探してさすらっているうちに失明してしまいます。深雪は破れ三味線を弾きながらなんとか暮らしを立てています。




島田宿 笑い薬の段(しまだのじゅくわらいぐすりのだん)

東海道の嶋田宿で琴を弾きながら朝顔の歌を唄ってなんとか暮らしている深雪は「朝顔」と呼ばれるようになります。その宿に駒沢(阿曾次郎)が同僚の岩代とともに宿泊します。

この岩代は悪人ですが、駒沢は素知らぬ顔で接しています。

岩代は悪い一味の医者祐仙(ゆうせん)に命じてしびれ薬を茶に混ぜ、駒沢に飲ませようとします。ところが、宿の主人が機転を利かせて笑い薬にすりかえており、毒見をした祐仙は笑い苦しみます。

しびれ薬の入手方法はその前の「浜松小屋の段」で語られますが、この段はあまり上演されません。



宿屋の段(やどやのだん)

その夜、駒沢(阿曾次郎)は宿の部屋に書かれた朝顔の歌に気づきます。

聞けばその宿の女芸人がうたっているとのこと。朝顔の歌を所望します。

琴を弾きながら朝顔の歌を唄うのが落ちぶれた深雪と知った駒沢はショックを受けます。しかし、岩代がいるので名のることはできません。

駒沢は朝顔に渡すようにお金と目薬を宿の主人に預けて、だまって次の日の朝、出発してしまいます。





大井川の段(おおいがわのだん)

駒沢(阿曾次郎)が残した扇を見た深雪は、駒沢のあとを追いかけて大井川へ向かいます。

しかし駒沢はすでに渡ったあとで大雨で川留め。絶望する深雪は川に身を投げようとしますが、そこへ宿の主人がおいついて深雪を止めます。

宿の主人は実は深雪の乳母の父親で、むかし深雪の家に仕えていました。甲子歳生まれの自分の生き血で深雪の目を治せるといって自害します。そのおかげで深雪の目は治ります。



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コメント

  1. 野澤松也 より:

    生写朝顔話の大序大内館の段のあらすじ、解説が知りたいです

    • らら子 より:

      わわ、野澤松也様!
      リクエストありがとうございます。あわてて調べて書き足しました。おめだるいとは存じますがー。