こんにちは。らら子です。
文楽2月公演2部@東京・国立劇場小劇場行ってまいりました。若手の活躍がめざましい公演だったと思います。さっそく2部の感想です。
1部・3部の感想と感染症対策についてはこちらを御覧ください。
感想:2021年2月文楽公演第3部:冥土の飛脚(封印切)梅川忠兵衛
今回は2部曲輪文章 (くるわぶんしょう) ※ 1 吉田屋の段に女房おき役で出演予定の吉田簑助さんがコロナ禍の影響で出演を見合わせるということで、吉田一輔さんの代演となりました。(※ 1「文章」は「文」+「章」の1文字)
配役はこちらをご覧ください。
【文楽】2021年2月2部配役【東京】出演者・吉田簑助さん休演・代演・日程・時間変更:令和3年2月文楽公演(人形浄瑠璃)国立劇場:緊急事態宣言&感染予防対策
目次
【文楽】感想:曲輪文章 (くるわぶんしょう)かんたんあらすじ:そんなうまい話があるかいな。
ストーリーは突っ込みどころが満載、見終わった直後の感想としては、「そんなうまい話があるもんか」でした。
だって、放蕩息子の藤屋伊左衛門(ふじやいざえもん)ひどすぎる。
大坂新町の扇屋夕霧こと夕霧太夫(ゆうぎりたゆう)と7年前から馴染みとなり、子までなした仲になりながら、今のお金にして数十億円の借金を作って勘当されると行方知れずに。1年以上も姿をくらましているうちに、夕霧太夫は気を病んで病気に。
落ちぶれた姿で吉田屋に立ち寄ると、かつての上客として主人の喜左衛門夫婦に親切にもてなされるものの夕霧太夫に悋気して拗ねる。せっかく再会した夕霧太夫の前では素直になれず悪態三昧。夕霧太夫に口説かれて機嫌を直し、そうこうしているうちに勘当が解けたと言う知らせが親元から届く。そんなに愛し合ってるならと夕霧太夫も身請けされて親子揃って暮らせることになりハッピーエンド。
いやちょっとまて。そこで一時的に丸く収まっても、伊左衛門まったく改心する様子もない。そもそも伊左衛門は何も変わっていない。跡取り息子としてお店に戻ってもまたやりよるで。と思わせるファンタジー(夢物語)でした。
咲太夫さんの上品な語り口が、この演目の得も言われぬ福々しさにぴったりのように聴きました。
【文楽】感想:曲輪文章 (くるわぶんしょう)2月公演2部:吉田屋の段は舞台転換が面白い
吉田屋の段。最初の場面は店先。郭名物の餅つきの場面から始まります。
餅を手返ししている仲居の手の上に杵が落ちて痛がったりという小芝居がいろいろあったりして、仲居の口さがない噂話、主人・喜左衛門の人となりを表すエピソードなどが語られて藤屋伊左衛門登場。
紙衣姿(かみこ)に身をやつした伊左衛門が建物内に招じ入れられると、のれんの奥が閉ざされ、しばらくすると上下に大道具が開いて中はひろびろとしたお座敷。天井からは餅花が下がってて華やか。
わー楽しい。
イヤホンガイドによると、この場面転換は「居所変わり(いどころがわり)」といわれるもの。家に帰って調べたところによると回り舞台を使わない手法全般を指すらしい。
そして大道具が開く仕掛けは「煽り返し(あおりがえし)」。観音開きのように左右に開くのはよく見るけれど上下に開くのは初めてみました。
【文楽】感想:曲輪文章 (くるわぶんしょう)2月公演2部:吉田屋の段は奥行きのある大道具も効果的
座敷の下手側には、麻の葉段鹿の子柄のこたつが。
夕霧太夫への悋気から拗ねた伊左衛門は、こたつに入ってふてくされる。こたつに入ってふてくされるといえば、『時雨の炬燵』(しぐれの こたつ)。
こたつでふてくされる男というのは近松の様式美なのでしょうか。
夕霧太夫が出ているという奥の座敷を目指してどんどんふすまを開けていく伊左衛門。ふすまを開け放したままもとの座敷にもどって、ふて寝しているところに、夕霧太夫がやってきます。
伊左衛門の来訪を知った夕霧太夫がお座敷を抜け出して、ずんずんとこちらに歩いてくるその優美な姿。本来なら息せきって駆けつけるところですが豪奢な衣装に身を包んだ傾城には、精一杯の速さなのでしょう。心弾んでいる様子が手にとるようにわかります。
豪奢な衣装に髪飾りが揺れてキラキラと光り輝く。身の回りはすべて人まかせで、ほとんど動かないだろう名高き傾城が、こちらに近づいてくるときの期待感といったら。
夕霧太夫を遣うのは豊松清十郎さん。若々しい夕霧太夫の風情に、この奥行きのある大道具が効果的に使われていると思いました。
【文楽】感想:菅原伝授手習鑑(すがらわでんじゅてならいかがみ)2月公演2部:寺入り・寺子屋
文楽の寺子屋は、歌舞伎版よりもシンプルでそれだけにより観客の心に突き刺さり、どんよりとした重みがずっしりと残る気がします。
今月は、1部も2部も主君への忠義のために我が子を身代わりにする話。子どもが死ぬ話は本当に辛いです。忠義がなんぼのもんじゃい!と思います。
寺子屋はよだれくりが玉翔さん。こういうコミカルな役は本当に生き生きしていますね。こまめに周りの子にちょっかいを出し、いい仕事をしていました。
寺入りの段は、子どもたちと中年女性2人。希太夫さんは武家の妻同士のりんとした礼儀にかなった会話、また同じ年頃の子を持つ(という設定)同士のふと気安いやりとりなどがよかったと思いました。
寺子屋の段の後、豊竹藤太夫さんの語り、特に松王丸が感極まる場面では、胸に迫ってきて泣かされました。