文楽鑑賞教室Bプログラム。
初日の夜は社会人のための文楽教室。
文楽初観劇の友達と行ってきました。
【東京・国立劇場】12月文楽鑑賞教室「伊達娘恋緋鹿子」「平家女護島」、12月文楽公演「一谷嫰軍記」が昨日初日を迎えました。多くのお客様にお引き立てをいただいておりますが、お日にちによっては残席もございます。見どころに溢れる本公演へのご来場をお待ちしております。https://t.co/PWBUD7atFJ pic.twitter.com/tTtGO4u9ZA
— 国立劇場文楽公演(東京・大阪) (@bunraku09) December 4, 2019
ロビーで豊竹藤太夫さんがご贔屓客に挨拶をしていらっしゃる光景などを見ながら客席へ。
初日ならではの華やいだ雰囲気がいいですな。
お着物率は高くなく、この間の「鶴澤清治本物の芸」のときほど凝ったお着物の方も少なかった。
やっぱりあの時は、相当な方々が聞きにいらしていたのだろう。
配役はこちらから。
A班の感想はこちらから。
伊達娘恋緋鹿子(だてむすめこいのひがのこ)火の見櫓の段(ひのみやぐらのだん)
おなじみ、八百屋お七。
火の見櫓の周りを、気をもみながら歩き回るお七(桐竹紋秀さん)。
雪の降る中、振袖着てすたすた動くのもそういえば不思議だけど、恋しい人の窮地に、胸が張り裂けんばかりお七の気持ちが伝わってくる。
お七がふと見上げる先に半鐘が見え……。
床は、豊竹希太夫さんと竹澤團吾さんを筆頭にずらりと若手勢ぞろい。
太夫は声が高めの人が揃っているせいか、ことさら若いなーという印象。
團吾さんがベンベンと俺様ワールドに浸って快調に三味線を鳴らしていく。
床の最後尾は鶴澤清允さん。客席のほうにずいっと向いて堂々としたたたずまい。
立派やなぁ。
弾いていない時の姿もまた五月人形のようでした。
ずいずいっと梯子を上っていくお七。スペクタクル。
鐘がなって全員登場。お杉が持ち出した刀をめぐる争い。
丁稚が投げた刀をお杉がナイスキャッチ。拍手が起きる。
ここだけ抜くとかなりのドタバタ劇になりますね。
詞章もわかりやすいのでかなり受けていました。
解説「文楽の魅力」
まずは豊竹靖太夫さんがステージに登場。
朴訥とした語り口ながら、話はわかりやすいし、要所要所で笑いと取っていく。
八百屋お七を「おひち」と発音していて「ああ、そうか」と思う。
江戸の娘やけど「おひち」なんやね。
床の盆が回ったら三味線・鶴澤友之助さんが載ってました。
なんかお得な感じ(笑)
靖太夫もすたすたと床に移動して床の説明。
ついて友之助さんとともに、お七のセリフを使って人物の語り分け。
若い娘、老女、武張った男性。
老女の語り口というのも、味わいがあるもんでんな。
次に三味線を使って人物の泣き方を弾き分け。
若い娘は艶のある泣き方。さめざめと泣きます。
老女は人生経験も豊富なのでストレートには泣かず、ポロリと涙をこぼす感じ。
友之助さんの解説になると「待ってました!」とばかりに名調子。
流行語やラグビーネタも入れて笑いを取ってました。
人形遣いの解説は吉田玉翔さん。
今回は遠くの客席からも見られるようにカメラでアップして前方スクリーンに映し出すという方式。なかなか。
自己紹介はお約束のオトコマエネタで、「大地に咲いた一凛の花、スクリーン映えする文楽きってのオトコマエ吉田玉翔でございます。」てな感じ。
玉翔さんは本当にオトコマエなので嫌味じゃないですな。一緒に行った友達は、玉翔さんのオトコマエぶりにポーっとしてました。
首(かしら)の動きを一通り説明して人形の登場。左遣いは桐竹勘次郎さん、足遣いは吉田玉峻さん。
玉翔さんは軽妙な語り口で実演しながら、玉峻さんは歯医者さんの息子さんとか勘次郎さんの学歴とか個人情報を織り交ぜていきます。
玉峻さんが小さな声で「やめてくださいよ」とか言ってましたが、勘次郎さんはスルー(笑)
どや顔とか言われてましたが、これもスルー。一瞬こらえきれずにニヤリ。
段取りとしては、いつもの鑑賞教室の通りなんですが、好き放題の玉翔さんと真面目な靖太夫さんの対比がオモろ。
靖太夫さんが再び登場して「平家女護島(へいけにょごのしま)」の説明。
玉翔さんはけ際に学歴ネタを振って靖太夫さん「文楽では文字が読める男」とか言ってました。
「平家女護島(へいけにょごのしま)」鬼界が島の段(きかいがしまのだん)
あー、さっきロビーにいた人だ。
元が能なので白木の見台。黒紋付に肩衣姿。
藤太夫さんのお座布団は茶色、清介さんのお座布団は黒。
朗々とした節回しで厳かに始まる。
藤太夫さん、こういう演目に向いてるんだな。
清介さんの三味線。鋭く、渋い。
俊寛は吉田玉男さん。わずかばかりしか動かない。間に緊張感がある。
平判官は吉田文哉さん、丹波少将成経は吉田簑一郎さん。
流人三人ともひさびさの対面。そんなに広い島でもないだろうに、さすが草木も生えぬ鬼界が島、まず自分が生き抜くだけで必死であることがわかる。
ひさびさの対面の理由は、成経が島に住む海女の千鳥と結婚することになったので親代わりになってほしいといいに来た。
千鳥を遣うのは桐竹勘十郎さん。
私は吉田簑助さんの千鳥が好きすぎてどうも比べてしまう。いつか見た簑助さんの千鳥は健康美にあふれたはつらつとした娘だったのに対し、勘十郎さんの千鳥は鄙は稀な美少女。都風の衣装を着たらさぞ美しかろうと想像するようなしっとりとした品の良い娘。
若いカップルの幸せぶりに、先ほどまでの厳しい雰囲気が消えすっかりなごむ俊寛。都に残してきた妻ののろけ話などするうちに、都からの使者が。
俊寛以外の二人は赦され島を出るということ沙汰に。動揺する俊寛、そして千鳥。
俊寛は途中まで船に乗ることを許可されるが、届け出の人数と異なるので千鳥は乗せていけないという。
三人の男は追い立てられるように船に乗り込み、浜辺で悶え悲しむ千鳥。
妻の死を知った俊寛は、自分が残れば千鳥を船に乗せられると考え。
船を降り、意地悪な使者、瀬尾太郎(吉田玉輝)に屈するとみせかけて太郎の刀抜き切りかかる。
俊寛、強い。
もともと僧侶で武術の心得もないだろうに、そしてろくなものを食べていないのに強い。
一歩も退かない気迫がある。
千鳥が助太刀をしようと棒をもって近づいてくると、関わり合いになるなと必死に制する俊寛。
カッコイイ。
瀕死の太郎がよろめいてくると、砂浜の砂を集めては太郎に投げつけて目くらましをする千鳥。
カワイイ。
ついに、俊寛、太郎の首を掻っ切る。
船上の人々、なすすべもなく落涙するばかり。
船に乗り込む千鳥。かなり狭い(笑)
船が離れる。
この時も簑助さんの千鳥は、手がさっと上がって身体全体を伸びあがるように手を振っていたのが印象的だったのだけど、勘十郎さんの千鳥はしとやかに手を振る。
俊寛、いったん袖にはけて、島のとったんの岩場をこけつまろびつ上がる。
狭い岩場を上りながら俊寛は杖を落とし、蔦を頼りに上っていく。
人形遣い特に左遣いはマジに転びそう。
船はすでにかなり沖合まで進んでいる。
ぐっと前方を見つめたところで幕。
太夫・三味線も圧巻。すごい集中力だなと感嘆していると隣の友人はボロボロ泣いている。
私も感想文を書くために「いろいろおぼえとこ」とか考えずに、物語の世界にどっぷりつかればよかったと反省。
Aプロが残っているので、次回は物語に埋没したいと思います。