【文楽】傾城恋飛脚(けいせいこいびきゃく):かんたんあらすじと解説:見どころ

『傾城恋飛脚(けいせいこいびきゃく)』は、近松門左衛門原作の心中物『冥途の飛脚(めいどのひきゃく)』を元に改作された演目でです。

改作は、菅専助(すがせんすけ)と若竹笛躬(わかたけふえみ)の合作とされています。

実際にあったいわゆる公金横領事件の戯作、『冥途の飛脚(めいどのひきゃく)』の「封印切(ふういぎり)」のあとに続く話です。「梅川・忠兵衛(うめがわ・ちゅうべえ)」としても知られます。

公金横領の罪で逃避行した忠兵衛と恋人の梅川は、忠兵衛のふるさと新口村(にのくちむら)にやってきました。追っ手が迫る中、忠兵衛と父の孫右衛門はつかのま再会し、逃げ切れぬとしりつつ雪の中を急いで逃げていきます。




新口村の段(にのくちむらのだん):あらすじ前半

大坂から逃避行を続けた梅川と忠兵衛は、忠兵衛の生まれ故郷の新口村(にのくちむら)にたどり着きました。村は美しい雪景色です。

死ぬ覚悟の二人は、せめてその前に忠兵衛の父・孫右衛門を一目見て、母の墓参りをして未来の嫁と姑の名乗りをしたいと願っています。

しかし、公金に手を付けた忠兵衛はおたずねものとなり、この村にも二人の噂が広まり、追手がせまっていました。

二人は昔なじみの忠三郎を頼ろうと訪ねますが不在。家にいたのは忠兵衛の顔は知らない新妻。彼女に忠兵衛を呼びに行ってもらう間に留守宅に忍びます。

障子から外をのぞくと、忠兵衛にとっては懐かしい人々が通りかかります。梅川にそれぞれの人のエピソードを話して聞かせる忠兵衛。つかの間、楽しい時間が流れます。

そこへ、忠兵衛の父・孫右衛門が通りかかります。梅川と忠兵衛が格子越しに手を合わせて涙を流していると、孫右衛門が氷に滑って転んでしまいました。




新口村の段(にのくちむらのだん):あらすじ後半

氷に滑って転んでしまった孫右衛門がの姿を見て、とっさに梅川が外に飛び出します。

梅川は孫右衛門の足を洗ったり、鼻緒をすげたりかいがいしく世話を焼きます。親切にしてくれる都会的に美しい女。この見ず知らずのこの女が誰なのか、やがて孫右衛門は気づきます。

孫右衛門は、罪人となっても息子がかわいいと嘆きます。一目会わせたい梅川。しかし会えば世間の義理から、息子を捕まえなければならなくなると拒む孫右衛門。

梅川は孫右衛門に「目隠しをすれば会ったことにはならない」と説得して、二人を引き合わせます。しっかりと抱き合う父と息子。

追手がすぐそこまでせまってきます。孫右衛門は、せめて自分の目の届かないところで縄に掛かってほしいと、村から逃げる近道を二人に教えます。

雪の中をだんだん遠ざかる梅川と忠兵衛をいつまでも見送って、孫右衛門は手を合わせます。ふたりが去っていったあとの孫右衛門の心情に胸をつかれます。





新口村にいたるまでのお話(=冥土の飛脚・封印切の段):あらすじ(ネタバレ)

大坂の飛脚屋・亀屋の養子である忠兵衛(ちゅうべえ)は、大和(奈良県)新口村(にのくちむら)の大百姓の息子。店は彼の代になりますが、新町の遊女・梅川(うめがわ)と深い仲になっています。

梅川に他の客からの身請け話が持ち上がり、忠兵衛は自分が梅川を身請けしたいと願うものの、そんな大金は用意できず。

もんもんとするところへ、夜更けに江戸からさるお屋敷に届ける三百両が届きます。忠兵衛は三百両をもって店を出ると、堂島の屋敷町に行くつもりが、ついつい梅川のいる廓に向かってしまいます。

梅川に一目会おうと座敷に向かうと、そこでは友人の八右衛門が忠兵衛には見込みがないこと、これ以上、忠兵衛にかまわないように周囲の人々に行っていました。

かっとなった忠兵衛は、養子に来た際の持参金だと公金三百両の封を切ってしまいました。

あとに引けない忠兵衛はその場で梅川を身請けし、人々に祝福されながら廓をあとにしたのでした。真実を知った梅川とともに故郷の新口村へ向かって逃げていきました。





見どころ:歌舞伎や他の作品との違い。

近松門左衛門の原作『冥土の飛脚』では、新口村の段は美しい雪景色ではなく、雨になっています。

また、忠兵衛はあえなくお縄にかかるというショッキングな結末となります。原作を上演する場合は、新口村の段の手前までのことが多いようです。

また、忠兵衛の友人の八右衛門(はちえもん)は、改作にあたる本作では梅川をめぐるライバルとして描かれますが、原作では友人思いのいい人として登場します。友人思いが仇になった形です。

歌舞伎では、『けいせい恋飛脚』をさらに改作した『恋飛脚大和往来(こいびきゃくやまとおうらい)』が上演されています。こちらの八右衛門は挑発的なかなり嫌な奴です(笑)

宝塚歌劇団でもミュージカル『心中・恋の大和路』(~近松門左衛門「冥途の飛脚」より~脚本/菅沼 潤 演出/谷 正純)としてたびたび上演されていますが、八右衛門はいい人で新口村は雪景色、最後は二人美しく雪の中で息を引き取るというラストシーンになっています。

秋元松代が他の浄瑠璃と合わせて構成し直した『近松心中物語』は、梅川忠兵衛とお亀与兵衛の2つの心中を扱っています。





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